第15章「反撃開始」
視界が白くて重い。痛みで目が開けられない。
痛い。
息が荒い。さっちゃんの声はかすかに興奮していた。薄い笑い声。
理性で痛みを押さえ込む。
「私が!私が一体、何したって言うのよ!!」
泣き叫ぶ。思いつく限りの罵倒。痛みで舌をかむ。それでもやめない。さっちゃんの薄笑いに、本当に感情が飛びそうになる。
息が切れて、冷静になる…演技をする。私はなんとか冷静さを保っている。
「落ち着いた?」
「さっちゃん…」
痛みで本当に気が遠のく。耐える。
怒りで身体が打ち震える。これは本当。それを意志の力で押し込める。これも本当。
「さっちゃん…。あなたが殺せと言うなら、もういいよ。殺してあげる…」
これは嘘。思い通りになど行かせてなるものか。
「ホント?」
「うん。もう、いい…。諦めた。死ね。死んでよ!」
気持ちが高ぶってきて、本当に泣く。しかし、心は冷静なまま。
「うれしいわ。ようやく納得してくれたのね。」
媚びを売る様な声を出しながらさっちゃんは私の太ももの上にまたがって座る。壊された足に激痛。
「あら、ごめんなさい。でも、アナタに非道いことをしたいんじゃないの。信じて。」
さっちゃんは、私の頭を柔らかに抱く。私はそれを受け入れる。拒絶しない。
「あぁ、今までごめんなさい。こんな事したくなかったの。どんなやり方でも良いわ。痛くしてもいい。ひと思いに殺してくれてもいい…。」
首筋を私の口の前に差し出す。
「このまま首をかみ切っても良いのよ?でも、それじゃぁ、ここから出て行けないわね。」
クスクスと嬉しそうにさっちゃんが笑う。そして私の額に手を当てて髪をどかしてキスをした。私はそれを受け入れる。額から唇を離してさっちゃんはと私は少しの間、見つめ合った。
「だけど…。」
私から切り出す。
「だけど、その前に友恵にあわせて…。お願い。」
最初はすがる様に。そして段々と嗚咽しながら言う。自分でも迫真の演技だと思った。
反撃の狼煙は上がった。今は小さく頼りない火種でもあろうとも、やがて大きな炎となってさっちゃんを飲み込んでやる。




