婆さんなのに、娘の夫と孫に求婚された。
単なる暇潰しにでも読んでください。
よかったら、感想ください。
私は60を過ぎた婆さんである。
愛する夫は3年前に結核で死んでしまい、子供たちは自分の道へ進んでいるので、今は一人で生きている極々普通のお婆ちゃんだ。
「一人じゃないよ。僕がいるよ」
「本当だねぇ、優しい孫をもって、私は幸せだよ~」
嬉しいことを言ってくれる、この少年は私の娘の息子。つまりは孫で名前は 火鷹くん。
夫の血と娘の夫の血をこれでもかと思うほど受け継いだ美少年で、若い頃のあの人ソックリだ。
縁側でお茶を飲んでいたら、いつものように話しかけてくれた。
「婆ちゃん、大好き」
「おやおや、嬉しいことを言ってくれるねぇ……」
この子は本当に優しい子である。
小さいときから、忙しい娘に代わり、よく世話をしたからから、お婆ちゃんっ子になり、こんな老いぼれに優しくしてくれる。
しかし、最近は娘が嫌がり始めて余り私の家にこさせたくないようにしている。
確かに、ちょっと甘やかしすぎたせいか、大きくなった今も抱きついたり、一緒に寝てくる。
「本気だよ好きだよ」
今日も孫は私に優しい言葉を投げ掛けてくれる。
「そうか……親子揃って嬉しいことを言ってくれるねぇ……」
「親子…?」
何故だか目が凄く怖くなってるの気のせいかしら。
「えぇ、君のお父さんにも言われたよ~親子揃って、老いぼれに優しいんだから……」
娘が嫁にいったところの男性は、本当に優しい人で、私によく「愛している」と言ってくれる。
娘の高校の参観日の時に、憧れの先輩だと教えてもらったのが初対面だった。あの時から本当に優しい人だったな~
こんな婆さんに渡しても何の意味もない程に、毎月お金を振り込んでくるので、ちょっと困ったりしている。
まぁそれは、嫁に行った娘や息子に渡したり、孫たちに渡したりしている。火鷹くんはいつも受け取らないけどね……
「あの……クソ親父……」
「どうしたんだい?」
「ううん!!何でもないよ」
ニコッと、いつもの可愛らしくて、優しい笑みを浮かべた火鷹くんに安心する。
そうだよね、こんないい子が邪悪な顔をしないよね……
「婆ちゃん、今日は泊まってもいい?」
「いいよ~」
本当に優しい子だねぇ。
こんな日常がずっと続くと思っていた。
「お母さんのバカ!!!」
娘が久々に帰ってきたと思ったら、いきなりそんなことを言われた。涙を流しながら、垢抜けた髪がボサボサになるのも気にせずに娘はいう。
「お母さんのせいだよ!!なんで!?可笑しいよこんなの!!絶対に可笑しい!ふざけないでよ!」
一体、何が起こったのか意味も分からずに思ってたら、娘に思いっきりビンタをくらった。
そういえば、娘が高校の時もこんなのあったな~。と暢気に考えてしまう。
「やめろ」
氷のような声が響き、もう一回ビンタを喰らわそうとする手がピタリと止まった。声の主の方をみると、娘の夫がいた。
「百合子さん、大丈夫でしたか?」
倒れこんだ私の体を優しく起こしてくれた。
娘はそれを苛立った様子で見ている。
「えっと……どうしたんだい?」
何がなにやら分からずに質問をしたら、義息子は熱を帯びた目を娘は冷たい目を向けてきた。
「今日、私たちは離婚したんです」
「……え?」
とてつもなく、衝撃的な単語が出てきた。
ど、どどどどういうこと!?え!?……え?離婚したって……え?
「私は認めないんだから!!」
「手切れ金も渡したし、浮気のことも不問にしてやる。裁判になったら、お前が不利だぞ」
「うぐっ……うぅ…お母さんのせいよ……お母さんなんか死んでしまえ!!」
娘はそんな捨てぜりふを吐いて何処かへと走っていった。
「百合子さんに何てことを……」
ギロリと人を本気で殺しかねない表情をした彼だったが、わたしの方へ顔を向けると、いつもの優しいニコリとした笑みを浮かべていた。その目は熱っぽくて、凄く怖い。
「あ、あの……私が離婚原因ですか?」
私は、恐る恐るといった感じで質問した。
娘が浮気とか信じられないので、私に原因があるかもしれない。もしそうならば、どれだけ申し訳ないだろうか…
「百合子さん」
色々と心配している私に彼はうっとりとした表情で、私の顔を自分の方へ向かせていった。
「百合子さん、私と結婚し「ふざけんなクソ親父!!」……っち、邪魔すんなガキ」
泊まっていた孫が、障子をどかして表れた。
「やっぱり婆ちゃん目当てだったのかよ!?この熟女好き!!」
「そっくりそのまま返してやる。クソガキ」
「婆ちゃんは俺のもんだ!!俺と結婚するんだ!!」
「経済力も力も覚悟もない奴がいうな、俺は百合子さんを介護して最後まで一緒にいるつもりだ」
「経済力は身につけてるし、俺の方が若い!!ヘルパー雇って終わりのアンタと違って、俺は自分でやるね」
「誰がヘルパーを雇うといった。俺は自分で……」
二人とも早口言葉で、何が何やら意味が分からない。
けれど、何やら「現代医術で孕ませる」だの「死ぬときは一緒」だの、不穏な単語が出てくる。
「(なんだか…ここら離れた方がいいかもしれない)」
私は、娘が気になったのと、純粋に逃げたい一心でソロ~っとドアの方へ向かおうとしたが……
「百合子さん……何逃げようとしているんですか?」
「婆ちゃん、どこにいくの?」
「(ヒィィイイ!!!)」
ガシっと、両肩を義理息子と孫に捕まえられた。
ゆっくりと、老人にも聞こえるようにネットリと話しかけてくる。
「あ、あの……む、娘が気になるので探してきます……」
目線をそっちに向けたら、凄くキラキラした笑だが、目が暗黒に染まっていた。怖い、本気で怖すぎる。
「本当に慈悲深いんですね……始めてあった時からそうだ……」
何か、凄い怖いんですけど……
「婆ちゃん、そんなことより答えて欲しいんだ」
いや、君の母親ですよ?
「百合子さん、私と結婚してください」
「婆ちゃん、俺と結婚して」
私の耳はついに可笑しくなってしまったのだろうか?そうならば、どれだけ嬉しいだろうか。
しかしながら、二人の目は本気だと出ている。
しかも、孫の方は愛する夫に似ているので、昔の告白を思い出してしまうので、ちょっと止めて欲しい。
いやいや、そうじゃなくて、そもそも……
「あ、あのね……法律的に孫や義息子と結婚することは出来ないんじゃよ……」
一瞬、二人が固まった。
もしかして、本当に知らなかったのだろうか?
「百合子さん……」
固まっていた彼が動きだした。
「国籍をかえて、外国で結「じゃあ、私は娘探しにいってくるから!!」」
最後までいうのを聞かずに私はドアをあけて、外へと逃げた。
孫もそれだ!!みたいな顔をしていたが、きっと気のせいだろう。
豪邸に連れて帰られたり、本気で国籍変えられそうになったり、監禁されそうになったり、娘に殺されかけたり、他の子供たちが何となく予想していたという事実を知ったりするのは……
もう少し、後の話。
老人虐待反対。
百合子
本来は肝っ玉母さんだったが、愛する夫を失ったショックから覇気をなくしている。母性本能が強い為か変な男にばかり好かれる。死んだ夫を今でも愛している。
火鷹
自分を育てて優しくしてくれた祖母を恋愛的な意味で好きなババコン。若い為か躊躇がない。
娘の夫
色々な全ての原因。
百合子目当てで結婚し、子供を作ったのも「女の子だったら百合子みたいなのが出来るかもしれないから」とかそんな理由。
妻には凄い冷たく接していた。
百合子の娘
本来はいい子でマザコン気味だけど、夫に冷たく接しられ続けたのと、息子が自分より母になついているストレスで人格がくずれた。