表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

親友

作者: ゆーゆー

軽いBL要素がありますので苦手な方はお気をつけ下さい。

 目が覚めると、一番最初に目に入るアイドルのポスター。最近の目覚めは彼女の笑顔に迎えられる。

別に彼女が好きなわけではない。友人から、もう貼る場所がないからと譲り受けたもので、あろうことかその友人が天井に貼り付けて帰ったのだ。最初はなんてことをしてくれたんだと腹が立ったものだが、人間とは慣れる生き物であるのか、今では日常の一部として受け入れてしまっている。

 こんな可愛い子が彼女だったら毎日が楽しいのだろうか、などと考えつつ体を起こし朝の準備を始める。

制服に着替え髪を整えていると、階下から早くしなさいという母の呼び声が聞こえた。いつもと変わらぬ日常。朝食を平らげ歯を磨き、靴を履いて家族に一声かけて家を出る。そしていつも通りリョウが家の前で待っている。

 リョウとは家が近く幼なじみで、何をするときでも一緒だった。幼稚園では毎日一緒に遊び、小学校へ通うのも毎日一緒で、帰ってからもお互いの家に通ったりして遊んだ。中学に入ると同じ部活に入り、共に汗をかいた。当然のように同じ高校を受験し、共に合格。今に至る。リョウとは毎日一緒に通学している。最早俺の日常に欠かせない人物だ。


 ある日の通学中に、ふと気になってリョウに彼女は作らないのか聞いてみると、

「俺は…要らないかな。そういうユウタこそどうなんだよ」

と返された。

「俺は欲しいかなー。なかなかそういう機会に恵まれないけどね」

「そうか…」

俺はリョウが以前先輩に告白されていたことを知っている。たまたま覗き見てしまったのだが、あのポスターのアイドルみたいに可愛くて羨ましいと思った。だがリョウは何故か即答で断っていた。もったいないことするな、と俺は思ったものだ。


 そんなある日のこと、リョウの様子がおかしかったのでどうしたのか聞くと

「いや、何でもないよ。どうもしてない」

とは言うものの、明らかに動揺していて、顔をそらす。

「本当に?あ、風邪でも引いたのか?」

と言い、額に手を当てようとすると

「何でもないって言ってるだろ!」

パチンッ!と手を弾かれた。

「あ…ごめん…。本当に何でもないから、心配しないでくれ」

珍しいリョウの態度に驚いた。

「そ、そっか…ならいいけど、何かあったなら遠慮無く言ってね?」

「うん、心配してくれてありがとうな」

「当然だよ、僕達親友じゃないか!」

親友、の言葉を聞いてリョウの顔色が一瞬曇った気がした。

「うん、親友…だよな…」

その日はそれ以降は普段通りで、また明日からはいつも通りの日常が始まるものだと思っていた。


 翌日、いつも通り目が覚めると、笑顔のアイドルが居て、いつも通りに準備を済ませ家を出ると、そこにいつもいるはずのリョウの姿がなかった。思わず

「あれっ?どうしたんだろう」

なんて独り言も漏れてしまうほど、驚いた。

 学校に着いてもリョウの姿は見えなかった。やっぱり風邪を引いて休みなのかなと心配していると、リョウは授業前に教室にやってきては、休み時間になるとどこかに姿を消す。そんなことを繰り返した。

 俺が心配していると、昼休みにリョウがやってきて

「放課後、校舎裏に来てくれ」

「えっ?」

「じゃあ放課後にな」

それだけを言い残し走り去ってしまった。

「待ってよリョウ!」

あまりにも思いつめた顔をしていたので俺は心配になった。


 モヤモヤした気分のまま午後の授業を受けた。リョウは相変わらず授業直前に教室にやってきて授業は受けていたので、少し安心した。

 そして放課後、多少の不安を抱え校舎裏に行くと、真剣な顔をしたリョウが待っていた。

「やあリョウ、どうしたんだい?こんなところに呼び出して」

「ユウタ…来たか」

「そりゃ来るよ、リョウの様子がおかしかったからさ」

「心配かけて悪かったな。だけどもう気持ちに整理がついた。ユウタ、話を聞いてくれ」

リョウは更に真剣な顔をした。

「どうしたのさ改まって」

「お前とは幼稚園の頃からずっと一緒だったよな」

「そうだね、何をするときでも一緒だった」

「きっかけは何だったのか、思い出せないけどお前といると本当に楽しくてな。ずっと親友でいられたらいいなって、そう思ってた」

リョウの顔が曇る。

「何言ってるのさ、ずっと親友だろ!?」

「どうもそうはいかないみたいでな…」

リョウが思いつめた表情をする。何が合ったのかはわからないけど、ずっと一緒だったリョウがいなくなるなんて、考えられなかった。

「俺何かした?何かしたなら謝るよ!」

「お前はなにもしてない。俺が悪いんだ…」

「リョウ…」

一瞬の沈黙が永遠にも感じられた。

「俺、気がつくとお前のことばかり目で追ってた…。おかしいよな」

そう言ってリョウはなんだか困ったように笑った。

「いつの頃からか、お前のことばかり気になって…もっとずっと一緒にいたい、もっとユウタの事知りたいって考えるようになった。そうして気づいた、ユウタの事…親友じゃなくて、一人の男として好きになっていたんだって事」

「えっ?リョウ…」

あまりの衝撃に、心臓が止まりそうになった。

困ったように固まっていると

「ごめんユウタ、こんなこと言ったら困らせること分かってた。でも自分の気持偽ってるのは…辛くて」

なにも言えずにただ立ち尽くす事しか出来なかった。

「ユウタのこと考えたら胸が苦しくなった、顔もまともに見られなくなった…」

「こんなこと言ったらもうこれまでの関係に戻れないのは分かってる…。でも、言わせてくれ」

「リョウ…」

「ユウタ、好きだ!大好きだ!親友としてじゃなく…恋人として俺と付き合ってくれ!」

頭が真っ白になった。なんて答えればいいのか分からなかった。

「リョウ…ごめん、俺分かんないよ…男同士でこんなこと…」

「ユウタ…そうだよな、ごめん…」

リョウが辛そうに謝る。

「俺…帰る…っ!」

「ユウタ…」

どうしていいのか分からず、その場から走り去ってしまった。もうリョウとは親友に戻れないのか、あんなに一緒に過ごしてきたリョウを失うのか…そんなことを考えていると涙が出てきた。家に帰っても収まらず、一晩中枕を濡らし続けた。


 朝の日差しを感じて顔を上げると、いつもの笑顔、母の呼び声。変わらぬ日常があった。夢だったのではないか、儚い期待を持ち扉を開けても、やはりリョウは居なかった

 自分が想像していた以上に俺の日常はリョウによって彩られていた。リョウを失った自分は、ただの抜け殻のようだ。楽しかった通学が、日常が、色を失ってしまったように寂しい。

 一人で部屋にいると、楽しかった日々が頭の中を駆け巡る。

リョウと遊んだこと、たまには喧嘩だってした。リョウと一緒に部活に励んだこと、俺達が揃えば無敵だよななんて話もしたっけ。同じ高校に入るために二人で勉強をして、合格できた時は抱き合って喜んだ。リョウが先輩に告白されてるのを見て、なんだかリョウが取られちゃいそうな気がして不安にもなった。数えきれない思い出が蘇る。どれも楽しかったのはいつもリョウが居たからだ。リョウが居たからだ。

リョウが居なかったらこれほど楽しい思い出は無かっただろう。

そんなリョウから逃げてしまうなんて、なんて酷いことをしてしまったのだろう。

ちゃんとリョウと向き合わなければいけない。


「リョウ…」

「ユウタ…」

「校舎裏に来てくれないか?」

「…分かった」

リョウは一瞬顔を曇らせたものの、ついてきてくれた。


「………」

呼び出しては見たものの、なにを話していいのか分からなかった。

俺が黙っているとリョウが口を開いた。

「悪かったな、急にあんな事言って。すごく困らせたな」

「いや、そんなことは…」

「気を使わなくていいよ。気持ち悪いよな、あんな事言われて」

困ったような笑顔でリョウは言った。

「そうじゃないよ!……最初は戸惑った。親友だと思っていたリョウからあんな事言われて…。でも、気持ち悪いなんて思ってないよ」

「ユウタ…ありがとう」

「お礼を言われる資格はないよ…俺のほうが謝らなくちゃいけないのに…。リョウ、本当にごめん!俺にちゃんと向き合って気持ち伝えてくれたのに、逃げるなんて酷いことした、ごめんリョウ!」

「いいんだユウタ。俺の方こそお前の気持ち無視して急にあんな事言ってごめん…」

「俺、あれからリョウとの日々を思い出していたんだ。リョウといたからあんなに楽しかったんだなって…そう思った」

「俺も楽しかった」

リョウが遠くを見つめる。沈黙が訪れた。

「でも、それが親友だからなのか、そうじゃないのかは結局分からなかった。分からなかったけど、1つだけわかったことがある」

深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。すると自分の素直な気持ちが話せるようになった。

「それは、やっぱりリョウと一緒にいたいって事だ。リョウの居ない日々は考えられない」

「ユウタ…」

「付き合うってどういうことか分からない…でも、リョウと一緒にいたい!これからもずっと!」

リョウの表情が少し晴れた。

「俺、もう元には戻れないんだって思ってたから…そう言ってもらえて嬉しいよユウタ」

そう言ったリョウの目から涙が零れ落ちた。

つられて泣きそうになリながらも笑顔で言った。

「泣くなよ、笑っていようぜ」

「そうだな…」

そう言ってリョウは泣きながら笑った。


「とりあえず、仲直りの握手だ」

そう言ってリョウは手を握ってきた。

「手を繋ぐんなら、こっちのほうがいいんじゃない?」

からかってみたくなった俺は、少しニヤリとしながらいたずらっぽく言うと、横に並んで、握った手を指を絡めて繋ぎ直した。所謂恋人つなぎというものだ。

照れと、なぜだか嬉しくもなり、手をつないだまま黙って見つめ合った。

「……良かった、これで前みたいにリョウと一緒にいられる」

「前以上にかわいがってやるよ。もう離さない」

「ぷっ…アハハハハハハ」

リョウがあまりにもクサイセリフを言うので、思わず笑ってしまった。

「笑うことないだろ!もう…」

リョウが耳まで真っ赤にして俯いた。

そんな姿がなんだか愛おしく思えて、俺はリョウに抱きついていた。

「ユウタ…!」

「これからも楽しい思い出を作っていこう。…これからは、恋人として」

なぜか、そんな言葉が出てきた。

「ユウタ…!うん、これからも一緒だ、ユウタ」


 リョウと手をつないで帰った。いつもの通学路。ひとつ変わったのは、俺に恋人ができたこと。

これからは恋人として、リョウは俺の日常に無くてはならないものになっていく。

これからも、ずっと…。


                     <END>

読了ありがとうございました。

軽いBLを書いてみたくなって書きました。軽すぎたかな?

もしかしたら次はもっとガッツリしたBL書くかもしれません。

感想お待ちしております。

また、誤字・脱字・日本語がおかしい点等ありましたら指摘頂けると有り難いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ