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少年と少女

そんな楽しいことがあったなーと思い返していると、

「何あのキモイ人」「にやけててすごく気持ち悪いんだけど」「あんなオタクみたいなやつと同じクラスに絶対なりたくない」

 絶賛罵倒中でした。

 あれから数年がたち、俺は高校に入学しようとしていた。

 キモイ、オタクなどと呼ばれているが俺は昔の俺ではない。

 身長170後半、体脂肪率9%体重もそれに似合ったものでむしろ『モヤシ男』と言うのが似合う奴だと思う。なめるな、これでも結構筋肉はあるんだ。握力80出すくらいには。祖父のなんとも面倒な修行で余分な筋肉をつけないというものを体験させられ。今じゃこれだ。

 祖父の道場から出てきたのはついこの前。

 退院後は祖父母の家の近くの小学校に通い、そのまま中学校生活も過ごした。両親はどこぞの漫画展開と言いたくなるような海外へ仕事をしに行った。ちなみに親父は軍人をやめ、いつの間にか自分の会社なんぞを建てていた。それが何でも海外進出だとかで。今までの家の不景気は俺の退院と同時に終了のお知らせが流れたのであった。それでも好き好んで俺は道場に入り浸っていたのだが。

 帰宅部ではなく剣道部に入り(幽霊部員状態だが)大会だけは出てそこそこの成績を収めた。剣道全中2位だ。

 そしてそろそろ俺のライフは限界を迎えようとしていた。

 祖父母の家は完全なる田舎で家の周辺は畑に田んぼ。一番近くのご近所も200mは離れていた。

 若い人はほとんどいなく強制的に畑を手伝わされたりもした。これが所謂過疎化の影響と言うものか!?と思ったことがないわけではない。

 同い年の女子はいたが、そんな中自分の身嗜みなんて気にしてられなかったし、個人的に興味もなかった。

 興味のあるのは読書、将棋、囲碁、チェス、琴、ギターなどの娯楽に音楽だ。後、裁縫に家事全般。

 完全にメディアなんぞかけ離れた生活をしていたもんだから何年振りかに小学5年生まで住んでいた街に来たのだが、なんとも新鮮だった。さすが都会。

 学校から一番近い駅のすぐ近くにできたマンションの4階に引越しし、今日学校の入学式。

 そこの教室で言葉と言う名の暴力。俺の精神は駄目になりかけていた。

 チャイムが鳴り、もしかしたら担任なのかもしれない先生が来て体育館へ行くように指示。

 一応、ここは私立高校で両親の母校だとか。

 数年前と違い俺は再びお坊ちゃんライフを過ごせるようなのだが、田舎暮らしが定着しており、畑でとった新鮮な野菜を酢味噌とか、そのままでおいしく頂くのが好きな野生児のような少年になったのでそんな生活は興味がなかった。

 あの時の一つ上のメイドさんが今どうしているのかは少々気になったりする。と言っても確実にもう会うことはないと思うので気にしないことにした。

 隣の席の奴に話しかけられるとか友情チックなことは何も起こらず、ただただ、ボッチルートを進んでいた。

 



 と、思いきや体育館で座った席がちょうど隣のクラスと思える少年が声をかけてきた。

「ねえ、そこのモテなそうな少年。僕と青春とは何か語ろうじゃないか」

「今、式中だがら喋らない方がいい」

「それなら放課後校門で待つよ、キリッ」

 ……なんか残念なオーラだだ漏れの変態だったようだ。

 見た目はイケメン。爽やか系の。男子にしては少し長めの髪をピン止めなどを器用に使い、見事なイケメンを演出している。

 入学許可、等と言われ、一人一人立たされていく。

 俺の名字は平津川。平津川孝久。名前負けする奴なので割と中盤くらいで呼ばれる。そういや昔はたっくんとか、ひーくんとか、平津川様とか呼ばれてたっけ。

 暇なのでいろんな名前を聞いているとこの町の神社の娘、一応幼馴染(結構世話焼いてくれた)とか懐かしい名前がちょこちょこ。本人かはどうかわからないが。

 俺の隣の奴は池慎吾いけ しんごらしい。

 ちょっと反応してしまったのが、

「七瀬遊里」

「はい」

 あの病院の少年……と思ったのだが残念ながら女であった。

 割と女っっぽい名前だから女子でその名前があってもおかしくないだろう。

「新入生徒代表、七瀬遊里」

「はい」

 再度呼ばれた少女。

 いや、美少女と言うのがあっているのだろうか。

 長い、なんの混じり気も感じさせない黒髪。人形、と言う表現よりも人間味のある顔だち。スレンダーな体系ではあるがそこそこなプロポーションを持つ。何よりも日本人らしい黒い瞳。一瞬目を奪われていた。

 淡々とした感情の籠っているかどうか判断しづらい声だが、とても綺麗な声で会場を彼女の声が支配した。

 挨拶が終わり、礼をしてから自身席へ戻っていった。彼女が着席してから数分、やっと教師が正気に戻り、司会進行を進めた。

 多分、七瀬と言う美少女は非常にモテるのだろうと一人どうでもいいことを考えていた。

 

 

 何か、色々と引っかかっていたがそれも知らぬ間に忘れていた。



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