今は昔
どうも。初めまして、時雨です。
誤字脱字が酷いことがあるかもしれません。
色々と妥協してみてもらえるとうれしいかな……とか思ったり(笑)
昔のことだ。
当時、俺は両足を骨折して入院していた。
裕福すぎてろくに自分で何もしようとしなかった。基本メイドに頼っていた。そのせいかチビにデブと言う最悪の状況に陥っていた。それに口だけ達者で根は内気。その上、何かがあれば自分の家に頼る。それで学校の奴は大抵自分に従った。教師だろうが上級生だろうが。結果、自己中心的な我が儘坊やだった。
そんな根性を祖父が叩きなおそうと剣道の稽古をつけてくれたのだが見事に一日で挫折。
防具を完全につけていたにもかかわらず一撃でノックアウト。つまり気絶。
今思えば小5の幼いデブにやることじゃないと思う。
部屋にこもって、ドアの前で祖父が怒鳴り、祖母がそれを宥める。そんなことを聞いていて嫌になり、部屋から脱出を試みてその部屋の窓の縁に足をひっかけ見事にこけた。
運悪く両足骨折。おかしいな。一階の部屋から飛び降りたはずなのに。
そのことから入院である。ちなみに父の弟の病院。元、住んでた県から3つほど離れている。祖父母の家もこのあたり。
その頃のうちの経済状況はとてもじゃないがいいとは言えなかった。
そのため個室の部屋ではなく大きい部屋で老人と同じ部屋で早く完治しないかと待っている日のことだった。
目を包帯でぐるぐると巻いた奴がきた。
「どうも、こんにちはかな?」
「……」
かなりの無言なキャラクターのようだ。
「名前教えてもらってもいいか?俺は孝久って名前なんだが」
「……病室を出て入口の札を見ればいいだろう」
冷徹な声を出す彼。外見は俺と同年代だったのだがかなりの冷静っぷりだ。
「残念ながら俺は両足骨折なんだ。小5の俺には退屈して見知らぬ人にも声をかけてしまうような状況なんだ」
「……そうか、僕は七瀬だ、キミと同年代と言うことになるな」
この時俺は思った。
ありえねー、と。
「…なんだこいつありえねー、と思っただろ絶対」
何故わかるんだこいつは!
は、まさかニュータイプか!
その頃の俺は親父が持っていたロボットアニメにはまっていた。
「変な電波を受信するな。もしやお前の眉間には黒子があるというのか」
「ないな。うん、鏡を見てもないな」
「なぜ二度言った」
「大切なことだからだ。そうだ。七瀬、お前目が見えないんだろ?」
その頃の俺は空気と言うものが読めなかった。空気ってどう読むの状態である。今となってはある程度読めるのだがやはり、「空気と言う文字を読むことは可能だな」と言ってしまうことがある。
「そうだ。同情でもしてくれるのか?」
「まぁ、そんなところだ」
「………ずいぶんとあっさり認めたな」
「この潔さが俺の美点である」
そんな俺の渾身のギャグに七瀬は、
「お間本当に小5か?」
「うん、七瀬お前には言われたくない」
だって、なぁ。こんなに大人びている小学5年生だ、ありえんだろ。
もしかしたら二十歳を過ぎている人の可能性もある。合法なんとかってやつだ。
「それでどんな同情をしてくるんだお前は」
「そうだな。お前がある意味うらやましいと思うな。今まで見えなかったものが見える、それは恐怖でもあるが自分自身を変えるチャンスともなりうるんだ。俺に言わせればお前が外の景色が見れたのなら自分の考えもがらりと視界のように変わるだろうな」
俺的にはこのボディーを何とかするだけで未来が変わりそうな気がする。
「……うまいことを言ったつもりか?」
お手厳しい一言がはいる。鳩尾にヒットしたような感じがした。一発KO、俺の心の痛み(ライフポイント)はきっとすでにゼロなんだろう。だがここであきらめたら試合終了とか先生がいってたっけ。
それでは開き直ってみましょう
その間俺の脳内は七瀬が厳しい一言を言い終えてから0.0801秒のことである。
検索エンジンも吃驚な記録である。
「そうだ。これがやりたかったんだ。俺は」
そして七瀬が笑った。
「バカなんだなお前は」
「失礼だな。そこはせめてまっすぐで迷いのない心の持ち主と言ってくれ」
「やはりバカだな」
ですよね。
「自分で納得」
「……こいつはすでに直せないほどやばいようだ」
「そうかもな」
主にこの脂肪まみれのキモイ体とかやばいな。
太りすぎと医者に注意されたし。
「自分で普通に返した!?」
そんな感じで和気あいあいとしていた。
3週間後、あれはギプスが外れてリハビリを終えようとしていた。
ポッチャリの足が少しスマートになった。
それまでの3週間は七瀬にモールス信号を教えていた。ペンでコンコン叩いてやるあれ。
親父が軍人と言うのもあってお正月に教わった。
ちなみにこの見た目はデブだが記憶能力とかだけはいいんだ。
「もうすぐお前も退院か」
「ああ、勉強が遅れてるからな。そういうお前も目の手術だろ?」
「……そう、だな」
そう、七瀬は明日、目の手術なのだ。
非常に不安がり顔色が悪い。
もともと体が丈夫じゃないということもあり検査に検査を重ねようやく明日手術なのだ。
そこで俺は嫌味ったらしいことを言った。
「そうだ、俺がお前に1枚のDVDを残していこう。目が見えないと伝わらない手話でだ。この三週間でたまったあーんなことやコーンなことをすべてビデオに手話でかったてやろう。あ、もしものためにモールス信号も入れといてやろう」
「もしもの時ってなんだ、もしもの時って。あーイライラしてきた。絶対お前の顔を見るまでは死なないぞ。この七瀬遊里を散々コケにした貴様を呪うためにその顔を見てやる」
そこで俺は初めて知った。
七瀬の下の名が遊里だということを。なんでって?毎回奇跡的に見るの忘れてるんです。奇跡と言うよりリハビリ後、息切れとかでそんなことを忘れていたから。
ここではあえて言わないことにした。
画面越しに伝えよう、と思って。
もちろん顔は映さない。手だけの出演だ。
退院日、叔父に自分と同室の七瀬に渡してほしいと頼み、退院した。
俺が退院したのは手術が終わった2日後。七瀬は麻酔の影響で目を覚ましていなかった。
楽しいひと時を胸に俺の両足を折りやがった俺の爺ちゃん(*ただ単に自分で自滅しただけ)の道場に行った。
あんな勇気を見せられたら何か自分も変えられそうな気がしたから。
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