毎日腹の立つことばかり
朝、家を出るなり、煙草の吸殻が捨てられているのを発見した。毎朝、同じ銘柄のが落ちている。
ゴミ捨ての時、にっこり笑って挨拶してやったのに、隣家の主は、無愛想に顎をしゃくっただけだった。せっかく作ったニコヤカな笑顔が、急にまぬけに感じられた。
自転車で買い物に行ったら、若い女が、追い抜きざま、チッ、と舌打ちしていった。
安売りスーパーの狭い通路で、ふと振り返ったら、後ろにいた小さな女が、邪魔だとばかり睨んでいた。
あーあ。毎日、腹の立つことばかり。
そう言ったら、ストレスがたまってるんでしょ。外に出てけば? と真紀子に言われた。
ふん。
私は専業主婦だ。
専業主婦だとカミングアウトすると、決まってイタケダカに攻撃してくる奴がいる。真紀子のような、働く女だけではない。働き盛りの男も、ヒステリックにストレスをぶつけてくる。
家事をする専業主婦を馬鹿にする人というのは、家事そのものも、程度の低い仕事とみなしているのだろう。
ご立派な自分がやるには、あまりにも、ヒマでつまらぬ仕事だと。
従って、そういうヤカラの家は、きっと荒れていることと思う。ゴミ屋敷や汚部屋、今は、ちゃんとしたネーミングまである。
私に言わせれば、自分の身の回りのこともろくすっぽできない人間は、基本のところでなっていない。
その人間性は、到底、信用できるものではない。
そのくせ、仕事、仕事と、そればかり言う。結局、大切なのは、ご大層な「自分の仕事」だけなのだ。
だが、毎朝、目をこすりこすり、汚れた巣から這い出てくるやつに、いったい、どれほど立派な仕事ができるというのか。
基本の生活がなっていない奴の仕事は、いつか国を滅ぼす。
はいはい、ごめんなさい。私は、働く皆さんに寄生する、専業主婦でした。
家事しかできない、つまらない女です。
……。
最後にこう言っておかないと、怖いからね。