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35分の記念日  作者: 芒雲 紘真
第六章:35分のクリスマス会
28/34

ページ27 5人とクリスマス会

「メリークリスマース!!」

マスターの合図で、あちこちでクラッカーが弾けた。

紙テープが宙を舞い、破裂音が重なる。

スピーカーからポップなクリスマスソングが流れていて、いつもと違う「カフェ・ドゥ・ソレイユ」が、今夜だけは別の顔をしていた。

12月24日。クリスマスイブ。

クリスマス会は、颯太と大輔のバイト先である「カフェ・ドゥ・ソレイユ」で開催された。


参加者NO.1 橘陽菜

このパーティの提案者。


参加者NO.2 笹川澪

陽菜に誘われて即OKの返事。

颯太を誘う。


参加者NO.3 望月颯太

澪に誘われ、大輔に連絡。


参加者NO.4 藤原大輔

颯太から連絡を貰い、彩花に連絡。


参加者NO.5 高瀬彩花

大輔から連絡を貰い、即承諾。


参加者はこの5名。

波乱の遊園地。

地獄のピクニック。

そこから何故この5人で集まることになったのか。

時は1週間前に遡る。

――――――

 

陽菜は謝りたかった。

颯太と大輔、そして澪にだ。

澪たちが隠し事をしていたとしても、あの日のピクニックの態度は自分でも頂けなかった。

そして澪にメッセージを送った。

「ピクニックのメンバーでまた集まれないかな?謝りたくて。」

返事はすぐだった。

メッセージはなく、かわいい熊のOKスタンプだけが送られた。


一方で颯太がスマホを開くと2人からメッセージが来ていた。

澪と大輔だ。

デジャブに感じた。

何が悪いことが起きるんじゃないかと。

より凶報そうだと思った。大輔のメッセージから開く。

「復縁した。」

「あと彩花が澪さんに謝りたいらしいんだけど、また4人でWデートしないかって。」

「はぁっ%@<@…?」と颯太は文字に出来ないような言葉が出た。

一旦返信は保留して、澪のメッセージを覗く。

「陽菜ちゃんが大輔くん入れて、また4人で集まりたいって!」

可愛い熊がこちらを覗き込むスタンプを添えて。

こちらを先に見ていたら、颯太はさっきと同じような反応をしていたかもしれない。

でも2人からのメッセージを見て答えはひとつだった。

「彩花さんも入れて5人で集まるのはどう?」

颯太は澪にそう返した。

そうやってこのクリスマスパーティが企画されたのだ。

――――――

 

パーティ当日。

この五人が全員揃うのはこの日が初めてだった。

店内は陽菜が昼から来て飾り付けをしたらしく、窓際にリースが掛かり、テーブルには小さなキャンドルホルダーが並んでいる。

天井から垂れたガーランドが揺れるたびに金色の飾りが光を弾いた。

マスターは「好きにやっていいよ」と快く場所を提供してくれて、しばらくカウンター越しに颯太たちの様子を眺めていたが、やがて颯太と大輔に店の締めを任せて帰っていった。

自分は邪魔だと判断したのか、

はたまた一人でゆっくりしたかったのか

——どちらにしても、よく空気を読む人だと思った。

 

「颯太くん! はいこれ!」

テーブルに着くなり、陽菜が皿を差し出してきた。から揚げとサンドイッチ、そしてなぜかたくあんが乗っている。

「自分で取れるよ」

「良いから! 今日ぐらい甘えなよ!」

有無を言わさず皿を押し付けられた。

陽菜のおせっかいマシーンは一度スイッチが入ると誰にも止められない。

そのまま今度は大輔にも同じことをしようとする。

「俺も大丈夫です」

「良いから!」

「いや、ほんとに——」

「良いからって言ってんの!!」

大輔が二の句を継げないまま皿が置かれた。

二人の制止もむなしく、おせっかいマシーンは動き続けた。

陽菜が颯太たちの世話に全力を注いでいる隙に、澪がするりと陽菜の隣に腰を下ろした。

「ねえ陽菜ちゃん、私のも取って~」

「あんたは自分でよそいなさい!」

一喝が飛んだ。澪は「えー」とふくれたが、目は笑っていた。

テーブルの向こうでは、今度は大輔が彩花のおせっかいマシーンと化していた。「これ食べる?」「飲み物足りてる?」「寒くない?」と矢継ぎ早に声をかけている。

彩花は「うるさい」と言いながらもそれを受け取っていた。


「ではではおまちかね。プレゼントこうかーん!」

澪が立ち上がって両手を広げた。拍手が起きた。

一番大きく拍手していたのは澪本人だった。

各自が包みを取り出して、澪が配った番号の紙を貼る。

あみだくじの台紙を澪が書いた。

定規まで使った本格的な枠線だった。

「準備万端じゃん…」

「当たり前じゃん。プレゼント交換って段取りが命だから」

台紙が順番に回って、全員が線を引く。

結果はこうなった。

 

颯太→陽菜ペン

澪→澪(お菓子詰め合わせ)

陽菜→大輔(手編みのミサンガ)

大輔→彩花ペアマグカップ

彩花→颯太キャンドル

 

颯太の買ったペンは上品な紺色で、誰にでも使えそうな無難なものを選んだ。

澪は自分で自分のプレゼントを引き当てた。

包みを開けると色とりどりのお菓子が入っていた。

「自分だ! あははっ!」

本人がいちばん楽しそうに笑った。隣で陽菜が盛大にため息をついていた。

大輔が受け取ったミサンガは手編みで、陽菜が「不器用だから時間かかったけど」とぶっきらぼうに言いながら耳を赤くしていた。

大輔が「ありがとう」と礼を言って手首につけようとすると、陽菜が「着け方違う!」と修正した。

彩花が大輔からもらったのはペアマグカップだった。

包みを開けた彩花の手が一瞬止まって、大輔が頭をかいた。彩花は「ありがとう」とごく普通に受け取った。

その表情は穏やかだった。

彩花から颯太に渡ったのはキャンドルだった。

女性が使いそうな白いキャンドルで、颯太は少し気まずそうな顔をしていたらしい。

澪が「似合うじゃん」と笑った。

「よし! これはみんなで食べよう。」

澪が宣言して、自分のお菓子の袋を開けた。

全員に配り始める。

プレゼント交換とは、という疑問は全員が胸にしまった。だって当の本人があんなに楽しそうなのだから。

「ハッピーメリークリスマス!」

グラスが五つ重なった。かちん、という音が「カフェ・ドゥ・ソレイユ」の中に溶けていった。


いろいろあった5人でのパーティ。

始まる前は不安だった颯太も今は楽しくてしょうがない。

澪が笑っていたからだ。

今はただそれだけでよかった。

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