第8話 くじ引きとルームメイト
入学式の午後の部では、ルームメイトを決めるためのくじ引きが行われる。
海王国立国営教育機関海王太洋学院では、入学した全生徒が卒業あるいは退学するまで寮生活を送る事になる。
入学時にはくじ引きで男子2人女子2人の四人のルームメイトを決めるのがこの学院の伝統だ。
なぜくじ引きで決めるのかというと、国や人種や社会階級に関係なく他者と対等に接するコミュニケーション能力を鍛えるためだという。
動物の耳を持つ強化人間である私達は、他種の動物と人間をモデルとして作られた強化人間とは生命を創り出す構造になっていないので男女混合でも問題は無い。
再び永賢信学長が壇上に上がり、下記のように発言した。
「入学式の午前の部の教員の挨拶、交流会が終わり休憩の時間も終了したので今から入学式の午後の部を始めます。午後の部ではルームメイトを決めるためのくじ引きと、教科書の配布とクラスメイト表の配布を行います。そして最後には改めて私から挨拶があって、それで入学式が終了した後、皆さんにはくじ引きで決まったルームメイトと寮に入り共同生活を送ってもらいます。それでは早速、くじ引きを始めます。」
永賢信学長が挨拶を終え壇上から下がると、入学式の会場の前から後ろに先端がランダムの色、末端が白で寮の部屋番が書いてある細い紙が入った箱がメイド型ロボットによって運ばれ、生徒一人一人がくじを引いていく。
私が引いたくじは先端が赤色、末端が9番のくじだ。
「クジノハイフハシュウリョウシマシタ。ソレデハ、オナジイロトバンゴウヲモツカタヲオサガシクダサイ。」
「赤の9番のクジをお持ちの方はいますか?」
私はひたすら声を上げてあらゆる人々に声をかけ続けた。
しかし、この学園はとにかく大きい。私の前世で暮らしていた国の人口よりとにかく人が多すぎる。
なぜ自動化して決めるのではなくくじ引きという伝統にこだわるのか、私にはとてつもなく理解し難い事だ。




