太古の水
掲載日:2025/10/25
しんしんと雨は降り続く。
燃え盛っていた山火事は静まり、カラカラに枯れた大地は潤った。
この世界の水は循環している。
川や海の水は水蒸気となって雲になり、巡り巡って雨になる。
その水はやがて川や海に帰っていく。
その中間で生物は恵みを受け取り、いずれは地球に返される。
それは地球誕生の46億年前から脈々と続く太古の水だ。
地球の水分量は今も昔も変わらない。
恐竜が飲んでいた水も、
北京原人が飲んでいた水も、
織田信長が飲んでいた水も全部同じ。
我々は降り続く水を受け継いでいる。
水は記憶を持たない。
けれどその旅の果てに、いくつもの生命を育み、
命の営みを支えてきた。
かつて恐竜がのどを潤した水は、
北京原人の体を巡り、
織田信長の茶の湯を満たし、
今我々の手の中にある。
それは無数の命を渡り歩きながら絶えず姿を変え、
また新たな生命へと受け継がれていく。
我々はその一瞬を享受しているに過ぎない。
けれど、次の時代へと水をつなぐのは、この手にかかっている。
この水を、汚さず、絶やさず、未来へと送り届けることができるだろうか。
太古の雫がしんしんと落ちる音がする。
新たな循環が、また始まる。




