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さ、、(パシャッ31(パシャッわ、、(パシャッです(パシャッパシャッパシャッ

「い、いらっしゃいませー……」

 大きな声を出したつもりだった。

 しかし、外を行き交う生徒たちの喧騒のほうが大きくて、私の小さくてか細い声は、あっさりとかき消されてしまう。


 ……うぅぅ。やっぱり接客、苦手だよぉ。できることなら調理に代わってほしいけど……。


 ちらっと後ろを振り返ってみる。


 そこでは、一度も話したことのないクラスメイトが、鼻歌まじりにアイスを揚げている。


 ……ムリ。無理。むり!!


 助けて……天野くん……!!照代さん……!!


 というか、そもそもどうしてこの配置なの!?


 2人きりって……仲のいい友達同士でもなかったら、ただただ気まずいだけじゃん!!


 パワーバランス、悪すぎだよ……。


 きっと春香ちゃんなら、何事もなかったみたいにそつなくこなして。

 夏海ちゃんなら、楽しそうに声を張って接客して。

 秋音ちゃんなら、ノリノリでお客さんを笑わせてるんだろうなぁ……。


 それに比べて私は――

 春香ちゃんみたいに勉強ができるわけでもなくて、夏海ちゃんみたいに運動が得意なわけでもなくて、秋音ちゃんみたいに愛嬌があるわけでもない。


 私って……なんで、いるんだろう。


 ……って、ダメダメ。

 お祭りの幸せムードに当てられて、自分が勝手に惨めに見えちゃってるだけだ。


「すみませーん」

「あ、は、はい! いらっしゃいませ……!」


 声をかけられて、慌てて顔を上げた瞬間、

 私は思わず固まってしまった。


「ハ~イ、いーろーはーちゃん!元気?」

「……お母さん!? どうしてここに?」

「この辺歩いてたら、貴女の声が聞こえたのよ」


 ……じ、地獄耳すぎる。


 自分で言うのもなんだけど、私の声は本当に通らない。


 少し周りが騒がしくなるだけですぐに消えるし、早口なのもあって、余計に聞き取りづらい筈なのに。

「愛の力よ」

「貴女に込めた愛と、私の愛が共鳴したのよ」


 ……何を言ってるんだろう?この人??

 冗談? それとも――本気?一瞬そう思って、母の顔を見る。


 ……うん。この表情。

 完全に本気で言ってるときの顔だ。


 とにかく話題をそらそう。


「えっと……お父さんと映姫ちゃんは?

 お母さんまた、迷子になったの?」

「そうなのよ~。パパったら、またどこかに行っちゃって~。ほんと、そういうところが可愛いわよね」

「映姫ちゃんもね、気づいたらいなくなってたのよ~。いつの間にか、すーっと」

「でも大丈夫よ!映姫ちゃんはしっかりしてるし、パパとは――運命の糸で結ばれてるから」


 キャー!

 なんて声を上げて、恥ずかしそうに顔を両手で覆う母。


 ……キッッッツい!!

 日常的に両親のイチャイチャは見せられてるけど、外でやられると話が別だよ……!

 恥ずかしさの種類が違う!!


 顔を隠したいのは、どう考えても私のほうだよぉ……。


 というか……。お母さんって、自分が方向音痴だって自覚、ないのかな?


 ……いや。そういえば、お父さんもちょっと方向音痴だった気がする。


「そっか、見つかるといいね。せっかくなら何かたべてみたら?」


 半ば流れ作業みたいに、メニューを指さす。


「揚げアイス1つ、300円。トッピングは1つ選べるよ。プラス100円で、全トッピング追加もできるけど」

「トッピングは、チョコソース、キャラメルソース、カラースプレー、それと粉砂糖」

「じゃあ、1つ食べようかしら。トッピングはキャラメルがいいわ」


 ……即決なんだ。

「それと――そうだ!」

 急に何かを思いついたみたいに、母が身を乗り出す。


「彩葉の、かわいいエプロン姿。写真に撮ってもいいかしら?」

「えー……恥ずかしいから、嫌だよ」

 そう言いながらも、完全に拒否するほどじゃない自分がいる。

 だって、なんだかんだ言って褒めてくれるのは嬉しいし……。

 まあ、1枚くらいなら、いいかな。


「じゃあ、ポーズはハートで『ママ大好き』って書いて頂戴」

「……やらない」

「え?」

「やらないって」

「な、な……なな……なななななな……

 ど、どうして?ダメなの?……ママのこと、嫌いになっちゃった?」


 母の体が――小刻みに、がくがくと震える。


 ……重い。

 重すぎるよ、その愛。


「……そうじゃなくて。ふつうの写真なら、いいって言ってるの」


 慌てて言い直すと、少しだけ視線を逸らす。

「マ……ママのことは……大好き……だよ」

パシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッ

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