29わ……Zzz…。
――ピピッ、ピピッ。
「……うるさい。」
半分夢の中のまま、布団から手だけをにょきっと伸ばす。
ない……ない……。
――コツン。
何かに当たった感触に、反射的にそれを掴み、そのまま布団の中へ引きずり込む。
薄く目を開いて、アラームを止めると、土曜日。朝6時。
……誰?こんな時間にアラームかけたの。
眠いし……いいや。どうせ、秋音ちゃんのいたずらとかでしょ……。
――そのとき。
部屋の扉が、勢いよく開く。
「マイドーラ〜♪おはよう〜♪今日の天使は誰かしら〜?」
「ママにお顔、見せてちょうだい〜♪」
次の瞬間、毛布が引っ張られた。
私は必死に掴んで抵抗する。頑張れ、私……!
「ふふ……亀さんみたいで可愛い〜」
「ママも仲間に入れてちょうだい」
そう言いながら、今度は布団の中にまで入り込もうとしてくる。
「分かった!分かったから……!」
観念して身体を起こし、眠たい目をこすりながら問いかけた。
「朝早くに、どうしたの……?どこか出かけるとか……?」
「まあ!今日は冬乃ちゃんなのね!今日も可愛いわ〜」
「マイスイート……たべちゃいたいわ。ほっぺはムニムニで髪はふわふわ。絶対に美味しいわね~。」
マイスイート……。今さらだけど、高校生になった娘に向ける呼び名じゃないと思う。
それに、スキンシップも激しいし……。
でも、「やめて」なんて言ったら、お母さん凄い悲しむからいえない。
……皆は、どう思ってるんだろう?
「はい、冬ちゃん! ママにもお返しして!」
両手を広げ、目を閉じて、嬉しそうな顔で待ち構える母親。
お返しって……。さっき私がされた、あれのこと?
ハグとか、おでこへのキスとか、頭を撫でられたり、ほっぺを触られたり……。
「……絶対に、しない」
「それより、今日何かあるの?わざわざ起こしに来るなんて」
私たちは起きる時間が違うからよほどの用事でもない限り、こうして起こしに来ることはないのに。
「今日は文化祭よ?」
「今日の晴れ舞台のために、パパがビデオカメラを買ったの」
「誰を撮るつもりなのかしら〜?」
「きゃ〜、やだ〜」そう言いながら、お母さんは本気で嬉しそうに身体をくねらせる。
「……ぶん、かさい……?」
ぶんかさい?文化祭。
……そんなもの、あったっけ?




