23話……?
はーい!私、早江照代!覚えやすいかな?
高校生って毎日めちゃ楽しい〜。制服も可愛いし、おしゃれしても先生何も言わないし、アルバイトできるからお金も溜まってサイコー。
珍しく早起きしたから、今日はちょっと早めに登校中〜。
……なんか、人が少なくて超静か!こういう朝も悪くないってね!
あ、誰かいる。――って、あれ、湊?
そうだ!あとからこっそり近づいて、大きな声でびっくりさせてやろっと!
「やっほ! 湊ー! 昨日ぶりー!」
「うっわ!? ……早江さん? おはよう」
ぷぷーっ
湊のやつ、びっくりして目が飛び出しててウケる〜
「あれ? 早江さんっていつもこの時間に登校してたっけ?」
「今日はたまたま〜。珍しく早く起きちゃってさ。湊はいつもこの時間?」
「うん、大体はこの時間だよ。人が少ないし、それに――」
「ん? どうしたの?」
「……」
言いかけたときに止められると、ちょー気になるよねぇ〜
「へいへーい、黙っちゃってどうした〜? 私に見惚れちゃった系?」
「違うよ。ただ……人が少なくて、歩きやすいだけ」
◇◇◇
「ん〜〜〜〜……クリア!」
壮大なBGMとスタッフロールが流れる。
秋音ちゃんに勝手にクリアされたゲーム。もう一度最初から攻略して、ようやくエンディングまで辿りつかれたよ……。
早く天野くんと、感想共有したかったから結局タイムアタック並みクリアしちゃったな。
……って、ちがうちがう。
ストーリーの続きが気になってたし、いつ人格が切り替わるか分からないから早めにクリアしたかっただけ。それに、動画的にもおいしかったし。
理由は一杯あるし……。
うんうんと頷きながら、誰に言い訳してるのか1人で納得させる。
ガラッ!
「うひゃいっ!?!?」
教室の扉が勢いよく開いて、全身がびくっと跳ねた。
思わずゲーム機を落としそうになる。
「あ、あぶな……」
「も、もう……だれ……?」
小さな声でつぶやいて、ゆっくりと顔を上げると――
そこには、カースト上位に所属していて金髪に化粧、制服も改造して、休み時間とかにすきあらばダンスしてる令和の陽キャギャル……早江照代。
……ひゃい。
そそくさと席に戻って、即・寝たふり。
み、見られた……目、あっちゃった……!ど、どうしよう……どうしてこの時間に!? いつも遅刻ギリギリじゃ……。
と、とりあえず……寝たふりでやり過ごそう……Zzz。
なんか近づいてる気がするけど、気のせい……きっと気のせい……。
だって、私は教室の一番後ろの席で――
早江照代さんは、前の方の席のはずで――
…………
…………………ひいいぃぃぃ!!!!!
全然気のせいじゃなかった!!
むしろ気のせいであってほしかった!!!!
目を閉じたままでもわかる。
圧が……陽のオーラが……すぐ隣に立ってる……ッ!!
南無妙法蓮華経、南無阿弥陀仏、急々如律令、アーメン!
隣で、椅子を引く音がした。
はえ?……もしかして……
チラッ。
……天野くんじゃん!」
「うわっ!?……びっくりした……」
「こっちのセリフだよ……。ねぇ聞いて、さっきね、早江照代が来たと思って、びっくりして寝たふりしちゃったの」
「でもね、よく考えたら、こんな早い時間に登校してくるわけないよね……」
幻覚でも見てたのかな?天野くんと見間違えるなんて……
「え? い、いや……たまには、あるんじゃない?」
……?
――違和感が、のそのそと頭をもたげたその瞬間。
「何々〜!? 私の話〜!?」
「ひゃいいぃぃ!!!」
叫ぶと同時に、反射的に天野くんに飛びついた。
「うぐっ……く、苦しい……なんか今日……朝から……こんな役回りばっか……」
「あはは!彩葉、何やってるの〜」
「な、なんで……早江照代さんがここに!?」
「なんでって、さっき湊と一緒に入ってきたじゃん?」
「てか、なぜにフルネーム? 昨日みたいに照代でいーよ?」
――昨日!?
「あっ、いや……え、えっと……」
言い訳が、言い訳が……こ、こない……!
「まあまあ、早江さんの名前ってついフルネームで呼びたくなるよね。語呂がいいというか、なんというか」
――天野くん! ありがとう、助け船!!
「それよく言われる〜! 私もそう思ってるし、見る目あるね、湊」
……み、み、みみみ……湊!?
◇◇◇
「来週はテストあるから、はよ帰って勉強しろよー」
「あと、補講はめんどくさいからやらない。でも赤点取ったら私の評価に響くから絶対にとるなよー」
((最低な教師だな……))
「四季さん? HRも終わったし、帰ろうよ」
「……ちょっとだけ、待って。今日一日中……陽キャと話してて、HPゼロだから……」
「はは、、じゃあ自然回復したら教えて」
優しい声に救われる。
机にべたっと頬をつける。冷たい表面が気持ちいい。何も考えずに溶けてしまいたい。
今日は、誰にも代わらなかった。まるっと一日私のまま。
……だからこそ、疲れた。
早江さんは、すごくいい人、話も合うし、オタクに優しいギャル。
でも……私は、毒沼に浸かってる感じ
――きっと、みんななら平気なんだろうな。
Zzz……
「――っ!?!?」
思わず飛び起きる。
……いつの間に、寝てたの?
目の前に――びっくりした顔の、天野くん。
顔が、みるみる熱くなる私。
反射的に手で顔を覆う。
「ご、ごめんなさい……!いつのまにか寝ちゃってて……。あれかな、昨日……秋音ちゃんが夜更かししちゃって、そのせい……かも……」
もう、穴があったら入りたい……。
「大丈夫だよ。ゲームしてたから……よっぽど疲れてたんだね」
優しい声にホッ、と胸の奥が緩む。
「……帰れそう?」
「う、うん。ところで、何のゲームしてたの?」
「この前、四季さんに勧められたゲームだよ。
やってみたら思ったより面白くて、ハマってるよ」
「ほんと!?どこまで行った?この前のガチャ回した?イベント走った?私はもう完走したよ!」
「あとね、今やってるイベントは動画とかでは火パが良いって言われてるけど、ちょっと構成変えたら、私の作ったパーティの方が効率が良いんだよね、まだ周回するならおすすめだよ!」
ほら!と言わんばかりにスマホを開いて、自慢の最強パーティを見せてあげる。
「へぇ……どれどれ……。これ、全キャラ完凸してるパーティだね」
「でしょ〜!?羨ましい?特にね、普段使われないキャラを採用してみたらすごい効率が上がってね。誰も目をつけてなかったんだー」
「それはすごいけど、僕はこのパーティちょっと作れそうにないかな……」
「え、あっ……で、でも!今持ってるキャラ次第では作れるし、それに……わ、私のキャラも……貸せるから……」
「確かにね。折角なら一緒にマルチでイベント走ろうよ」
「えっ……う、うんっ! やろうよ!!」
友達と一緒にゲーム……いい響き!
「あ! じゃあ、あそこのファミレス行こ!」
確か財布にクーポン入ってたし――行かない理由はないよね!
「あ、あそこはやめといた方が……って、もう遅かったか……」




