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あら、22話?

「この服装で……良かったかしら?」


 チラリと自分の姿を見下ろす。

 しわだらけだったブラウスはアイロンをかけ直して、髪も丁寧に梳かした。


「……ううん。今日はただ勉強するだけ。中間考査の範囲を教えないといけないし……それに、わたしたちのこと、どこまで聞いたのかも確かめないと」


 胸の奥にわき上がるドキドキを押し込めるように、スマホの画面を鏡代わりにして、前髪を整える。


「四季さん、待たせちゃったかな?」


 ――ドキッ!


 不意にかけられた声に、胸が声が跳ねる。慌てて口を押さえて、手にしていたスマホを素早く鞄にしまう。


「あ、ううん。わたしも……いま来たところよ」


 頬がほんのり熱を帯びるのをごまかすように、控えめに微笑んだ。


「そっか、良かった。早めに来たけど、もう着いてたからびっくりしたよ。」


「少しだけ、余裕を持って出たら思ったより早く着いちゃったの、今日はよろしくね」


 天野くんも予定の時間よりも早く来たってことは楽しみにしてるってことなのかしら?


「うん、よろしく。頼りにしてるよ」


 ◇◇◇


 うん、昨今のファミレスのトイレって、やっぱりすごくきれいだよな。


 個人的にはハンドドライヤーだけじゃなくてペーパータオルもあると、かなり好感度が高い。


 手を洗って、ハンカチで水気を拭き取る。


 ……まあ、そんなことは置いといて。


 雰囲気的には春香さんなのかな。秋音さんのメッセージを見て連絡してくれたって感じなんだろうか?


 学校ではよく話すけどこうして、休みの日に会うのは初めてだし、それに春香さんは一番女性って感じがするから、ちょっと緊張する。


 いや、もちろん他のみんなと話す時も緊張はするんだけど……夏海さんはすごく話しやすいし、秋音さんは距離感が不思議だし、冬乃さんは趣味が近くて気が合うんだよね。


 春香さんって……こう、おっとりしてて、ふわっとしてて、話し方も態度も可愛らしくて……。しかも僕の目を、まっすぐ見つめてくれてて。


 あれ? もしかして、僕のこと……好きなんじゃ?


 ……いや、無いよな。春香さんは誰にでも同じように優しくて、同じように笑ってくれる人だし。


 席に戻るとき、僕は軽く深呼吸する。


「ごめん、お待たせ」


 微笑みながらボックス席に腰を下ろして言うと、春香さんもにっこり微笑みを返してくれる。


「ううん、全然待ってないわ。わたしもちょっとお化粧直ししてくるね」


 そう言って立ち上がる動作がすべて落ち着いていて――なんだか大人っぽい。


 はぇー、春香さんってお化粧してたんだ。


 あっと……気を引き締めないと。

 再来週は中間考査があるらしいし、体育祭が終わったからって浮かれている場合じゃない。


 しかも、中間考査が終わったら3週間後には文化祭も控えてるっていうし……結構忙しい。


 とりあえず、目の前のことに集中しよう。春香さんや冬乃さんにまだちゃんと説明できてないし、夏海さんもまだ出てこれてない感じだし――やることは山積みだ


 鞄からノートと教科書を取り出し、机に広げる。


「――お待たせ、天野くん」


 顔を上げると、春香さんがニコニコと立っていた。


「おかえり、四季さん」


 声をかけても、なぜか四季さんは立ったまま。


 僕の方をじっと見て――ニコニコと微笑んでいる。


 あれ? なんで座らないんだろう?いや、あぁ、もしかして……


「四季さん、今日の服装すごくいいね。学校とは違った可愛さがあって凄いお洒落だと思うよ。」


「あら、ありがとう。天野くんはお世辞がうまいわね。」


 ぱっと花が咲いたみたいに柔らかく笑う春香さん。


 なんて、威力だ……!


 そして正面に座る……かと思いきや、春香さんはするりと僕の隣に腰を下ろした。


 ……え、えっと……なぜだろう?……心臓が変に跳ねる。すごくドキドキする。


「あの、四季さん? どうして隣に?いや、別にいいんだけどね」


 声が震える。


「ふふっ。勉強を教え合うなら、隣の方が教えやすいでしょ?」


「あ、確かにそうだね」


 理にかなってる。完璧な作戦だ。

 人の目と、僕の心さえ気にしなければ……ね。


「……天野くん。先に、ひとつだけ聞きたいことがあるの」


 先程のふんわりした雰囲気とは違って緊張した様子で僕の目を見つめる。


「わたしたちのことについて……秋音ちゃんは、どこまで話したの?」


 僕はごまかさず、知っていることをすべて伝えることにする。


「……そう。そこまで知ってるのね」


 春香さんは短く息をつき、すぐに小さく首を傾げた。


「秋音さんは、もっと仲良くなりたいって言ってたよ。」


 結局、冬乃さんに仕返しっていうのは建前だったのかな?


「秋音ちゃんの言いたいことは、なんとなく分かるわ。だとしても、前もって相談してくれたらよかったのに……ほんと、もう、あの子ったら」


 悩んでいた顔はすっかり消え、ぱっと花が咲いたような笑顔が戻ってくる。


「ねえ、天野くん。夏海ちゃんや秋音ちゃん、それに冬乃ちゃんについて……もっと、教えてくれないかしら?」


「もちろん。まずは秋音さんから――」


 ◇◇◇


「早江さん、来て早々だけど17卓にお料理運んであげて」


「あいよー。17卓ねー」


 んー、フライドポテト2つにドリンクバー、これは勉強にきた学生でしょ!私ってばさえてるよ〜。


「お待たせしましたー。こちらフライドポテト、お2つでーす」


 ……あれ〜? この2人。クラスメイトの四季さんと天野くんじゃない!?


「「ありがとうございます」」


「あ、はーい、ごゆっくりどうぞー」


 ペコリとお辞儀して、素早く立ち去る。


 えぇ〜!!! 2人っきりで、しかも隣同士!? ぜっったい付き合ってるって! 天野くんのやつ手出すの早っ! 転校してまだ3週間ぐらいでしょ?


「ちょっと様子見しちゃおっと!」


「早江さん、仕事してよ……」


「大丈夫大丈夫。今超ヒマだし〜」


 トレイを拭きながら、店長をぐいっと肘で突く。


「それより店長!見て!あのカップルいつ来たの?」


「カップル? あぁ、あの学生さん? ……知り合いなの?」


「たぶん!いやそう!隣の男子は天野くん! 最近転校してきたのに――クラスの花形、四季彩葉さんと付き合ってるのよ!」


「そ、そうなんだ……。いいことじゃん」


「よくないよ〜! 確かにクラスでもよく話してたから仲良いと思ってたけどさ〜」


「そっか。……まあ、お客さんいるから、あまり騒がしくしたらダメだよ」


「はーい!」


 めちゃくちゃ仲良いじゃーん! 超べったりだし!てか、何故に隣同士? 普通は向かい合うでしょ?


 しかもポテト2つ頼んでるのに分け合ってるって……え、なぜ?わざわざ?


 これ絶対付き合いたてだよね〜。体育祭の後とかかな? ……そういえば、あの日四季さん教室残ってたっけ?あー、あの後告白されたんだろーな!


 ◇◇◇


「おつかれっした〜」


「お疲れ様。まかない食べていく?」


「食べまーす。決まったら呼びますね〜」


 まだ四季さんと天野くんがいるからちょっと茶化しに行っちゃおーっと!


「やっほー、四季さんに天野くん! 勉強熱心だね〜」


「あ、早江さん。やっほー」


「こんにちは、早江さん」


 にっこり笑って挨拶しながら席につく。


「いやぁ〜、2人ともずっと勉強してたけど、どれだけ成績上げる気〜?」


 っていうか! 最初にちょっとイチャラブしてたくせに、その後はガチで勉強しかしてないんですけど!?


 もっとイチャイチャしなさい!


「もう少しで中間考査だからね。範囲がわかったし前もってやっておくのは大事だよ」


 四季さんも「そうね」と言いながら頷く。


「そうだけど、付き合いたてでそれってどうなの!?」


「付き合いたてって?」


「誰が?」


 私は2人を交互に指差す。


「「付き合ってないよ/わよ?」」


「え?付き合ってないの?」


 2人とも無言で頷く。


「でも、体育祭の後四季さん教室に残ってたし、片付け手伝ってくれた後、天野くんが言ったんじゃ?」


「あ、いやそれは違ってて……まあ、相談というか、なんというか……」


 なーんかやけに歯切れが悪いじゃんか。隠してるの?でもそんな感じもしないんだよね。


 あ~、冴えてると思ってたのにな〜。

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