もう!20話です……
「私的には、別に言ってもいいと思ってるんだけどなぁ……」
秋音さんは不満顔で口を尖らせて、足をぶらぶらさせる。
「……みんなは、そうじゃないと?」
「まあ、そう言ってるっていうより……そう“思ってる”っぽいんだよねー」
「湊くんが私の立場なら言っちゃう? 言わない?」
「僕が彩葉さんの立場なら言わないかもしれない。でも、僕の立場から言えば……仮定はどうであれ、打ち明けてくれて良かったって思ってるよ」
これは本当にそう思ってる。暴露の理由がどうであれあの時に言ってくれたから僕は四季さんたちとここまで仲良くなれたしね。
「そっかー。そう言ってくれると……助かるような、助からないような?」
うーん、なんだかまた一段と空気が重くなった気がする……。
夏海さんのこともあるし、何か気の利いたことを言えたらいいんだけど。
「てかさ! 思うんだけど、みんな気にならないのかな!?」
秋音さんが座っていた机から勢いよく飛び降り、グッと距離を詰めてくる。
うわっ!びっくりした……落ち込んでたのかと思ってたけど、そうでもなさそう
「な、なにが……?」
「ほら、私たちって生まれた時からずっと一緒にいるでしょ!? 今まではみんなノートとかスマホでしか伝えることしかできなかったけど、湊くんが居たらもっと細かくみんなを知ることが出来るのに!」
「……細かく、みんなを知る?」
「そう! 家族にしか見せない顔もあるでしょ? でも、男にしか見せない顔もあるでしょ?」
なんかやけに含みがある気がするけど、確かに、家族の前でしかしない態度とか、女子が見てたら普段よりも張りきることもあるし、男同士だとまた違った楽しさがあるとかのそう言う意味だよね?……これは。
「まあ、確かにそうだね。要するに彩葉さんは今以上に3人と仲良くしたいってことだよね?」
「イエス〜! いいねー、その察し! 私の冷えたパッションがちゃんと伝わってるね!」
秋音さんがぱちんと指を鳴らして嬉しそうに笑う。
転校初日の夕方や、体育祭で家族と会った時もそうだったけど――秋音さんって、本当に家族が大好きなんだな。
「うん、彩葉さんの気持ち、よく伝わったよ」
「わー、すごい頼もしー! じゃ、その調子で夏海ちゃんのご機嫌と春香ちゃんと冬乃ちゃんにはきっちり説明よろしくね!」
「えー? これ以上やっちゃうと、ほんとに親友ポジションか解説役になっちゃうんだけどなー」
また言ってる……秋音さんのことだから冗談なんだろうけど、案外気にしてそうだし、なるべく僕ひとりで頑張ることにしよう。
「彩葉さんって、結構ゲームとか漫画とか読むの?」
「やるよー。春香ちゃんが読んでる本とか、冬乃ちゃんがやってるゲームとか漫画とか見てるからねー」
「あ!聞いてよー。この前さー、ふゆのんのゲーム中に私に変わったんだけど、最後までクリアしたら凄いチャットで怒られたんだよねー」
「……当然だと思うよ、それは」
悪魔かな? この子は……通りで冬乃さんがあんなに意気揚々とストーリーについてとか考察とか話してたのに、ラスボスとかエンディングのこと聞いたら言葉を濁らせたわけだよ……。
「後ねー春香ちゃんの本を読んでたらさー。栞がなかったから挟んでた栞を代わりに使ったらねー、次に読む時に本よりもでかい栞に変わってたんだよねー。あれ読みづらくなかったのかな?」
そういえば春香さんが本読んでる時に、でかい栞を挟んであったから聞いてみたことあったけど……そういう意味だったわけか。
あの時の春香さん怖かったな……
「彩葉さん、あんまり人の物をいじるのはよくないよ?」
「えー? でも、みんな私のものだよ?」
「そりゃそうだけど、四季彩葉さんのものでもある以前に春香さんや冬乃さんのものでもあるからね」
「確かに~……じゃあ、気をつける!」
◇◇◇
――――
彩葉:6:00
今日はわたしがお弁当を作ったわ。みんなの好きなものを入れたから楽しみにしててね。
彩葉:12:04
ありがとう。甘い卵焼き入ってる?
彩葉:12:06
美味しい!
彩葉:12:07
そういえばどうして冬乃ちゃんや夏海ちゃんの好きなものを知ってるの?
彩葉:12:47
誰かそろそろ変わって欲しい、、二人三脚の練習始まっちゃうよ、、
――――
「あちゃー、やっぱり連絡できる状態だったのに送ってないってことは、それだけ楽しみにしてたのかなー?」
「『湊くんに私たちの秘密話してるから! 詳細は湊くんに!』っと送信!」
「ふう、いい仕事したな〜」
額から垂れてくる汗を拭う動作をする。ホントは垂れてないのにね!一仕事やったな〜。
「……何の話?」
「あ、おかえり! 遅かったね! ……おっきな方だった?」
「こら、そんな下品なこと言っちゃ駄目だよ」
「あはは、ごめんごめん〜」
「春冬'sはチャットで伝えたから、あとは湊くん経由でお願いね!」
「夏ちゃんはもう、謝るしかないねー。いつ起きてくれるかも分からないし」
「……あんなに怒ってたし、聞いてくれるかな?」
「一応ねー、私たちって変わる前の感情とかは次に持ち越せないの。ほら、カレー食べてる時にアイス食べたら福神漬けの食感が分かんなくなるみたいな?」
「えっと……つまり彩葉さんが嬉しい時に誰かに変わって、また彩葉さんに変わった時、その嬉しかったことは忘れちゃってるってこと?」
「そのとーりー! 誰かが言ってくれたり、時間が経ったり、その状況に近ければ思い出すけどね~」
元気いっぱいにジャンプして、大げさに両手を広げる。
「だから! 変わった時に一生懸命謝ったら、許してくれると思うよ! ……多分!」
「ん? それって、家で変わって思い出したら……僕はどうすればいいの?」
私は笑顔を崩さずくるくると回転する。この回転だって意味があるんだよ?ぐるぐる回ると楽しい気持ちになるしね!
「ねー、そろそろ帰ろーよ!」
「え? いや、どうするの? あ、ちょ、待っ……!」
◇◇◇
「えぇ……秋音ちゃん、何考えてるの? これって秋音ちゃんの文章だよね……」
家に帰ってゴロゴロしてたのかな。その流れで変わって、チャット開いたら
――――
彩葉:17:11
湊くんに私たちの秘密話してるから! 詳細は湊くんに!
彩葉:17:47
え?なんで?せめて一言相談してよ、、
――――
……信じられないよ。
てか、私……天野くんに迷惑しかかけてないのに。
さらに追い打ちで秘密まで言っちゃって……きっと私の評価、酷いことになってるよね。
そうだよ。練習では上手くいってたのに、本番の二人三脚は私のせいでコケたし……私って、どうしていつもこうなんだろう。
あ。でも、一緒にゲームしたいな。誘ったら、やってくれるかな?
……そ、そうだよね。詳しいことを聞くついでに、一緒にゲームしてるだけ。別に、誰も文句なんて言わないよね。
よし……じゃあ通話ボタン押そう……押すよ……押す……お、す、……
……ふぅ。やっぱりやめようかな。インしてたら、向こうが誘ってくれるよね……? うん、そうだよ。もうちょっと待ってよ……




