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ダンジョン内で実験(4)

「兄貴が、魔法の運用実験を積極的に考えるとは思わなかったな」


 地下12階層に降りる階段に向かっている間に弟が後ろから話しかけてくるが、やることが無さすぎて最近はだらけていたし、思ったよりも地下11階層は忌避感すら克服できていれば難しい階層ではないので、


「持っている力で、どれくらいの事が出来るか知っておいた方がいいからな」


 そう弟に返して地下12階層へ降りる階段を見つけるために周囲を調べる。         

 一応、150億近くの資産形成には成功したが、お金というのはあればあるほどいいものだ。

 あと、自分の力の限界を知っておかないといざと言うときに困るからな。

 少なくとも、神々のダンジョンのスタートダッシュ時のボーナスタイム時、それらを潰した掲示板の書き込みをしたやつは、俺よりも能力は高いと見ている。

 いまは人殺しや犯罪者はダンジョンに入れないし、犯罪を行えばスキルやレベルの没収に加えてダンジョンへも入れなくなる。

 だが、もし自衛でも対人戦が許可された場合、強いやつが正義となる。

 そうなった時に、自分の身すら守れないのでは話にならない。


 ――と、いうことが昔のダンジョン系のライトノベルに書かれていたことを、少し前に思い出したことをさっき思い出した。


 行動に移さなかったのは、地下1階層から地下10階層までの間で農作物を売って稼ぐというスローライフが俺にはあっていたからだが、それが無くなったので今は魔法実験に邁進するとしよう。


 頭の片隅で、そんな事を考えながら空中に無詠唱で形成したアイスランスを近づいてきたゾンビに打ち込む。

 アイスランスの直撃で胴体が真っ二つになったところで、もう一つアイスランスを空中に形成し、頭を打ち砕いた。

 考え事をしていたので2発アイスランスを放ってしまった。

 少し注意力が散漫しているな。

 歩きながらアイテムボックスを開いて倒したゾンビの魔鉱石を回収。


「なあ、兄貴」

「――ん? どうかしたのか?」

「いまのって何だ? すげーもの見たんだけど……」

「何って水魔法だが?」


 俺のスキル【水魔法Ⅴ】は、ほぼ自由自在に扱うことができるし威力も他のスキルの影響を受けている事もあり、かなりの威力がある。


「水魔法って、俺が兄貴に魔法の習得方法を知らせる前に覚えていたんだよな?」

「そうだな」

「はー。俺の水魔法とか、ペットボトル1個分の水を作るので限界なのに……」

「それを氷にして飛ばせばいいだろ」

「飛ばせないから言っているんだよ!」

「そうか。なら、水魔法と氷魔法と風魔法の同時発動とかどうだ?」

「同時……。それは右手から氷魔法、左手から風魔法っていう……あれか?」

「あれだな――」

「ふーむ」


 弟の浩二がブツブツ言いながら歩きだす。

 その前を俺は歩きながらゾンビを倒しては魔鉱石を回収していく。

 もちろん使う魔法は【水魔法Ⅴ】だ。

 正直、属性魔法Iだと弱すぎてゾンビの足止めをして数を打って倒すしかない。

 つまり効率が悪い。

 まぁ、ゾンビなら倒せなくはない。

 

「火属性魔法もありか」


 無詠唱で1メートルくらいの炎の球を頭上に展開して出現したゾンビに向けて放つ。

 それによりゾンビが大炎上して魔鉱石を残して消える。


「やっぱりゾンビの弱点は火か」

「たいていの生き物は火が弱点だと思うぞ? 兄貴」

「そりゃそうだな」


 よくよく考えて見れば火属性耐性とかなんだよ? と、言いたくなる。

 どうして生き物の癖に火属性耐性あるんだよと。

 まぁ、あのへんは火山系の魔物とかいう設定があるゲームとかラノベとかあるから、仕方ないと言えば仕方ないのかも知れないが。


「兄貴! 出来た気がする!」

「ほう」


 10分ほど歩いたところで、俺と弟は足を止める。

 そして前方からゾンビが3体ほど近づいてくる。

 その歩みは非常に遅い。

 物語では走るゾンビというのがいるらしいが、走るゾンビって何だよ? と、マジでツッコミを入れたくなる。


「右手から風魔法! 左手から火魔法! 合体! 火炎旋風!」


 弟の浩二が展開発動させた火属性と風属性の魔法は、俺達の前に出現し広がっていき――、高さ2メートル、幅3メートルほどの炎を作り出し――、


「あっちぃ!」

「うあああああああ」


 魔法攻撃力補正とINT値が低い弟の浩二の魔法は、俺と弟だけを呑み込んで数秒後に消滅した。

 ちなみにゾンビには届いていないので、当たり前のようにゾンビはノーダメで近づいてきている。


「お前、ふざけんなよ!」

 

 俺はアイスランスを展開してゾンビをぶっ殺しながら、弟の浩二に若返りの付与がついているキュウリを渡す。

 素直にキュウリを食べた浩二の体は、至る所に水ぶくれや炎症があったが時計が逆再生されるように肉体が元の健康的な状況に戻る。

 俺もキュウリを食べて体に受けたダメージを回復させる。


「悪かったって」

「巻き込む系の魔法はマジでやめろよ。自爆で死ぬとか洒落にならないぞ!」

「いやー、俺もまさか近くで魔法が発動するとは思わなかったんだよ。ゾンビの足元に魔法発動を意識したんだけど何でだろ?」


 やっぱりINT値が低いからか?

 いくつか思い当たる節はあるが、巻き込む系の範囲系魔法は浩二だけを生贄にして練習してもらって実験データを取ることにしよう。


「浩二」

「なんだよ?」

「範囲系の魔法なんだが、回復系アイテムはあるから俺を巻き込まないように練習してくれ」

「俺の兄貴がクズな件について」






                                                                                                                                                                                      


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