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ダンジョン内で実験(2)

 養老渓谷ダンジョンに、弟の浩二と二人で潜る。

 改札口を抜けて、地下1階層まで階段で降りたあと、「兄貴」と、弟が俺の服裾を掴んできた。


「どうした?」

「それが、じつは地下10階層まで降りてなくて――」

「マジか……」


 地下10階層まで階段で降りたあと、地下11階層に降りる階段前に到着する。


「ここからはゾンビが出るからな? 気をつけろよ?」

「分かってるって!」


 地下11階層へ続く階段を降りていく。

 途中で数人の冒険者とすれ違う。

 そして地下11階層に到着し、20秒ほど歩いたところでゾンビの姿を発見する。


「浩二。それで地下11階層まで来てゾンビに出会ったが、何をするつもりなんだ?」

「こう――」


 浩二がアイテムボックスから金属製の野球バットを取り出す。

 そして手のひらを向けた先に直径10センチほどの火の球が出現した。

……まさか!


「――するんだよ! ファイアーノック!」


 火の球を、金属製の野球バットで打つ。

 打たれた火の球は、それなりに早い速度で飛んでいき10メートルくらい距離が空いていたゾンビの体に着弾。

 そしてゾンビの体は燃え上がり、あとには魔鉱石以外は何も残らない。


「これが! ガスコンロの火と! 金属製のバットを合成した新合成魔法! ファイアーノック!」

「……お、おう」

「なんだよ、兄貴。もしかして、俺がアイテムボックスの新たなる使い方を思いついて、その可能性を見てびっくりしたか?」

「かなりな……」

「そしたら、これを見たら、もっとびっくりするかもな!」

「まだあるのか?」

「ああ!」


 コクリと頷く俺の弟の浩二。

 その瞳は爛々と、これでもかというほど自信に満ちて輝いている。

 そして、周りをキョロキョロと見渡す。


「モンスターはいないぞ?」

「いや、そうじゃないんだ。とりあえずいくぞ! 兄貴!」

「おう!」

「創身! 仮面アクエリアス!」


 俺が見てる前で、弟がアイテムボックスを弄るような真似を空中に向けてやったかと思うとポーズを決めて一瞬で日曜朝の戦隊ヒーローの主人公の仲間の一人(タイツと仮面あり)に変身した。


「どうだ? 兄貴!」

「……お前が、周りを見ていた理由が分かった」


 所謂、あっ! 察し! と、言うやつだ。

 しかし、戦隊ヒーローごっこ変身がアイテムボックスで出来るとは……。

 一瞬でコスプレ変身したぞ。

 ちょっと、かっこいいとか思った。


「しかし、あれだな……。これ、女性たちに教えれば魔法少女に変身できるよな」

「氷河期の魔法少女とか……、兄貴……」

「いや、忘れてくれ。言葉の綾と言うやつだ」

「兄貴用のコスプレ衣装もあるぞ? 俺は水のアクエリアスだが、兄貴用にレッド用のマーズもある!」

「必要ないから。それよりも、これで全部か?」

「今日は全部だな」

「俺は、お前の変身を見に来るためだけに養老渓谷まで車を3時間も運転してきたのか?」

「何を言っているんだ! 兄貴! 戦隊もののヒーローに瞬時で変身できるとかめっちゃかっこいいじゃねーか!」

「頭が痛くなってきた。それなら、自宅でも出来ただろ……」

「それだと何ていうか解放感が!」

「これからお前のことを変態仮面と言う事にしようか」

「――と、とりあえず! 兄貴の分は、これだから!」


 弟の浩二から無理矢理渡されたタイツとフルフェイスのヘルメット。

 真っ赤なタイツに真っ赤に燃え上がるような炎をイメージしたペイントがされているフルフェイスのヘルメット。

 それは主人公の変身後の姿のコスプレ衣装だ。


「はぁー」


 思わず溜息が出る。

 仕方なくアイテムボックスにコスプレ衣装を仕舞い、俺は弟と養老渓谷のダンジョンを後にしようとしたところで、さらに地下に潜りたいと弟が我儘を言ってきた。

 ここはダンジョンの恐怖というのを教えた方がいいかもな。

 




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― 新着の感想 ―
火の球を、金属製の野球バットで打つというのは、何がどういうことでしょう。 燃えてるものを打つなら分かりますが、ガスコンロの火を使ってたような
弟さん立派な氷河期世代だったんだね(ぶっちゃけオタク) 火魔法を覚えれることを教えてあげよう。
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