世界は平和になったらしい
日本で神々のダンジョンが実装されてから1年が経過した。
運よくスタートダッシュで養老渓谷ダンジョン近くに一軒家を建てる事が出来るだけのお金を稼ぐことが出来た。
「佐藤様、それでは新築の図面ですが、これで大丈夫でしょうか?」
大多喜不動産社長、我妻さんが図面を見せながら話しかけてきた。
「そうですね……」
部屋数は、全部7つ。
2階建ての一戸建て。
男なら誰しもが夢を見る戸建て。
「どのくらいかかりますか? 建築まで」
「そうですね。半年から1年と見てもらえれば」
「分かりました。あと、お願いがあるのですが」
「お願いですか?」
「はい。プールが欲しいです!」
「プールですか? 年間維持費5万円前後。建築費用も、少なくとも数百万円に――」
「あ、それならお願いします」
「いいのですか? プールを敷地内に作って」
「もちろんです! お願いします」
自宅にプールとか、男なら一度は夢みたモノだろう。
あと一軒家に住むようになったら、アラスカンマラミュートを飼ってモフモフしたい。
「それでは、ご自宅建築と並行してプールの建造を行います。それで支払いですが――」
支払いに関しては、前金で半分、引き渡し時に半分と言う事で話がついた。
それ以降は台所などの話になったが、家具も含めると時間がかかりそうだったので時間的にも遅かったのでアパートへの帰路についた。
――翌朝、ダンジョン内に潜らなくなってから一週間が経過していたが、朝早く目が覚めた。
「やることがないと、暇だな……」
布団の上で、ぼーっとしたまま見た事がある天井を見上げながら、これからの事を考えて通帳を見る。
通帳に書かれている数字を見れば、そこには154億3300万1567円と記帳されている。
「あれだよなー。何をすればいいんだろうか。とりあえずニュースを見てみるか」
退屈こそが人を殺すとあったが、木戸商事株式会社と契約が終了してから本当に暇だ。
パソコンを起動してニュースサイトを覗いてみるが、どうやら一週間前に世界サミットがあったというニュースが書かれていた。
「世界サミットか。――ん? ロシアとウクライナ間のゴタゴタがようやく終結したのか」
どうやら、俺が木戸商事と契約をして毎日ダンジョンに潜っていた間に世界情勢は随分と変わったようだ。
そして樺太からロシア本土にモンスターが渡ったあとの続報がないことから、どうやらロシアのモンスター封じ込めは上手く行っているらしい。
情報を得たあと、だらだらするために二度寝をしようとしたところでアパートのドアがノックされた。
「はい、どちらさまですか?」
「……」
無言。
何度、ドア向こう側へ誰かを催促しても無言。
よし、無視しよう。
ヘッドフォンをつけてベッドで横になって目を閉じた。
やることがないので、今日も一日、ダラダラしよう。
起きたのは夕方以降。
自宅近くの中華料理店に入り四川麻婆豆腐と白米を頼んで食事を摂ったあとは、自宅へと戻ると携帯電話に着信履歴が数件。
「菊池さんと、実家と、良く分からない連絡番号か」
パソコンで、良く分からない連絡番号を打ち込んで検索をかけると、怪しげな宗教の電話番号や、組織名が出てきたのでブロックしておいた。
「これって、俺が金を持っているって知っているってことだよな……。どこから、そんな情報を得てくるのか……」
宝くじを購入すると知らない親戚や、過去の友人や、会ったこともない名前も知らない知人とからたかられるという都市伝説を聞いたことがあるが本当なのかも知れないな。