国際会議(3)
「――そ、それは勘違いというものだ」
「ほう。ところで話は代わるが、オホーツク海から核ミサイルが樺太に向けて発射されたが日本国領海に近づいたところで核ミサイルが消えたが何か知らないかね?」
「――な、何も知らん!」
「そうか」
アメリカ大統領の言葉に、ギリッとロシア大統領は、歯ぎしりをする。
実際、日本領土である樺太に向けてロシアが核ミサイルを発射したのは、アメリカ合衆国の上層部は理解していたが、その核ミサイルが日本領海に入ったと同時に唐突に消えてしまっていたのだ。
その核ミサイルの行方が、ロシア本土の一地方都市だったとは予想できずにいたアメリカ合衆国ルーズバルト大統領は日本国の謙島総理を見て眉間に皺を寄せると(つまり、日本国に核ミサイルを撃ち込もうとしても、撃った国に核ミサイルが転移し着弾するということか……、厄介なことだな。そして、その情報を既にロシアは中国に共有していると。これは北朝鮮も知っていると見た方がいいかも知れぬな)と、思考すると、
「それでは樺太に関しては、アメリカ合衆国とEUの方で何とかしようではないか」
「それは必要ない」
「アリスタリフ大統領は自国の問題解決に邁進してほしいとアメリカ合衆国としては思っておる。日本国からも樺太、北方四島で起きているスタンピード問題解決については、同盟国であるアメリカ合衆国は一任されている」
「なんだと!?」
ギロリと、ロシアのアリスタリフ大統領は日本国首相を睨みつける。
「日本としても、今回のダンジョンはロシアが隠蔽さえしなけば……」
「日本の分際で! 第一、日本の神々が全ての元凶だろうに!」
「日ロ条約を破って不法占拠してダンジョンが出現したことを去年の国際会議で報告しなかったのが、そもそもの問題ではないのかね?」
絶妙なタイミングでアメリカ大統領は割って入る。
そのアメリカ大統領の言動にロシア大統領は中国国家主席を見るが、黙して語らずを貫いていた。
「――ど、どうせ! 世界中から石油や天然ガスが消えたのは日本の神々が原因だろう! 日本だけはいい思いをしているのは、許せない! だから、賠償と謝罪をロシア政府は請求する!」
「……それでは、その議題については日本に持ち帰って精査する事を検討することを検討したいと思います」
「検討を検討する……だと……?」
「はい」
「決裁権を持っているからこそ、この場に来ているのではないのか?」
「もちろん、お約束を検討することを約束しますが……」
凄まじい剣幕のロシア大統領から目を背けて答える日本国首相に青筋を立てるロシア大統領。
「そういうことだ。アメリカ合衆国とEUは樺太の制圧と管理を行う。ロシアには樺太を自国領土として管理する明確な証拠がないからな」
「だから、そんなことは認めない!」
「ロシアが認める認めないのは関係ないのだよ。樺太は日本領土。そもそもな話、ロシアが口出す権利などない。――で、あろう? 謙島首相」
あまりにもあまりなキラーパスに胃がキリキリしだす日本の総理大臣は、「そういう話もあったりなかったりします」と自信なさげに口にする。
「日本は、我がロシアを敵に回すつもりか?」
「そういうことではなくて……。なんといいますか……、日本国としては、もっと早めにダンジョンが出現したと報告して頂ければ……、人材が派遣できたかも知れないかもしれないので……」
「おい! 謙島!」
アメリカ大統領は、日本国首相の名前を呼ぶが、目をあっちこっちに泳がせたまま必死に言葉を探している日本国首相には届くことはない。
「――こ」
「こ?」
「この議題は、一度! 日本国に持ちかえって検討に検討を重ねて検討したいと思います」
「「「「「この検討使が……」」」」」」
どの国の代表も無能すぎる日本国総理大臣に向けて侮蔑の視線を向けた。




