世界中の石油が枯渇したようだ。
――サウジアラビアのとある石油採掘所。
石油採掘をしていた工夫達は、機器を確認していたところ、圧力が急速に下がっていく事に混乱していた。
「大変です! パイプラインから送られてくる石油がゼロになりました!」
石油採掘プラント責任者の元へ、そんな情報が上がってくる。
「どういうことだ?」
責任者は慌てながらも、石油採掘プラントの権利を有している幹部へと連絡をするが、その電話を聞いた幹部の声は、「そちらでも石油が枯渇したというのか! 一体、どうなっている!?」と、言う絶望に近い声であった。
――数日後。日本国政府、首相官邸。
「総理、サウジアラビアも石油が枯渇したと情報が入ってきました」
外務省官僚が、会議室に入ってくると端的に報告する。
その言葉を聞いた日本国首相は、「アメリカ合衆国、EU、カナダ、アラブ首長国連邦、ロシア、イラク、東南アジア、そして日本を含んで化石燃料が枯渇するとは……」と、眉間に皺を寄せて溜息をついた。
そして続いて口を開く。
「日本に備蓄されている石油は、どのくらい持つのだ?」
急遽、招集された経済産業省の官僚が、タブレットを操作しデーターを確認した上で、「日本国内では、通常運用した上では250日前後になります」と、瞬時に答える。
その返答に日本国首相は、両指を組むと、「1年も耐えることが出来ないのか」と、溜息をつく。
「こんなことならEV車をもっと推進しておくべきだったか……」
「総理、お言葉ですが世界で運用されているEV車が利用している電気の6割近くは火力発電で賄っています。よってEV車であっても、化石燃料に依存している点から見ると、従来の車とシステムの根幹は同じですのでEVを押す意味はありません。このまま化石燃料採掘現場が枯渇したままですと、一番危険なのは発展途上国とEUとなります」
経済産業省の官僚がサラッと、これからのことを日本国首相に説明をしていく。
「そうなのか?」
「はい。EU加盟国では、90日以上の石油備蓄が決められておりますが、おそらくはすぐに枯渇するかと」
「そうなると、世界では石油備蓄がされているのは――」
「日本、アメリカ、中国、ベネズエラと言ったところになります。これは、一つの提案ですが総理」
「なんだね?」
「魔鉱石を主軸とした電気発電メカニズムに日本は率先して切り替えるべきだと」
「だが、それでは中東やロシアから圧力が――」
「すでに中東、東南アジア、ロシアなど主要石油取引国は、石油という外交の武器であった資源が枯渇した状態です。あったとしても、自国の経済維持のために輸出する事はないでしょう。今のままですと電気というインフラを失うことになりかねません」
「……君たちはどう思うかね?」
日本国首相は、首相官邸に集まった閣僚たちへと視線を向けるが、誰もが判断がつかないどころか経済産業省官僚が説明した話の内容の3割すら理解できずに呆けていた。
その表情を見た首相は、額に手を当てると経済産業省官僚を見る。
「どうすればいい?」
「まずは魔鉱石発電プラントを、既存の火力発電所と切り替えることが優先事項かと。それと日本国内で、現在は最終実験段階の魔鉱石を利用したエンジンと、それに関わる法律施行――、これは法務省官僚に投げる形になります。それと、魔鉱石を日常的に利用するとなると石油税に変わる新しい税法が必要になります。これは、財務省の管轄となります」
「分かった。各省庁連携して、魔鉱石を動力源とした新しい技術の確立と税制制度の確立と、石油製品に変わる新しい資源の獲得を最優先にしてくれ。とにかく時間がない」
「総理。諸外国から魔鉱石に関して提供案は如何いたしましょうか?」
そこで外務大臣の近くに控えていた外務省官僚が声をあげる。
「そうだな……。それに関しては提供するかどうかをまず検討することを検討すると返しておいてくれ」
「分かりました」