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義務と権利

 木戸商事株式会社のトラックは、まだ到着していないがダンジョン内で卸す穀物、農作物、貝類を採取していく。

 幸いアイテムボックスは300トン以上の空きがあるので、採取だけして後は外でトラックが来るのを待つという手法が取れるのが俺の強みだ。

 4時間ほどかけて採取が終わったあとは、10階層のエレベーターに乗り1階まで戻ったあと、1階から地上まで階段で戻る。

 地上に出たあとは改札口に冒険者カードをタッチして外へと出ると、夕方だというのに40歳を超えたおばさんたちが集団でプラカードを持ってデモ活動をしていた。


「私たちを31階層まで連れていけ! ……か」


 思わず声が出てしまうほど呆れる。

 理由は簡単で、おばさんたちの装備にある。

 それは装備ではなく私服と言った感じで、ハイキングコースに行くのか? と、錯覚させるほどの軽装備。

 中には、山登りします! みたいな装備をしている人がいて少なくともダンジョン10階層下に潜る装備ではない。

 

「あの分じゃ、武器も持ってないんだろうな」


 神々のダンジョンの11階層以下は、モンスターが出るために資金に余裕がない人は、鉈を持参する人がいる。

 11階層から12階層は、安物の鉈でも何とかできるが、12階層以下は剣鉈が必要になってくる。

 そして15階層以下になると登録が必要な日本刀が最適だと言われている。

 尚、一般人の拳銃の所持は認められてはいないが、猟銃に関してはダンジョンが出来る前と同じように資格を持った猟師は猟銃を所持するこが出来るし、資格を持った猟師は、冒険者登録をすれば、猟銃をダンジョン内に持参することだって出来る。

 

「私たちを、31階層に連れていけー!」

「連れていけー!」


 100人近い40代から50代のおばさんたちが纏まってダンジョン前で、ハイキングに行くような装いで自己主張しているのを見ると、やっぱり若返りのポーションというのは、魅力的なんだろうと考えてしまう。


「まぁ、ダンジョン攻略組は、連れてはいかないよな」


 実際、猟銃が入っているであろうケースを肩からかけたプロっぽい人や、一着数十万円単位の現代の技術で作られた鎧を着ている冒険者達は、おばさん集団に声をかけられても無視してダンジョン内に入っていくし。

 そもそも、武器の一つも持参していないってことは、31階層まで寄生する気だろうし、寄生しても31階層のモンスターをどう狩るつもりなのか?

 まさかモンスターまで男に狩ってもらってドロップ品の【若返りのポーション】を奪おうとか考えてないよな?


――普通に、ありそうだ。


 考えながら養老渓谷ダンジョンを出たあとは、プラカードおばさん集団横をスルーして、すでに停まっている木戸商事グループの車に荷下ろししていく。

 

「あっ! 佐藤さん!」

「どうも、木戸さん」

「今日は、こちらに来ているから送り迎えは必要ないという事でしたが、何かあったんですか?」

「いえ。自宅を建てる為の土地売買の話で現地に案内してもらっていたので、そのままダンジョンに来ました」

「そうだったのですか。それにしてもダンジョン前は、色々とゴタゴタしていますよね」


 木戸さんが、苦笑いな表情で【プラカードおばさん集団】を見て呟く。

 

「当事者は必死なんでしょうね」

「それはそうかもですね。それで、佐藤さんは31階層には潜らないのですか?」

「とくには」

「そうなのですか?」

「はい」


 俺はコクリと頷く

 毎日、キュウリを何十本も食べてる俺としては、一日10時間から20時間は若返っているし、塵も積もなので、そこまで必死になる理由はない。


「でも、高く売れますよね? 1本100億円でしたっけ?」

「100億円あっても命の危険がありますからね」


 しかも31階層だと6人パーティで行かないと危険らしいし。

 それに片道で早くても一週間。

 さらに若返りのポーションが出る確率は非常に低い。

 

「そうですね」

「しかも出なければ、かなり大変ですから。出たら大きいですけど」


 収入面に関しては、統計が取れていないから何とも言えないが、今の収入の方が、俺としては稼ぎが安定している分、いいまであるからな。


「そうですよね。出ないと悲惨ですよね」

「はい。それに、自分がダンジョンに潜ると木戸商事への商品納入が滞ってしまいますので」

「あ、それは問題ですね」

「ですよね」


 すでに俺の卸す商品が、かなりの量、市場に出回っているので、その供給をストップするわけにはいかないだろう。

 余程のことが無い限り。





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― 新着の感想 ―
そもそもそんな危険なところには行かないようにお願いする立場だろ、木戸商事
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