果物も劣化しているらしい。
菊池さんのところで昼食を摂ったあとは、木戸商事関係の仕事があるため自宅へと送り届けてもらった。
田植えに関しては、かなり感謝されたが、俺も良い経験をさせてもらったので、お互い様ということで話を濁した。
そしてアパートに戻ったところで、木戸綾子さんから電話が掛かってきた。
「はい。佐藤です」
「木戸です。今日は、何時ころに迎えにいけば宜しいでしょうか?」
「あー、別に大丈夫ですよ? 車ありますから」
「……何時頃に迎えにいけば宜しいでしょうか?」
あれ? 混線していて聞き取れなかったのか?
「すでに車を持っていますから。それに運転免許も持っていますから。木戸さんは営業課長らしいですし、迎えに来なくても大丈夫ですよ?」
「…………あっ! 周りの音が煩くて聞こえませんでした。それでは、そちらに向かいますね!」
「あ、あの――」
そこで電話が切れた。
どうやら本当に電波が悪いらしい。
仕方ない。
今日は、送ってもらうとするか。
少しすると、木戸さんの車がアパートの前に停まる。
「どうもすいません。何だか電話の調子が悪くて――」
「そうなんですか?」
「はい。落としてしまって――、辛うじてメールが送れるくらいで」
助手席に乗り込んだ俺に、画面を金槌が何かで打ん殴ったあとがついているスマートフォンを見せてくる。
これは、果たして落とした時につく傷なのだろうか。
「な、なるほど……。何だか、まるで何かで殴って壊れた感じに見えますね」
「気のせいです」
「――ですが……」
「きのせいです」
「そ、そうですよね……」
すっごく、いい笑顔でニコリと微笑みながら、まるで、それ以上は、突っ込むなオーラを出してきたので、名探偵佐藤の仕事は終了した。
「あの、佐藤さん」
「何でしょうか?」
「今日は、どこかに行かれていたんですか?」
「え?」
「なんだか、いつもとは雰囲気が違うというか……」
「あー、知り合いの農家さんの田植えを手伝っていたので」
「農家……、以前にお会いした女性の?」
「そうですね」
「…………親しい中(仲)なのですか?」
「まぁ父親が、菊池涼音さんの母親と知り合いなので、それ経由ですね」
「そうですか……まだ諦めていなかったんですね(ボソッ)」
「ん?」
「いえ。なんでもありません」
「そ、そうですか……」
菊池涼音さんの名前が出た途端に、何とも言えない空気が車内に流れたので別の話にしよう。
「あの木戸さん」
「はい」
「穀物、小麦、青果ですが品質が劣化しているという事はありませんか?」
話を唐突に変えたことに少し怪訝な表情をしたが木戸さんは、「そうですね」と、話に乗ってくると口を開く。
「佐藤さんが納入してくれている穀物、青果、貝類、農作物は、たしかに月の最初は品質はいいのですが、月末あたりになると味の劣化があると購入者様からのアンケートで言われていますね」
「なるほど……。それは果物関係もですか?」
「むしろ果物関係の方が顕著です。ただ、日本は果物の価格が高いので、安く提供することでバランスをとっています」
「そうだったんですか」




