ダンジョン1階層(3)
念のためにスキル「鑑定」を使いながら野菜を見ていくが、
「全部の野菜に若返りの効果がついてるわけじゃないのか……」
全ての野菜に若返りが付与されているのなら楽だったんだが……。
いや、全部の野菜に若返りが付与されていたら逆に問題か。
むしろ若返りの付与がされている数が少ないからこそ、発見されなかったとか?
もしくは鑑定スキルを誰も持っていなかったとか?
全部、予測の域はでないか。
とにかく昔のMMORPGにあるように、トライアルエラーを繰り返して最適解を見つけていくしかないな。
でも、逆に言えば、昔、流行った月額制MMORPGの全盛期の時のように面白いな。
かなりゲーマーの血が騒いできた。
「となると、野菜を食べるとしたら……」
スマートフォンで検索しながら食べやすい野菜を調べていく。
あまり大きな野菜だと一日24個とか食べられないからな。
それに、持ち帰るとかは論外だし。
それなら簡単に食べられて尚且つ、生でも食べられて、その場で食べられるのがいいよな。
そうなると限られるよな……。
スマートフォンで検索していくと、どうやらキュウリも野菜に含まれるらしい事が分かった。
「よし、きゅうりのエリアに行こう。えっとマップ、マップと」
日本ダンジョン冒険者協会のホームページでマップを呼び出す。
そして、きゅうりが収穫できるエリアを確認。
「俺がいる場所から5分ほど歩いたところにあるのか……」
はっきり言って40代半ばの人間に――、営業だけの体を普段から動かさない男に5分も歩かせるとか正気とは思えない。
それだけダンジョンは広いということだろう。
「それにしても地下に潜ったのに、天井には空が見えるとか、ダンジョン内の仕様というか設定はどうなっているのか……」
5分近く歩いていると息も上がってくる。
その間も、野菜を収穫している氷河期世代の男女が見えてくる。
「最近は、野菜も高騰しているものね。とっても助かるわー。あなた、がんばって!」
「おう! 任せておけ!」
そんな声が周囲から聞こえてくる。
ほのぼのとしたスローライフだ。
まぁ、ぼっちの俺には関係ないが……。
別に羨ましくなんてない!
「はぁー」
やはり先立つモノがないと彼女も満足につくれないんだよな。
そんな闇落ちみたいな気持ちを抱えながらも、俺は8分近く歩いて、きゅうりの生息エリアに到着した。
鉈を取り出して、スイカを倒した時のように、きゅうりに向けて振り下ろす。
もしかしたら、何か起きるかも知れないと期待したからかも知れないが。
――レベルが上がりました。
――野菜を武器で、2番目に連続討伐したため、スキル【アイテムボックスLV1】を獲得しました。
「……またスキルを得てしまった……」
マジで、本当にスキルが手に入るとは思わなかったけど……、本当にスキルが手に入ると少しうれしいものがあるな。
それにしてもアイテムボックスか。
どうやって使うんだ?
「あ、スキルにも鑑定は効くのかな?」
念のために、アイテムボックスにスキル【鑑定】を行う。
アイテムボックス
心の中でアイテムボックスと思うだけで発動する。
視界にはアイテムボックス内に入っているアイテム一覧が表示される。
アイテムボックスLV1で100キロまでのアイテムを収納することが出来る。
生物を入れることは出来ない。
【レベル】3
【HP】H
【MP】H
【STR】H
【DEX】H
【CON】H
【WIS】H
【INT】H
スキル
【鑑定I】、【アイテムボックスI】
相変わらず俺のステータスは低い。
だが、初日の段階でスキル【アイテムボックス】を手に入れることが出来たのは非常に大きいな。