普段の出荷作業
「都築さん」
「これは、木戸営業課長」
「いえ。それよりも、出立はもう少しまってもらってもいいですか? 通常業務がありますので」
「ああ。農作物、穀物、フルーツの出荷作業ですね」
「はい」
「それでは、佐藤さん」
「何でしょうか? 都築さん」
「佐藤さんのダンジョン内部での仕事の仕方を見て見たいと思うのですが、宜しいでしょうか?」
「構いませんよ」
「では、木戸さん。行ってきます」
都築さんと共にゲートを潜ったあとは、ダンジョンの地下1階まで階段で降りる。
そこで気がつく。
都築さんは地下10階まで降りた事がないじゃんと。
まあ、リストに書いてある農作物とフルーツと穀物だが、10階層の小麦と新米から採取すればいいだけの話なので、10階分の階段を都築さんと降りていく。
「かなり深いんですね」
後ろから都築さんが話しかけてくる。
「そうですね」
「これは往復するのは大変なのでは?」
「10階層までクリアしてゲートに登録をすれば地下1階層から10階層までエレベーターが利用できるようになるので、それまでの辛抱です」
「そうだったんですか」
まぁ、俺もダンジョン内にエレベーターがあるとは思わなかったからな。
養老渓谷ダンジョン、地下10階層に到着したあとは、じーと俺の作業を観察するかのように視線を向けてくる都築さんを他所に、アイテムボックスを起動し、自身が立っている周辺の小麦畑から、どこまでを指定するかをアイテムボックスカーソルで選んだあと転移させる。
もちろん転移先は、俺のアイテムボックス内。
それだけで小麦と米を20トンずつ採取した。
「それでは、都築さん」
「――え? あ、はい。鎌か何かで刈りますか?」
「いえ。もうアイテムボックスに転送したので、外に出て小麦と新米を車に積みましょう」
「え? もう、終わったんですか?」
「はい。俺のアイテムボックスは特殊なので」
「そ、そうですか……」
もう地下10階層まで来たので、遠慮なくエレベーターを使い、地下1階まで戻る。
そして、養老渓谷のダンジョンを出たあとは、駐車場に停まっている木戸グループのトラックに転移させて載せていく。
時間としては3分ほどで終わらせる。
「それでは、木戸さん」
「は、はい!」
「引き続き収穫してきます」
俺のあとを付いてきただけではあるが、かなりの段数を降りてきたこともあり、疲れているようだが、若返りが付与されている穀物もフルーツも農作物も、俺は外部には出さない。
そう決めたのだ。
なのでキュウリを含めて若返りの付与がついている食材については、アイテムボックス内で分けて、問題のない商品しかトラックに載せていない。
結局、時間としては4時間近く掛かってしまった。
途中から、へばった都築さんを見かねて彼のペースで行動していたからだが。
「申し訳ない、佐藤さん」
「気にしないでください。最初の内は階段を下るだけで大変ですから」