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海産物デビュー!

 但し、そこには大きな問題がある。

 物流に載せるとした場合、ハマグリとかアサリをどうやってアイテムボックスに入れるのか? と、言う課題だ。

 これは自宅に帰って調べる必要が……、――いや、ここは餅は餅屋ということで、木戸さんに話を通してみるか。

 日本は海産物がアホほど高いからな。

 

「はい。木戸です」

「佐藤です。ちょっと、相談に乗ってもらいたい事があるんですが」

「――そ、相談ですか?」

「はい。ただ、電話ではちょっと……」

「それでは、迎えにいきます。どちらにいらっしゃいますか?」

「実家ですので、お願いできますか?」

「実家とはどこに?」


 電話で実家の場所を伝えてから電話を切る。

 そこで弟がこっちを見てきている事に気がつく。


「兄さん」

「何だ?」

「仕事決まったの?」

「まあな!」

「へー。それと母さんにも、ハマグリとか融通すると嬉しいと思うよ」

「仕方ねーな」


 30個ほど、ハマグリをアイテムボックスから取り出すと深皿に入れて冷蔵庫に入れる。


「早めに食べるように言っておいてくれよ」

「わかった。それにしても電話一本で迎えにくるとか……、兄さん、もしかして冒険者として成功しているのか?」

「少しはな!」


 まぁ、すでに俺の貯金通帳の口座残高は40億円を超えているので、成功しているどころの話ではないが、一々、話す必要もないだろう。


「それよりも、お前もアルバイトじゃなくて冒険者してみたらどうだ? 親と一緒に住んでいるからって正社員じゃないのは微妙だろう?」


 俺は少し前の自分を棚に上げて兄風を吹かせて話すが――、


「兄さんだって、少し前は無職だった癖に……」

「――うっ! それを言われると痛い……。――ま、まあ、迎えにくるから、今日は帰るわ」

「おう!」


 居間でゴロゴロしながらスマートフォンでゲームをしている弟を放置しつつ、俺はペットの小次郎を見て、寝ていると思ったあと実家を出た。

 実家の玄関から出て、しばらく経つと木戸さんの運転する車が細道に入ってくるのが見えた。

 手を上げると向こうも此方を認識したのか近づいてきてから目の前で停車した。


「こんにちは、佐藤さん」

「すいません、木戸さん。何だか迎えに来てもらう形になってしまって」

「いえいえ。それよりも相談というのは?」

 

 なんだか凄く期待しているような瞳で、上目遣いでこちらを見てきている。

 

「新しい商材の話です」

「商材ですか」


 何故か知らないが、しょぼーんとしてしまった木戸綾子さん。

 おかしいな。

 そんなに期待を持たせたような発言をした覚えはないんだが。


「それで、今度、木戸商事に卸したいと思っているのは、これなのですが――」


 俺はアイテムボックスの中から、ボウルに入れたままのハマグリを取り出す。

 それを見た木戸さんが少しずつ生気を取り戻していき――。


「こ、これって! 海産物ですよね? 海があるのは20階層からって聞いていましたが……」

「じつは10階層にも海があったんですよー」

「そうなのですか?」

「これが証拠なので事実です」


 俺が手渡した1キロ程度のハマグリを見て、


「す、すぐに! お父様や重役と会ってほしいのですが!?」

「商売になりそうですか?」

「一度、商品チェックをしないと何とも言えませんが、まずは――」

「分かりました」


 すぐに木戸さんは車を走らせる。

 20分後、木戸商事本社ビル前に到着したところで、木戸さんと共に木戸商事本社ビルの会議室まで案内された。

 会議室内には50代から60代の男たちが4人ほど椅子に座っていた。


「久しぶりと言えばいいのかな?」

「どうも木戸社長」

「こちらこそ、いつも世話になっている。娘は、役に立っているかね?」

「いつも助けてもらっています」

「そうか、そうか。――で! 綾子」

「はい」

「今日は、緊急役員会議を招集と言う事だったが、いきなりの事だったので3人しか集まっていない。それで、議題はなんだ?」

「佐藤さん、お願いします」

「分かった」


 アイテムボックスから、すでに死んでいるハマグリ、ホンビノス貝、アサリが入っているボールを取り出してテーブルの上に置く。


「こ、これは……ダンジョン産の貝か?」

 

 木戸社長が目を大きく見開く。

 そして役員の一人が、「し、社長。これは、一大事件ですぞ! ――で! 佐藤さん、どれだけの貝を毎日、出荷することが可能か?」と、俺に尋ねてきた。


「3時間ほどで1トンほどの収穫なので、多くて数トンですかね」

「十分だ! これは、すばらしいですよ!」


 役員が興奮気味に語る。

 もちろん他の役員たちも、必死に何かを考えていることから、頭の中でそろばんをはじいているのだろう。

 だが、一つ問題がある。

 採取することは出来ても貝類は魔物に分類されるので、きちんと殺さないとアイテムボックスに入らないということだ。

 ここは水魔法の応用で氷が作り出せれば解決なんだが、そこは練習してみて氷が出せるようになってからアサリなどの貝を出荷できるようにしよう。

 魔法の事は伏せて出荷できるようになるまで、数日もらえないか? と伝えたところ二つ返事で契約書の作成が決まった。






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― 新着の感想 ―
役員「十分だ! これは、(奴隷冒険者として)すばらしいですよ!」 どれだけの仕事させてるか理解してんのかな?この無能役員ども、主人公が過労で倒れたら終わりなんだけど? 殺しに来てるよね
仕事が忙しくなるばかりだよね! あと、死んでいても魔物と言うことで大丈夫。 それに、加工すれば良いのだ!
貝は生きてないと売れないんじゃない?
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