ダンジョン10階に海を発見したぞ!
10階層のダンジョンに海があるかどうかを確認するために用意すること3か月。
教習所に通い卒業し、幕張免許センターで、運転免許を再取得したあと、レンタカーを借りた。
そして、借りたレンタカーをアイテムボックスの中に突っ込んで、木戸さんに養老渓谷ダンジョンまで連れて行ってもらった。
「これで全部ですね」
毎日のルーティーンの如く、成果や農作物、穀物、合計100トン程度を木戸商事のトラックに乗せたあと、俺は木戸さんに話しかけた。
「はい。たしかに――」
「佐藤さん、今日、このあと食事とかどうですか?」
「あー、ちょっと知人に頼まれているフルーツがあるので先に帰って下さって大丈夫ですよ?」
「え? 知人って……、女性の方ですか?」
「いえ。男ですが、それが何か?」
「いえいえ。なんでもないです。でも、それだと帰宅用の足が無くなってしまいますよ?」
「たまには電車とバスで帰ります」
「そ……そうですか……」
しょんぼりとする木戸綾子さん。
どうして、そんな態度をとるか分からないが――、
「別に木戸さんを嫌いになったわけではないので」
「はい……」
「そ、そうだ。こ、今度、埋め合わせに食事に行きましょう。奢りますよ? 俺、かなり美味いすっぽん料理店知っているので」
「すっぽん!? ――わ、分かりました。――とっーても期待していますからね!」
何故か知らないが突然、機嫌が良くなった木戸さんの機嫌が悪くならない内に、俺はダンジョンへと向かった。
時間は午後10時前後。
冒険者協会だけでなく、大勢の冒険者が活動している時間なだけあって、俺へと好奇な視線が向けられていた。
まぁ、俺が大容量アイテムボックスを持っていることは既に知られているので、そういう意味で目立って視線を向けられてきているんだが。
養老渓谷ダンジョン地下1階まで階段で降りたあと、エレベーターに乗り小麦と米の稲穂が地平線の彼方まで続く10階層に踏み出す。
しばらく歩き、周囲に誰も人の姿が見えなくなったところで、ウィンチ付きのジープをアイテムボックスから取り出す。
運転席に乗り込みキーを回せばエンジンが始動する音が周囲に木霊する。
どうやら、ダンジョン内で車に乗ることができるようだ。
そりゃダンジョンに入るためには階段を通る必要があるから、車で入ることが出来ないから、今回みたいな俺のアイテムボックスを使ってでのダンジョン内使用は完全に想定の範囲外だろう。
まぁ、俺としてはダンジョン内で車移動が出来るのだから、文句はないけど。
アクセルを踏み込む。
車体は、加速していき稲田と小麦畑の合間のあぜ道を軽やかに走る。
どこまでも変わらない景色。
2時間ほど80キロで走ったところで唐突に小麦畑を抜けた。
そして目の前に見えたのは白い砂浜と、青い巨大な湖。
「これは……」
防波堤のような場所で車を停めてアイテムボックスの中へ入れたあと、砂浜を歩いたあと、湖の前で【鑑定】スキルを使う。
――ダンジョン海
地下10階層ごとに存在する広大な海。
広さは、約43万km²
日本の領海と同じ生態系が構築されている。
――ダンジョン砂浜
アサリを含めた多くの貝が生息している。
「すごいな……」
感嘆しながらも押し寄せては引いていく潮の部分――、砂の部分を軽く掘ると、アサリ、ハマグリが出てくる。
『鑑定』スキルで確認しておく。
――ダンジョン産ハマグリ
日本産ハマグリ。
食べると1時間、若返る。
――ダンジョン産アサリ
日本産のアサリ。
食べると1時間、若返る。
「これは、色々と海産物が捗るかも知れない。だが、今は第三者には伝えない方がいいな。アサリもハマグリも鑑定を使った感じでは、若返りの効果がついているし」
アイテムボックスから鉈を取り出し、ハマグリとアサリ、それぞれに振り下ろす。
途端にレベルが上がる。
しかも2つも。
スキルは一つ、ステータスが一つ上がる。
新しいスキルの取得はなかったようだ。
【名前】佐藤和也
【レベル】36
【HP】B
【MP】C
【STR】D
【DEX】D
【CON】D
【WIS】E
【INT】D
スキル
【鑑定Ⅸ】【アイテムボックスⅨ】【経験値上昇Ⅵ】【ステータス補正Ⅷ】【魔法防御力Ⅶ】【体力補正Ⅷ】【魔力補正Ⅷ】【回復補正Ⅸ】【視力補正Ⅵ】【攻撃力補正Ⅶ】【魔法攻撃力補正Ⅶ】
アイテムボックスの容量と、魔力補正が上がっている。
アイテムボックス【アイテムボックスⅨ】を鑑定。
【アイテムボックスⅨ】
51200キロまで収納することが出来る。
これで51トンまで採取できるようになったのか。
しばらくは海近くでレベルアップに励むとしよう。