ボスの階層には海があるらしい。
菊池さんに稲穂付きの新米を卸したあと、自宅に戻り日本ダンジョン冒険者協会のホームページを確認する事にする。
一か月ほど、ダンジョン情報から離れていたので、ダンジョン関係の世俗に疎くなっていたので、時間が空いた昼間は情報収集としては丁度いいと思ったからだ。
「やっぱり、俺がアイテムボックスを使ってスーパーなどにダンジョン産の農作物や果物を卸している間に更新が随分とされているな……」
マウスを動かしながら、一か月の間に更新された情報を見ていく。
すると11階層以下はモンスターが出現するようになるが、モンスターからのドロップとして、魔鉱石だけでなく、低確率でポーションや使い捨ての魔法が使えるスクロールをドロップするらしい。
「魔法が使えるスクロールか」
そんなスクロールは、ダンジョン産地直売場では取り扱っていなかったな。
だが、魔法は中二病を満たすための魔法のアイテムでもある。
俺だって、そういう時代はあったからな。
傘を逆手に持って主人公の必殺技を叫んで遊んでいた時代とか……黒歴史だな。
でも、それが現実として出来たらどうだろうか?
年甲斐にもなく、わくわくするな。
「スクロールには種類があるのか」
攻撃用スクロール。
防御用スクロール。
補助系スクロール。
移動系スクロール。
精霊系スクロール。
ちなみにスクロールというのは呪文書という意味らしい。
判明しているのは5種類。
移動系スクロールは、ダンジョン内の階層を自由に移動できるらしい。
ただし、階段周辺のセーフティエリアのみという限定らしい。
補助系は、ステータスの一段底上げの性能。
攻撃系は、物理・魔法攻撃力上昇。
防御系は、攻撃系と同じ強化比率で肉体が強化されるようだ。
補助系は、罠設置などらしいが、ドロップ率が非常に低いため、まったく全容は分かっていないらしい。
「自衛隊とかの公務員がダンジョンを確認していた時は危険性の有無を確認していただけで、探索中心ではなかったってことか」
まぁ、確かにゲームでもベーター時期に、企業のアルバイトが狩場での調整を含めてたバグを確認する事と、実際にユーザーが狩場で効率とDROP状況を調査し考察する内容はまったくの別物だからな。
ダンジョン関係に関しては、これから調査が進むってことか。
「11階層からは1階層ごとに出るモンスターが決まっていて――」
そこまで読んでいたところで、20階層の部分で手を止めた。
「20階と30階には海があるのか……。そういえば、10階にも海があるのか? 見渡す限り田畑しか見た事がないが……。地平線の彼方まで田畑が見えているだけで海があるとは限らないけど、もしかしたら……」
そこまで考えたところで、ハッ! とする。
「ダンジョンは、未だに未踏破領域。つまり10階にも海があった場合……。10階層事(毎)に海があるかも知れないという法則が適用される場合、もしかしたら……。よし! 車の免許を再取得しにいくか」
どうせ、やることなんて果物と農作物と穀物を木戸商事に提供するだけなんだし、何か変わったことをするのもいいかもしれない。
問題は、徒歩だとダンジョン内の地平線の先まで移動できないことだが……、バイクとか車なら……。
ハッ! そうだ! 良いことを思いついた。
「アイテムボックスに車をぶちこんでいけば問題ないな」
よくよく考えて見れば車両の重量は1トンから2トン。
そんな重量をアイテムボックスに入れられる冒険者は少ないだろう。
ダンジョンの入り口は、軽トラックが2台並んで入れるくらいだが、階段なので車の乗り入れはできない。
そのことがあったので、今までダンジョン内の移動は徒歩オンリーだと先入観があった。
一度、試してみよう。