モンスター肉が黒毛和牛より高くて美味しいらしい
まぁ、俺には関係ないけどな。
ダンジョン攻略をする気とか一切ないし。
「それでは帰りますか? 佐藤さん」
「そうですね」
木戸さんに養老渓谷から送ってもらっている間に、産地直送販売所に珍しい旗が立っていることに気がつく。
車が信号で停まったので丁度いい。
「木戸さん」
「はい」
「ダンジョン肉ってノボリが見えますけど、何か知っていますか?」
「ダンジョン肉ですか」
あれ? あまり反応がよくない?
「何かあったんですか? ダンジョン肉で」
「何かあったというか……。高いんですよ、価格が」
「そうなんですか?」
「味はいいんですけどね。ちょっと一般に流通させるのは大変かなと思う感じなのです」
「そうなんですね」
野菜と果物と穀物の取引だけで、ここ一か月は普通に暮らしていけていたので、日本ダンジョン冒険者協会のホームページを見るのを完全に失念していた。
たしかに農作物が収穫できるのなら、畜産物も収穫できるのは自明の理だろう。
肉が高いのは一般的なアイテムボックス持ちは100キロから200キロ。
運ぶ際のコストが高いというのは少し考えれば分かる。
「味がいいですか……。木戸さん」
「分かりました」
信号が青になったあと、木戸さんは車をUターンさせると養老渓谷ダンジョン直売所に車を停めた。
時間的には遅い時間帯ではあるが、道の駅も兼ねているようで24時間営業しているようだ。
「結構、色々と売っているんですね」
「私も直売所に来るのは初めてですので、見た事がないものが一杯ありますね」
直売所は、精肉・青果・フルーツだけでなく普通に暮らしていたら実用性のあまりない武器や防具、瓶に入ったポーションというものまで売っていた。
「これがポーションか」
実験で使うような試験管の中に、様々な液体が入っている。
赤色、オレンジ色、白色、紫色、青色、紺色と色のバリエーションが、とっても豊富だ。
「これは効能によって分かっているってことか」
ポーションの種類は、回復ポーションと瞬間的な身体強化上昇ポーション、攻撃威力上昇ポーションに別れていた。
一番安いポーションは赤色だったが30万円していた。
「高ッ」
思わず商品を見て鑑定してしまう。
30万円もする価値があるのか見たくなるのは人間としての性みたいなモノだ。
【レッドポーション】
最大値の10%の体力を回復させることが出来る。
怪我も、応じて修復される。
部位の修復は不可能。
病を治療することは出来ない。
性能と価格が釣り合っているのかいないのか良く分からないな。
「佐藤さん、どうかしましたか?」
「いえ。それよりもダンジョン肉を買っていきましょう。俺、奢りますので!」
精肉を取り扱っているコーナーに行くと、市販の肉と代わりないように見える。
鑑定をする。
ゴブリン、オーク、巨大ネズミ、ウサギなどの肉が並んでいた。
はっきり言って、鑑定するまでは、とっても買う気だったが今は普通の肉でいいやと思い、何も買わずに直売所を出た。
それにしてもモンスターの100グラムの肉の価格が最低1000円からとか普通に手が出ないし出したくないな。




