ピンチ! 俺のスキルがバレた!?
「この前ぶりね。佐藤君」
「あ、どうも――」
以前に取引をしていた菊池さんに頭を下げる。
「こんにちは、佐藤さん」
「どうも、こんにちは。今日、どうして菊池さんのお二人が――」
俺は、どうして菊池さんの母と娘が、この場にいるのか理解できずに母親の方を見ると、茶菓子を入れたお皿を手にしてテーブルに座った母さんが口を開いた。
「何って、そりゃお見合いに決まっているでしょ? もしかして高級ホテルのラウンジでも借りるとでも思った? ああいうのは、テレビドラマだけよ? 大半は、知り合い同士の見合いの場は、こうした普通の何気ないさりげない場所で行われるものなのよ?」
母さんが俺の疑問に対して捲し立てるようにして言葉を羅列した。
そして、その中に俺は聞き捨てならない単語を聞いたような気がした。
「なあ、母さん」
「何よ?」
「俺の耳が悪くなければ、見合いという言葉が聞こえた気がするんだが……」
「合っているわよ?」
俺を見て不思議そうな表情をする母さん。
「まったく、うちの息子が――、ご迷惑をかけるわね。菊池さん」
「いえ。ですけれど、もしかして息子さんにはお見合いの話は――」
「してないわね。お見合いとか言うと来ないと思ったから」
「いや、言えよ! そこは重要なところだろ」
思わずツッコミを入れてしまった。
それにしても見合いをセッティングするとか――。
「なあ、母さん」
「何?」
「母さんは、俺の年齢を知っているよな?」
「知っているわよ? 44歳? ううん? 45歳だった?」
「45だ!」
まさかの親が自分の子供の年齢を覚えていないパターン。
相変わらずテキトーだな。
「あの菊池さん」
俺は、菊池娘ではなく母親の方を見て話しかけることにした。
「俺は、今年で45歳になりました。失礼ですが、娘さんの年齢は――」
「23歳です!」
菊池母親ではなく娘さんの方が食い気味に答えてきた。
「そ、そうですか……。よく聞いてください。俺の年齢と、菊池さんの年齢は22歳も離れています。そうなりますと価値観の違いというのがあります」
「そこは大丈夫だと思うわよ? ね?」
どうして菊池母は、大丈夫だと俺に同意を向けてくるのか。
「だって、ダンジョン産の食糧には若返りの効果がある食物があるのでしょう? 実際に売りに出されているし」
「……ソウデスネ」
「じつはね、失礼かと思ったのだけれど、以前に佐藤さんに提供してもらった果物を知り合いの鑑定スキルを持っている人に見てもらったことがあるのよね」
「……」
「そうすると、全ての果物に若返りの付与がされていたの」
「そ、そうですか……。それは珍しいことでもアッタモノデスネー」
「ええ。本当に! 鑑定スキルを持っている人に聞いた話だとね、鑑定スキル持ちでも見つけることが大変らしいの。見つけられるのは、1時間に一個見つかれば良いほうらしいの。なのに100個近く貰った果物は全てに! 若返りの付与がされていたの。とっても不思議だとは思わない?」
「フシギデスネー」
「それで、私思ったの。もしかして佐藤君って、アイテムボックスのスキルも規格外だけど、さらに鑑定スキルも規格外なんじゃないかなって」
「なるほどー」
さて、どう取り繕うか。
俺の予想が正しければ、俺のスキルが有用だからと判断したからこそ、菊池さんは俺を取り込もうと、娘をお見合いの場に連れてきたのだろう。
何せ22歳も歳の離れた男とのお見合いだ。
俺が逆の立場だったら普通にお断りメールをするところだ。




