運営(神様)は容赦がない。
「いや、下取りをお願いするかどうかは冒険者と日本ダンジョン冒険者協会の間に合意があった場合だろ? 強制でもないのに、助け合いの精神とか意味が分からないな」
俺は肩を竦めながら答える。
「そもそも、助け合いなら30年以上、氷河期世代を日本政府は放置しておいて、未だに助け合い云々言われても困るんだが? 本当に助け合い云々言うのなら、神々がダンジョンを設置する前に、雇用制度や最低時給、年齢による人員整理、派遣法改悪などやったらいけない政策が腐るほどあっただろ? そういう自分達の仕事をしてないことを棚に上げて今更、他人との助け合いとか普通に笑ってしまうんだが?」
「――な、なんだと……」
「それから、あまり既得権益を前面に押し出すと農林水産省の官僚や農林水産大臣みたく神々に首チョンパされることになるぞ? それでも、いいなら大々的に叩けばいい」
「――ッ」
俺の言葉に顔を真っ青にする日本ダンジョン冒険者協会の社員たち。
国会議事堂で予算会議中に、日本に発生したダンジョンについて国が関与しようとしたら、関与しようとした農林水産大臣と、事務次官の首が物理的に落ちて議事堂内を真っ赤に染め上げたことを思い出したのだろうか。
「お前たち、いくぞ! 覚えておけよ!」
去り際までも、小者のような発言をして去っていく神山という責任者。
ほんと、最後まで三下のような奴だったな。
そもそも、よくよく考えれば冒険者協会とか神々の下請みたいな立場なのに、あんなことしたらまずいだろ。
「すぐに編集して、そのまま動画をアップしてください」
「分かりました。木戸お嬢様」
そして、俺の背後では今の動画を木戸さんはネットにアップするようだ。
「あの木戸さん、俺の名前と顔は伏せておいてくださいね」
「もちろんです。個人情報は大切ですからね」
ニコリと微笑む木戸さんに、俺は、「はい……」と、答えたあとダンジョンへと向かった。
農作物、フルーツ、穀物関係を全てのトラックに積んだのは深夜1時を超えていた。
次から次へと10トントラックだけでなく小さなトラックまで来るものだから何台のトラックを用意したのかと心配になるくらいだった。
最後は、菊池さんに納品する予定の稲穂付きの新米をアイテムボックスに20トン、若返りの付与がついているきゅうりだけを選別してアイテムボックスに入れたあと、木戸さんの車で自宅まで送ってもらった。
朝になり、ネットニュースを見ていたところ、日本ダンジョン冒険者協会の大半の支店長がJAと結託してアイテムボックス持ちの冒険者に圧力をかけている事実が判明したとニュースで流れていた。
日本ダンジョン冒険者協会の支店長と、其の取り巻きはJA関係者で固められた縁故採用であり農林水産省も関わっていたと。
「たくさん、逮捕者が出そうだな」
そんな事を思って、日本最大のニュースサイトを見ると、日本ダンジョン冒険者協会の不正を――、冒険者に圧力をかけている動画が配信されたとニュースになっていた。
それは明らかに俺と神山が会話している内容だった。
目の部分には黒い線が入っていたが、見る人が見れば誰か分かる感じだった。
「これは、日本ダンジョン冒険者協会から目をつけられそうだな」
そう思い日本ダンジョン冒険者協会のホームページを見れば100人近い人員編成が行われましたとお知らせで書かれていた。
冒険者の掲示板を見て見れば日本ダンジョン冒険者協会の事務所で、首が落ちる事件が150件ほどあったそうだ。
「神様たちも容赦がないな……。まぁ、自分達の生存が関わっているから、早めに対処するんだろうな……」