ダンジョンへ行こう
一か月後、大きめのリュックサックを用意したあと、居住している近くの駅へ。
千葉駅から総武線外房線の五井駅まで直通の列車に乗る。
30分後に五井駅に到着したあと、千葉の秘境と言われる養老渓谷へと繋がる鉄道――、小湊いすみ鉄道に乗り換える。
上総亀山駅で降りたところで周囲を見渡す。
「ネットで見た駅の光景と違う……」
上総亀山駅で降りたところで事前に勉強していた光景とはまったく違っていた。
無人駅とネットで書かれていたが、絶賛大規模改築中で、様々な大型建築機械が動員されて工事が行われていた。
さらに、駅前はシャッターが下りた店舗しかなかったはずだが、改装工事がされたのがやたらと綺麗にリフォームされた3階建てのビルが建っていた。
そしてビルには、日本ダンジョン冒険者協会千葉支店と書かれている。
「はー、さすがに日本政府がマジになると一瞬で駅も建物にも手が入るんだな……」
そりゃ新しいクリーンなエネルギーの魔石がダンジョンから出るのだから、今後の日本経済を考えると国が資金を投入するのは理に叶っている。
「さて――」
日本ダンジョン冒険者協会のある建物――ビルの隣――、道路を挟んだ向かい側には、飲食店が5店舗ほど並んでいる。
それら全ての店舗が新しい建造物。
「蕎麦屋に、ラーメン屋に、天丼屋にうどん屋に焼き肉屋か」
帰りに食事をして帰るのはありかもな。
値段も500円前後と、冒険者登録証を呈示すれば安く食べられるようだし。
それにしても小湊いすみ鉄道に乗ってきたが、ギュウギュウ詰めの山手線の早朝ラッシュレベルの込み具合だった。
思っていたよりも多くの氷河期世代の人たちが、世界中で唯一、出現した日本のダンジョンに入るようだ。
そりゃ一都道府県に一つしか出現していないのだから、仕方ないのかもしれない。
「あとは、養老渓谷のダンジョンに向かう直通のバスがあったはずだが……」
駅前には、すでに300人近い人たちがたむろって誰もが周囲を見渡している事から、俺と同じように情報を得てきた人たちらしい。
そして、9割が男性。
残り1割が女性と言ったところで、年齢は40代から50代前後と結構、年齢幅が広い。
つまり若い世代はいないということだ。
しばらく周囲を散策していると消防団近くにバスターミナルがあることに気がつく。
バスターミナルには大型のバスが10台近く止まっており――、
「日本ダンジョン冒険者協会が発行している冒険者カードを所持している方は提示してくだされば、バスに無料で乗れます!」
近づけば拡声器を片手に説明している日本ダンジョン冒険者協会の人がいた。
「あの、このバスに乗れば養老渓谷のダンジョンに行けるんですか?」
「はい。バスへ御搭乗される際に、冒険者カードを提示してください」
「分かりました」
バスへと近づけば運転手と思わしき人が、冒険者カードをチェックしていたので、見せると手荷物を、バスの格納スペースへ入れるように指示された。
渡されたタグに名前を書いたあと、リュックサックに括り付ける。
そしてバスの格納スペースに入れたあと、バスへと乗り込む。
10分ほどするとバスは走り出した。