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23/122

社長令嬢が取引担当窓口になった。

「はははっ」


 とりあえず俺は答えることなく反笑いで返す。

 最近、答えに困ることが多いな。

 半分笑って流すことが増えてきた。


「それでは自分は出荷用のフルーツと農作物をとってきます」

「分かりました。農作物やフルーツが取れるエリアでは魔物は出てこないと聞いてますけど、お気をつけて」

「はい」


 木戸さんに激励をもらって、ダンジョンへと戻る。

 結局、アイテムボックスの容量が25トンを超えて20トンは一度の往復で持って帰ることが出来たので、日付が変わるギリギリで出荷が間にあった。


「ふう――」


 最後のトラックが出ていくのを見送ったあと、ベンチに座ったところでアイテムボックスからキュウリと味噌を取り出す。

 昨日、気がついたことだが、キュウリを食べると疲れが吹き飛ぶのだ。

 まぁ、体の疲れがなくなるだけで精神的な疲れは代わらないけど。

 

「それって、美味しいですか?」

「え?」


 横を見ると木戸綾子さんが興味津々と言った様子で俺を見てきていた。


「あー、そうですね。食べます?」

「いいんですか?」

「まぁダンジョン産のキュウリですから。いくらでも取ってこられますからね」

「そうなのですね。いただきます」


 生のまま木戸さんはキュウリを齧ると目を輝かせて「とても美味しいですね!」と、俺に詰め寄ってきた。


「そうですね」


 まぁ、寿命が1時間若返るキュウリなのだから、もしかしたら味も少し違うかもしれないが。


「きゅうりも販売ルートに乗せたいですね。これだけ美味しいんですもの」

「それは既存の農家さん潰しになってしまうので、木戸商事の方はされないと思いますよ」

「そうですね。そういえば、今日、佐藤さんはどうやって帰るのですか?」

「シャトルバスが、まだ出ていますから」


 俺が答えると、木戸さんがニコリと笑みを向けてくると、


「それなら私が車で送っていきましょうか? 私の自宅住所と佐藤さんのご自宅は近いですから」

「本当ですか?」


 シャトルバスと電車を乗り継いで千葉駅から移動するのも、それなりに時間もかかるし手間だったので、渡りに船と言う事もあり俺はお願いした。

 養老渓谷から俺の自宅までは2時間近くかかるので、ダンジョンで疲れた俺は途中まで頑張って起きて木戸さんからの質問に受け答えしていたが気がつけば寝ていた。

 起こされたのは自宅前で、何度か「佐藤さん」と名前を呼ばれて気がついた。


「どうもすいません。運転をしている隣で寝るなんて――」


 相手は取引先の社長のご息女であり、今では俺の取引窓口担当。

 そんな相手に迷惑をかけてしまうとは。


「いえ、お気になさらないでください。両親や幹部会のメンバーもダンジョンから産出されている青果やフルーツは、大きなコンテンツになると動いておりますので」

「それならよかったです。それでは、また明日」

「はい。また明日」


 軽く別れの挨拶をしたあと、俺は助手席から降りて自宅への帰路についた。




 佐藤和也を自宅前まで送り車を走らせ始めた木戸綾子は、

「あれが、お父様の仰っていた殿方ですか……。とっても普通の方に見えますけど、明らかにアイテムボックスの容量が、現在、スキル【アイテムボックス】を所有している人よりも遥かに大きいですね。ふふっ、とっても興味を抱く殿方ですわ! 明日はデートにでも誘ってみようかしら?」


 ――と、笑みを浮かべていた。


 



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― 新着の感想 ―
要領の大きなアイテムボックス持ちは、魅力ですもんねぇ!
恋愛要素いらんぞマジで。そういうのが見たいならおっさんが主人公の作品は読まない
人を疑ってたのは最初だけで全然疑わなくなったし 勉強が出来たから頭が云々の部分が全く感じられない ような、ただの肉体労働しかしてないのでは??
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