アイテムボックスがチート性能だった件について
「それにしても綾小路さんからは一言もなかったので担当が変わるのは驚きました」
「私もです!」
君もか――。
まぁ、秘書ってことくらいだったから、一時的に俺の担当についていたというのは、ある程度は推測できていたが、事前に報告くらいは欲しかったな。
「ですが、事前に佐藤様にはメールをしておいたと」
「へ?」
ささっとメールをチェックする。
すると担当が一時的に対応をしていた秘書の綾小路さんから、木戸商事の社長の娘へと引き継がれることが書かれていた。
疲れていてチェックするのを怠っていた。
完全に俺のミスとは言わないが、何となく微妙なミスであった。
「みたいですね」
「すいません。父が唐突に、今後は佐藤さんとの取引は重要になるからと」
それで娘を送ってきたと。
つまり親族を担当窓口にすることで、無理を通そうとか考えていないよな?
今の状況ですらかなり無理な状態だけどな。
「分かりました。それでは、さっそく、このメールに書かれているフルーツと農作物を収穫してきますので、待っていてください」
「え? もういいのですか?」
「時間は有限ですから」
それとアイテムボックスのレベルも上げたい。
出来れば一度の収穫で終わらせることが出来るくらいアイテムボックスの容量を増やしたい。
何十往復もするのは疲れるのだ。
肉体的にも、主に精神的にも。
木戸さんと挨拶を交わしたあと、すぐにダンジョンに入りフルーツを20トン収穫し、駐車場に戻る。
「今、戻りました。収穫してきたフルーツを出しますので、籠の用意をしてもらってもいいですか?」
俺は車の助手席をコンコンとノックしたあと、木戸さんに話しかけた。
すぐに彼女は気がついてトラックから降りてくると同行させていたアルバイトへ指示を出して、折りたたんでいた籠の組み立て作業を開始した。
俺は籠が組み立て終わるたびにアイテムボックスを操作し収穫してきたフルーツを籠の中へと転移させていく。
10人のアルバイトと共に30分ほどで作業が終わったところで、今度はトラックの運転手とアルバイトが車の荷台にフルーツが入った籠を乗せる作業を開始したところで、俺はふと思いついたことを、
「木戸さん、ちょっと試したいことがあるんですがいいですか?」
「――え? あ、はい。いいですけど……」
俺はアイテムボックスのコンソールパネルを操作して籠に入っているフルーツごとアイテムボックス内に転送し取り込んだあと、次にトラックの荷台に籠の入ったフルーツごと転移させて移動させた。
「おお、できた」
「すごいです! これって、アイテムボックスの応用ですか? 佐藤さん」
「そんな感じですね」
「――と、なると……」
俺は折りたたんでいる籠をアイテムボックスの中に収納する。
そしてダンジョン内で収穫してきたフルーツをアイテムボックス内で、折りたたんである籠と合成する。
すると籠に入ったフルーツが爆誕する。
それをトラックの荷台に転移。
一瞬で積み込みが終わった。
「これは……、チートかも知れない」
「すごいです! 佐藤さん! これなら人件費が削減できます!」
まぁ10人のアルバイトでも一日雇用するだけで10万円かかるからな。
それが無くなるのであれば、大きなプラスだろう。
年間にすると3000万円ほど違うわけだし。
しかし、俺のアイテムボックス……、まじですげーな。
ほかの人もアイテムボックスをもっているわけだし、こりゃ物流業界に革命がおきる。
何せフォークリフトいらないじゃん。




