仕事は増えるよ、どこまでも
「ぜいぜいぜい」
肩で呼吸しながら最後の品を納品し、納品したフルーツはトラックで運ばれていった。
「大丈夫ですか? 佐藤さん」
「問題ないです。ただ、この年になると階段の往復がきつくて――」
さらにもっと言えば殆ど寝ていないことだ。
「そうですか。それでは、本日の午後に必要な果物のリストをメールで送りますのでよろしくお願いします」
「分かりました。すいません、午前9時を過ぎてしまって」
「気にしないでください。納品日を早めにお願いしたのは此方側からですので」
「そうですか」
「もし良ければ、深夜の時間帯からトラックを寄越しておいてくれればフルーツと野菜は入れておきますので。それと籠は畳まずにそのままでお願いします」
畳まれているとアイテムボックスから指定してアイテムを入れることは出来ないので効率を考えてお願いした。
「はい。それでは、また後程」
乗用車に乗り、去っていく綾小路さんの後ろを見送ったあと、宿を取ろうとしたが一泊2万円というヤバい価格だった。
そう社会的どころか経済的に死んでしまうラインだったので、稲穂付きの米を7トンほど採取したあと、バスと電車で自宅に戻った。
自宅に戻ったあとは、疲れていたこともありスーパーで購入してきた格安の300円ほどの弁当を食べたあと布団に入ると電話がかかってきた。
「はい。佐藤ですが……」
「菊池です。昨日、佐藤さんから受け取った稲穂付きの米ですが、かなり品質がよかったです」
「そうですか」
「そこで新しく稲穂付きの米を早めに頂くことは難しいでしょうか?」
「いえ。丁度、7トンほど持ってきていますので、自宅まで来て頂ければお渡します」
「すぐに伺います!」
すぐに通話が切れてお昼が過ぎた頃に菊池さんから電話がかかってきたのでアパートから出ると、少し離れた通りに10トントラックが停まっていた。
「どうも」
「すいません。昨日の今日で」
「いえ」
「あ、とりあえず、こちらは昨日、渡された稲穂の新米になります」
渡されたのはビニールの袋。
中には白米が入っている。
「量は10キロです。その方が、お一人では消費するのに丁度いいかと思いまして」
「そうですね」
新米を受け取ったあとは、7トンの稲穂付きの新米を菊池さんに渡し、俺は白米を抱えたあと自宅へと戻った。
「とりあえず疲れた。さっさと寝よう」
明日も朝早いのだ。体調管理も仕事の内だからな。
そう自分に言い聞かせて風呂に入ったあと泥のように布団の中で眠りについた。
午後8時まで寝たところで起床。
財布の中を見れば8000円。
ハローワークからの失業保険給付日が明日なので、何とかダンジョンにいってもギリギリ予算は間に合いそうだ。
やっぱり、タクシーを夜に利用した財布へのダメージは絶大のようだ。
食事はダンジョン内の野菜でも食べていこう。
千葉駅から五井経由で養老渓谷近くまで列車で迎い、そこから日本ダンジョン冒険者協会のバスで揺られること30分。
ようやく道の駅が見えてきた。
時刻は23時という事で、まだ人通りがある中、俺は既に木戸商事が手配したトラックが駐車場に20台近く止まっているのを見て足を止めた。
あれ? トラックの数増えてないか? と。