こってり系ラーメン
まぁ、とりあえず魔鉱石の件については、後日、報告すればいいか。
しかしダンジョンに関してはどうしたものか。
ミツハは二人で行けるからとテンションが高いし。
「ミツハ」
「はい!」
「今日は、ダンジョンではなくて少し都市部にいかないか?」
「都市部ですか……。そういえば、都市部に足を運ぶのは400年ぶりですね」
「400年……。――ってことは江戸時代か」
ミツハと会話をしていると、歴史は連続的に繋がっているんだなというのが良く分かる。
「家康というのが幅を利かせていましたね! 治水工事で、色々と寄進してきました!」
「そ、そうか……」
家のドアを施錠した後、アイテムボックスから車を取り出す。
そしてエンジンをかけた上で、一番近くの高速道路へ向けて車を運転する。
数時間かけて到着したのは秋葉原。
駐車場に車を停めたあと、俺とミツハは秋葉原の歩行者天国に辿り着く。
「そうか、今日は日曜日だったのか」
会社員として働いてなかったので、曜日感覚が完全に狂っていた。
そういえば、高速道路とか空いていたもんな。
そこで気がつくべきだった。
まぁ、ミツハの容姿はとても目立つので、秋葉原なら少しは誤魔化しが効くかな? と、思い、電気街にきたわけだが……。
ミツハが歩行者天国に姿を見せた途端、完全に歩行者天国の動きが止まった。
「――巫女さん?」
「すっげえ美人」
「髪とか染めてんのか? 透き通るような青なんだが……」
「はぁはぁ……、女神たん……、はぁはぁ……」
次々とへんな声が聞こえてくる。
周りにメイド服を着た女性がたくさんいるというのに、そんなのは眼中にないほど注視されている。
「これは、いけないな。ミツハ、こっちに」
「――え? あ、はい」
ミツハの腕を掴んで近くのラーメン屋に入る。
数時間、運転をしてきたので丁度いいと思って入ったのだが、そこはこってり系のラーメン屋。
「旦那様、ここは?」
「こってり系ラーメン店だ」
「こってり系ですか……。このような商いをしている店は初めて入りましたが……。美味しいのですか?」
「好き嫌いが分かれるって感じか?」
実際、鶏ベースのこってり系の好みは大きく分かれる。
俺が昔、東池袋支店で働いていた若い時は良く行っていたが、あの時は美味しかった。
「食べてみるか?」
「はい! 新しい食を探求するのもありかと思います」
席に座りタブレットで注文する。
「昔は、タブレットなんてなかったなー。それにしても価格がエグイことになってるな」
昔は1000円でラーメンと餃子とチャーハンが食べられたというのに。
「良いインフレというのがあるらしいですよ? 旦那様」
「テレビで覚えたのか?」
「はい!」
ミツハも俺と同じ料理を注文したあと、しばらく待っていると店員が料理を運んできた。
「すごいです! スープがドロドロです!」
「これが好き嫌いの分かれるポイントだな」
それにしても餃子が20年前と比べて二回りくらい小さくなっているんだが……。
これが最近は話題の女性に配慮しました! という餃子か……。
「やっぱり冷凍食品のラーメンとは違うな……」
辛味噌を入れると味が引き締まり、20年前に食べた味を思い出す。
ただし餃子が小さくなっていることは許さん!
「――なるほど。これが、こってりというラーメンですか。勉強になります」
ミツハが料理人みたいなことを言って、どういう料理工程を経てラーメンを作っているのかということを口にしている。
食事をしたあと、支払いを済ませて店の外へと出ると俺達を追いかけてきていた変態達は姿を消していた。
まぁ、珍しいとか美人過ぎるというだけで1時間近く店の外で待っているほど暇人は秋葉原に来てないだろうからな。




