スキル【ワープ】の弊害
「メディアに……、どう扱われるか? を、理解しているか……だと? いま、この部屋で会話した内容を、メディアに流すつもりか?」
俺の問いに黙っている笹口という老人。
この後に及んで、国とか人の為とか言い出して懐柔できないと思いきや脅してくるとは。
ビジネスの場でもっともしてはいけない事をする。
何度か公務員とビジネスの場で会話をしたことがあるが、大半の公務員は学生上がりだったのでビジネスを舐めている。
何故なら、そのバックには国という巨大な組織があるからだ。
自分達は絶対なる強者で、国民は言う事を聞くのが当たり前という公務員病を疾患している。
だからこそビジネスの場で誠心誠意に対応しないといけない場において脅しという最悪な手段を取ることができる。
本当に愚かとしか言いようがない。
はあー、アホくせえ。
こんなバカに時間を取られていたとは。
「好きにしろ」
俺は対価も払うつもりのない奴らとは交渉するつもりは一切ない。
何より国を捨てる捨てない以前に、氷河期世代を先に捨てたのは国の方だ。
自分達から捨てておいて今さら国に奉仕しろとか……ふざけるのも大概にしろ! って、話だ。
部屋から出て日本ダンジョン冒険者協会の建物から出た俺を追いかけてくるような足音が聞こえたが、俺はゲートを潜ってダンジョンに足を踏み入れる。
追いかけてきていた足音は、そこで途絶える。
何せ日本ダンジョン冒険者協会で働いている連中の大半は氷河期世代ではないからダンジョンには入れないからだ。
地下1階層まで階段で降りると、そこは地下11階層と同じ光景が広がっていた。
「なるほど。洞窟も、そしてゾンビも同じか」
ただし、一つ違うのは地下1階層からゾンビが出るようになったからなのか。冒険者がゾンビを相手に戦っている音があちらこちらから聞こえたくらいだ。
「さて、とりあえず自宅に戻るのもいいが……」
俺のスキル【ワープ】がキチンと使えるのかどうか確認しないとな。
養老渓谷ダンジョンの地下18階層まで攻略はしていたから、未だと地下8階層になるのか?
なら地下8階層を意識してスキル【ワープ】で移動して本当に18階層が地下8階層に移動になったのか確認しておくか。
誰も近くにいないことを鑑定スキルとアイテムボックスの範囲スキルで確認したあと、スキル【ワープ】を使い養老渓谷のダンジョンである地下8階層に移動する。
「たしか、この階層は熊が……」
スキル【ワープ】を使い移動した先には広大な畑があった。
「え? どういうことだ?」
見渡す限りスイカやレモン、メロン、きゅうりと言った畑が、そんな光景がどこまでも続いている。
階段を下がると、小麦畑が、どこまでも続いていて、さらに階段を降りると見渡す限りの稲穂が……。
「――で、もう一つ階段を降りると……」
階段を降りる。
するとゾンビと冒険者が戦っている音が聞こえてくる。
またワープを使う。
今度は地下10階層を意識して。
到着した場所は、やはり見渡すばかりの稲穂の生る田園風景。
「どうなっているんだ……これは……」
階段で降りる分には、きちんと1階層からゾンビの階層なのに……。
念のため、地下1階層にスキル【ワープ】で移動すると、トマトや白菜、キャベツやきゅうりの畑があった。




