ダンジョン地下16階層
――千葉県の田舎にある養老渓谷ダンジョン地下16階。
「ここって、姉君と出会った場所だよな? どうして地下11階層から地下16階層に?」
「俺が覚えた【ワープ】って言う新しいスキルのおかげだな」
「もしかして、空中が、さっき裂けたけど、それか? 兄貴」
「そうだな」
「すげー! これって、どこと繋がれるんだ?」
「自宅からも直接来れる」
「なら自宅から直接ダンジョンに来た方がよくね?」
弟の浩二が、車で養老渓谷のダンジョン入り口まで来てゲートを通りダンジョンを降りてくるのは無駄では? と、ツッコミを入れてくる。
「いや、それをするとゲートの利用履歴から、俺が変な行動をしているのがバレるだろ? そうなると、面倒ごとに巻き込まれるかも知れない」
「もう今更じゃねーの?」
「…………と、とにかくだ! 俺が珍しいスキルを持っていることが広まったら面倒ごとに巻き込まれるかも知れないだろ? だったら、ギリギリまで隠しておいたほうがいい」
「まぁ、兄貴がそう思うなら勝手だけど……。既に姉君が居るんだから、神様を伴侶にしている事実の前では、大概のスキルは霞むと思うけど」
浩二が何か言っているがスルーする事にした。
「そう言えば兄貴」
「何だ?」
「俺、思ったんだけどさ……、この【ワープ】スキル使えば、イワナとかヤマメとか川魚を生きたまま地上に持って帰れるのでは?」
「浩二! お前、天才か?」
ウナギとかいたら、日本産のウナギの価格を下げることができるな!
これは夢が広がる。
だが、その前に一つ問題がある。
それは石油枯渇問題。
「でも、その前に物流が死ぬから、どうにもならないよな……」
「それな」
「うむ」
欧州の石油備蓄量は、あと一か月で尽きることが確定している。
だが日本の場合は欧州各国の備蓄量の6倍はあるので、あと10か月は持つ。
その間に、ダンジョンを攻略していき石油を確保しないといけない。
そうしないと、儲けとかそういうレベルの話ではなくなってしまう。
「まぁ、とりあえず地下17階層に向かおうぜ。兄貴」
「そうだな……。ミツハは階層ごとのMAPとか知っているのか?」
「はい。旦那様、向こうが一番近い階段です」
ミツハが指さした方角。
アイテムボックスを開いて1キロ四方のMAPを確認するが地下へと通じる階段は見当たらない。
どうやら、かなり距離があるようだ。
「OK、それじゃ車で移動するか」
俺がナビゲーターをすることにして、弟を運転席に乗せる。
そしてミツハは後部座席に。
弟の浩二がアクセルを踏み込むと乗用車は走り出す。
ただ問題なのは、舗装がされていないのでガタゴトと凄く揺れる。
「これは、かなりきついな」
「でも、兄貴。これ以上は速度を落とせないぜ?」
「なら! こうするまでだ!」
俺はMAPから地形を回収する。
そして地形を均一に均すようにして転移設置する。
それだけで劇的に走行時の揺れは改善された。
「すげえ。兄貴のアイテムボックススキルってチートすぎね?」
「一か月もすれば、メンテナンスで元通りになるらしいからな。それまでは、さっさとダンジョンを攻略するぞ」
50キロ前後で車は走り、途中で現れる日本狼たちを置き去りにして地下17階層へと通じる階段前まで1時間ほどで到着することができた。
車をアイテムボックスに回収したあとは、3人揃って地下17階層に続く階段を降りていく。




