魂魄な話
目を覚ませば、そこはリビングだった。
「目が覚めましたか? 旦那様」
「――ん? あ、ああ……。ミツハ……、心配をかけた」
「本当です。魔力枯渇は生命枯渇に直結する行いです。気を付けてください」
「そうなのか?」
「人間の体は魂と魄から出来ています。魂は体力を魄は魔力を意味します。どちらが尽きても死んでしまいます。ですから、魔力の使い過ぎには注意してください」
「そうだったのか……。今度から気を付けるよ」
「はい。ウガヤ王朝の神職には教えておいたはずなのですが、きちんと市井までは話は流れてはいなかったようですね」
「ウガヤ王朝……」
そんな王朝聞いたことがないが……。
「それって日本か?」
「はい。大陸の殷王朝に技術提供をしていた時代ですから、少し前になりますね」
聞いたことがない王朝名がバンバンと出てくるな……。
それにしても大陸の王朝ってことは……。
横になったままテーブルの上を弄る。
「はい。旦那様」
ミツハは、俺が何を探しているのか気がついて携帯電話を差し出してきた。
「良く分かったな」
「旦那様のことはよく見ていますから」
「そっか」
殷という名前で中国の王朝名を検索すると、紀元前1000年前前後の王朝だったという事が出てくる。
つまり、少なくとも3000年前の国という事になるのか。
流石は神様。
時間的な尺度が半端ない。
ミツハの年齢っていくつなのか聞くのが怖い。
「旦那様? 今、へんなことを考えていませんでしたか?」
「き、きのせいだ」
「それは良かったです。それよりも体調はどうですか?」
「まだ、体がだるいな」
「旦那様の魔力は神クラスですから、回復に時間がかかるのでしょう」
「そうか……。俺って、どのくらい倒れてた?」
「3時間ほどです」
「なるほど……」
俺はアイテムボックスから若返りの付与がされているキュウリを10本取り出して、味噌も取り出して、味噌につけて食べる。
5本目あたりから急速に魔力が回復していく。
10本目あたりで、ようやく半分くらい魔力が回復したところで一息ついた。
体を起こして何度か腕を回し体の状況を確認する。
「今度からは、キュウリを食べながら魔法を使うとするか。ミツハは、魔力は大丈夫なのか? 結構、魔鉱石に魔力を注入していただろ?」
「私は、信仰心がある限り魔力と体力が減ることはありませんので」
「そ、そうか……」
何、それ? チートすぎるんだが?
「しかし、俺が魔鉱石に魔力を注入してもゴミしか量産されないことは発覚したから、今度は浩二にやらせてみるとするか」
「弟の?」
「そうそう」
「……」
「何か問題でもあるのか?」
「いえ。問題がないことが問題といいますか……。たぶん、旦那様の魔鉱石に魔力を注入した結果、得られるモノが微妙なのは何か作為的なモノを感じると言いますか……」
ミツハも、俺のガチャ運が悪いと思っているようだ。
よくソーシャルゲーム運営でもあるが、重課金者がガチャ生配信を回すと毎回天井するのに近いのではないのか? と、俺は薄々と感じていた。
つまり、多くの魔鉱石を大量に短期間に集めた俺に対して、
――運営「だが! おめーには、良いアイテムは渡さねーよ!」
とかあるのでは?
卑劣! あまりにも卑劣!
「旦那様の弟に魔鉱石に魔力を注ぐ作業をさせてみるのはいいかも知れません」
「だよな」
きちんとした統計データが欲しいし。
それにミツハが魔鉱石に魔力を注ぐと身内贔屓されているのかと思うくらい、とんでもないモノが出てくるし。
俺はアイテムボックス内に入れておいたミツハが魔鉱石から精製したインゴットをアイテムボックスから取り出して鑑定する。
――アダマンタイト
魔力を流し続けることで鉄と同じように加工することが出来る。
比重は金と銀の間。
加工工程は魔力を流し続ければ鉄と同じ。
加工後は、精錬レベルと同等の全ての属性の魔力を防ぐことが出来るようになる。
――神格金属オリハルコン
魔力を流し続けることで鉄と同じように加工することが出来る。
比重は金と銀の間。
加工工程は魔力を流し続ければ鉄と同じ。
加工後は、モース硬度15の強固な結晶構造を有する。
他の金属と合成する事で、様々な性質を有する金属を作ることが可能となる。
反重力を形成することで空中に浮かぶことが出来る。
――魔法金属ミスリル
かつて存在していた天空魔法文明が作り出した幻想金属。
圧縮する事で金属としての特性と硬度を持たせることが出来る。
使用するミスリルの量に応じて天井知らずにモース硬度を上げることが可能。
魔力との親和性が非常に高く魔力の増幅と全属性付与を行うことが出来る万能の金属である。
「さらっと、とんでもない情報が出てくるんだよな……」
じつは俺達が知っている歴史ってそこまでじゃないのかも知れないな。




