土属性の魔鉱石乱獲
「そうなのか?」
俺は、梅酒を飲みながら相槌を打つ。
「兄貴は、気にならないんだな」
「気になるも何も自宅は広い方がいいからな。お前が暮らしている家って、お前の持ち家にはなっているが3DKだろ? 殆どお袋の荷物と犬関係に占領されているし。実際、使えている部屋なんて、お前の部屋くらいなものだろ」
「兄貴は良く見ているんだな」
「そりゃ、親の面倒はお前に押し付けてるようなモノだからな。外からは客観的に物事を見る事ができる典型的な例だな」
俺はアイテムボックスからホタテのオイル焼きを取り出してテーブルの上に並べる。
すかさず弟とミツハが缶を開ける。
「これ、一個500円くらいしているやつだよな?」
「まぁな」
弟がパクパクと食べている。
横でミツハも目をキラキラさせて食べており、1個取り出すと俺の口元に無言で差し出してきた。
所謂、『あーん』というやつだ。
パクリと食べると、ホタテ特有の味が口の中に広がる。
「この缶詰美味いな」
ホームセンターで、災害が発生した時用にと何個か買ったが、今度ダース買いしてアイテムボックスに突っ込んでおくことに決める。
「そういえば、浩二はアイテムボックスをきちんと使えているのか?」
「俺か? 俺は、スクーターと、あとは非常食とテントとかそのへん。兄貴と違ってアイテムボックスに入れられる容量は限りがあるし」
「そっか」
「そういえば、ジープは直ったのか?」
「石油貯蓄量を考えたらガソリンとかソッチ系の車を買うのはな……」
「でも、兄貴なら魔鉱石を大量に石油に変えて、それを日本の石油会社に売ってガソリンとか軽油を手に入れるルートを開拓しておけば普通に使えるんじゃね? ほら、ガソリンやハイオク、軽油で動いてる車とか全部がゴミになるわけだろ? もう既に下落が始まっているから」
「たしかにな……。そこまでは考えてはいなかったな。よし! 浩二」
「何だよ……」
「お前は、石油販売をしている会社に営業をかけてくれ」
「――え? 俺が?」
「だってお前がモンスター狩って魔鉱石を手に入れるよりかは俺が魔鉱石を手に入れた方が効率いいだろ?」
「それはそうだけど……」
「それと以前に俺が乗っていたジープと同じくらい強固なボディを持つ車も手配しておいてくれ」
「わかったよ。――で、手数料はもらえるんだよな?」
「何でも好きな車を買っていいぞ」
「兄貴……、今、電気自動車以外の車の価格はストップ安更新中なんだけど……」
「じゃ、それプラス、お前の、一緒に親が住んでいる実家の残りの支払いも俺が一括で払ってやるよ。それでどうだ?」
「俺! がんばるよ!」
「おう!」
「和也、今日はお出かけするの?」
「今日からは11階層から15階層を回って土属性の魔鉱石の回収をしよう」
「わかったの」
浩二を見送ったあと、俺とミツハはスキル『ワープ』を使い養老渓谷ダンジョンの地下11階層移動する。
そのあとはアイテムボックスから自動車を取り出す。
「さて、始めるとするか」
俺はアイテムボックスを起動し範囲MAPを開いたあと、回収できる全てのモノを回収する。
回収できたのは土属性の魔鉱石が3329個。
やっぱり地下11階層は、ゾンビが放置される傾向がある。
多くの冒険者にとって、かなり苛立つ階層らしいが、今の俺にとっては絶好の狩場だ。
何せアイテムボックス経由で、魔鉱石だけ回収すれば自動的にゾンビたちは消滅していくからだ。
しばらくして、ミツハに車の運転の練習ということで運転をさせる。
俺は、助手席に座った状態で、片っ端からゾンビの魔鉱石をアイテムボックス内から操作したアイコンで回収した。
そうして4時間も続けていると地下11階層にはゾンビが殆ど現れなくなった。
どうやら再配置される速度よりも俺が倒す速度の方が早かったらしい。
「土属性の魔鉱石が18万5462個か。かなり稼げたな」
魔鉱石の買い取り価格が1個5000円としても、稼ぎが10億近い。
時給2億円以上。
思わず日本ダンジョン冒険者協会のカウンターに持っていきたくなったが、今の俺の目的はそうじゃないので我慢して地下12階層に向かう事にした。




