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モデルハウス、灰燼と帰す!

 千葉市から養老渓谷まで乗用車を運転して2時間近く。

 ようやく建築中の自分の家が見えてきた。

 

「今日は、色々とあったな」

「はい。旦那様、早く休みたいですね」

「そうだな」


 助手席に座っているミツハも、受肉したことで疲れを感じるらしく、少し前から何度か欠伸をしていた。

 そんな中で、ようやく見えてきた我が家。

 建築中の建物が見えて――、


「あれ? モデルハウスが見えないな」


 もう距離的には、建築中の建物と一緒に購入してアイテムボックスで運んできたモデルハウスが見えてもおかしくないというのに。

 

「旦那様、どうかされましたか?」


 俺の言動に興味をそそられたのかミツハも眠い眼でまっすぐに近づいてくる建築中の建物を見たあと、


「だ、だだだ……」

「どうした?」

「旦那様っ! 妾と旦那様の愛の巣が!」


 尋常ではない様子のミツハ。

 ミツハが、ここまで取り乱したことなんてない。

 そして、どうしてミツハが取り乱したのかも俺は建築中の資材が置かれている場所まで近づいたことでようやく理解した。


「い、家が……」

「ないですうううう」


 ――そう。

 購入して移設したばかりのモデルハウスは、綺麗サッパリ燃えて灰となっていたからだ。


「これ、俺達が居なかったからという理由での八つ当たりからの放火の可能性があるな」


 むしろ、それ以外は考えられない。

 購入して数日しか住んでいない自宅を放火して燃やすとか……。

 つまり、俺が提示されたクエストクリア条件方法を無視して、この場にいなかったからモデルハウスが燃えたと。

 

「ど、どうしましょうか? 妾と旦那様の愛の巣を……。――も、もえ……」


 目がぐるぐるしているミツハ。

 どうやら、ミツハはモデルルームの家をすごく気に入っていたらしい。


「ミツハ」

「旦那さまー! 妾と旦那様の愛の巣があああああ」


 余程、燃えたのがショックだったのか目から涙が零れ始めると、マジで滝のように目から水が零れ始める。

 まるで漫画にように。

 ドドドドドッと、ダムが放流するときのような音が周囲に響き渡る。

 次々と流されていく建築資材。


「うああああああああん。だんなさまああああああとの家があああああああ」

「落ち着け! ミツハ」

 

 必死に俺はミツハをあやす。

 10分ほどして情緒不安定なミツハがぐすんと言いながら寝てしまった。

 まるで子供だな。


「さて――、どうするか」


 おそらくは降魔真理教が、俺の家に火をつけたというのは予想だが、遠からず当たっているだろう。

 だからこそ、アパートとモデルハウスが燃えたのだから。

 あれ? そうすると菊池母娘の自宅もヤバいのでは?

 あくまでも俺の予測だが、菊池母娘の家も降魔真理教の手により灰燼と帰していると思う。


「はー、面倒だな……」


 俺はミツハの涙により流された建築資材をアイテムボックスで回収して元の場所へと転移設置する。

 全てが終わったところで、今日は寝泊りするところがないので養老渓谷近くで直に泊ることが出来るラブホテルを検索してミツハを後部座席に乗せたあと車を走らせた。




 ――翌日。


 ラブホテルに泊まった俺達はチェックアウトしたあと、現場に到着していた。

 時刻は午前10時前後。

 深夜の段階で徹底的にモデルハウスが燃やされたというのは理解していたが、昼間になると、それは自宅が燃えたという現実をマジマジと見せつけてくるようだった。


「うう……」


 ミツハが、とっても情緒不安定。

 まさしく不安定な神様だ。


「旦那様……」

「大丈夫だから! また家を購入すればいいだけだから」


 しかし1億円近い家を燃やすとか宗教関係者はマジでひでーのな。

 俺が居なかったとは言え、家を燃やすとかやったら駄目だろ。

 そこまで考えたところで菊池母から電話が掛かってきた。


「はい、佐藤です」

「涼音です。佐藤さん、助けてください」

「何かありましたか?」

「実は……、自宅が――、自宅に戻ったら――、全焼していました」


 あー、やっぱり。

 ほんと、降魔真理教の連中って迷惑なやつらだよな。



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― 新着の感想 ―
そもそも家が燃えてなんでこっちに助け求めるんだ?行政か主人公の親とかじゃねーの?さっきまで飯一緒に食ってたんだし
これカルト宗教だけじゃなく野党以外の政治家共も知ってて放置してそう。最低限の根回しはしただろうし。いつもの遺憾ですぅで済ますつもりだな。神の新居を燃やしたかぁ。この世界の神は祟るそうだし首ポロ祭り開催…
いやいやまさか巻き込んだ責任をとって菊池母娘とも引き取るとか実家母と菊池母娘にとって都合のいい展開にせんですよね
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