新選組出撃(2)
「――なっ!?」
降魔真理教の暗殺者が唐突に攻撃を仕掛けてきた沖田総司へと一斉に視線を向けると同時に、アサルトライフルの銃口を一斉に向ける。
「沖田っ!」
斎藤一の声が周囲に響き渡る。
何人かの暗殺者は、その声の方へと視線を向けると銃口を向けると同時にアサルトライフルの引き金を引いた。
沖田は、咄嗟に羽織を前方に広げると、もっとも陣形の薄い部分へと突進する。
アサルトライフルの銃弾の何発かは沖田の隊服を貫通する。
体にも多少の傷を負わせるが――、
「ば、ばかな!? 突っ込んでくるだと!? ありえねえ! どういう神経してやがるんだ!? 死ぬのが怖くないのかあ!?」
暗殺者達が顔色を変えるが、それに答える者は新選組の中にはいない。
代わりに答えたのは沖田が振るった日本刀の――、月下の元で煌めいた剣閃であった。
そして地面の上に転がる暗殺者の頭部。
ゴトッという重苦しい音が夜の帳に支配された浜近くで響き渡り、数秒したあとドサッという頭部を失った体が崩れる音が周囲を支配した。
「ど、どうしてだ……。暗視スコープを装備していない連中が……、どうして、こんな暗闇の中で……、我々の場所を正確に――」
暗殺者の一人がありえないと呟く。
街灯が一切ない、月光だけしか光がない場所――、しかも周囲は砂防林に囲まれており暗視スコープでもなければ現代人では、暗すぎて周囲を見るどころか暗闇と人の区別すらつかない。
それは現代科学の最先端装備を有している彼ら暗殺者の中では常識中の常識だったからだ。
「くそっ! なんなんだ! こいつら! グハッ!」
別の場所から、また一人! 地面に倒れる音が聞こえてくる。
そんな音が次々と増えていく中、暗視スコープで周囲を見ていた朴隊長は歯ぎしりしていた。
「どういう……ことだ……。こんなことは……ありえない! 日本刀を振り回しているだけのコスプレ集団に! 最先端の軍事装備で身を固めている我々が! まったく! 歯が立たないだと!? こんなことはありえない!」
朴隊長の前で対刃装備をしていた暗殺者の部下が、対刃装備ごと胴体を真っ二つにされる。
「なん……なの……だ……。こいつらは……、こんな特殊部隊が日本にいるなぞ……聞いたことがない」
動揺しつつ、朴隊長は突っ込んでくる斎藤一に対してアサルトライフルを放つが、額に吸い込まれるようにして放たれた銃弾は真っ二つに切り裂かれて弾かれる。
「ばかな!? 銃弾を日本刀で斬り裂くだと!? 化け物か!」
朴は、斎藤一から距離を取ろうと後ろへと跳躍するが、身体能力の差がありすぎて喉元を切り裂かれた。
それと同時に、コヒューという音が――、空気が抜ける音が朴の喉元から聞こえてくると、
「この程度の暗闇、幕末の京では普通だったぞ。むしろ明るいくらいだ」
「幕末……」
斎藤一が横へと日本刀を振るうと朴の頭と胴体は両断されてヨットクラブの床に体は倒れこんだ。
戦闘時間、わずか3分。
降魔真理教の最強の暗殺部隊100人は、新選組との交戦により全滅した。
――それから10秒後。
「土方さん」
「佐藤、こちらは終わった」
俺が合流した時には、すでに新選組の圧勝で終わっていた。
「そ、そうですか……。お疲れ様です」
「問題ない。それよりも人質は無事だったか?」
「はい」
「では、あとは敵の拠点を制圧すればよいのか?」
「拠点ですか」
別にクエスト内容には拠点制圧などは書かれていなかったし、降魔真理教は日本中に1000以上の会館があったはず。
それを一々、潰すとか無理がありすぎる。
そう思考したところで、視界内に半透明なプレートが開くとログが流れる。
――神敵である降魔真理教の本会館にてパーティが行われているので撃滅しよう。
――スロットを回して撃滅用の仲間を手に入れろ!
「……」
「どうした? 佐藤殿」
「土方さん、何か変なログが……」
「でも、やるのだろう?」
「まぁ、何だか嫌な予感はしますけど……」
暗殺者に対しても過剰と言えるほどの戦力を提供してきたからな。
本会館を撃滅とか、どんな武器が出るやら。
ロケランとか、そんなものが出るのか?
嫌な予感しかしない。
とりあえずスロットを回すと、キラキラエフェクトが出る。
そして、稲毛浜にズドーン! と、いう音が聞こえてくると同時に高波が押し寄せてきた。
「ほう……これは……」
土方さんが楽しそうに笑みを浮かべる。
俺もステータスが強化されていたので少し沖に何が召喚されたのか理解した。
そして、その戦艦の姿から軍事に疎い俺でも分かった。
「……せ、戦艦……大和」
なんでスロットで、そんなヤベーものが召喚されるのか。
戦艦なんて召喚したら、もはやそれは戦争なのでは?
さらに俺の視界内でログが流れる。
――降魔真理教のパーティ会場に、艦砲射撃だ!
――三式弾がおススメだぞ♪
「……土方さん」
「中々に、面白いではないか? そうだろう? 佐藤殿」
たしか、降魔真理教の本館って、稲毛浜から20キロ以上距離があったはずだが、そんなに飛ぶほど戦艦大和の主砲の飛距離ってあったか?
そもそも三式弾って俺は良く知らないんだが……。




