新選組召喚っ!
稲毛海岸へと向かっていく赤い光点をアイテムボックス内からのMAP機能と、鑑定スキルでチェックしながら、乗用車で追いかける。
しばらく走ったところで、ヨットクラブ近くで一度、赤い光点が停まったかと思うと、今度は、移動速度が極端に落ちる。
「車から降りたってことか。拡大して見れればいいのにな……」
――スキル【アイテムボックスXⅢ】のシステムが更新されました。
――スキル【アイテムボックスXⅢ】からの閲覧MAPが任意で拡大する事が可能になりました。
――スキル【アイテムボックスXⅢ】がリアルタイムで更新されるようになりました。
――スキル【アイテムボックスXⅢ】の映像の色彩変更が可能になりました。
願望を口にした途端、視界内に半透明の別プレートが開くと同時に、ログが一気に流れる。
それと同時に左目に表示していたアイテムボックス内から表示しておいたMAPが一瞬暗くなったかと思うと表示映像がクリアに昼間のように明るくなる。
すると赤い光点だったはずの表示部分が拡大されて上空から木戸綾子と、その周辺に黒い衣装を身に纏った男たちの姿が鮮明に映し出された。
さらには男たちを認識した途端、男たちの居場所がMAP上に表示された。
「全部で、100人ちょいか」
俺一人相手に随分と大所帯で罠を敷いたものだな。
こちらの接近がバレないように、車の移動速度を落としながらアイテムボックス内に車を入れる。
もちろん慣性により多少は前方に投げ出される形になるが、それは以前に体験していたので問題なく道路の上に着地した。
「しかし、人数が多すぎるな」
一人で100人近くの人間を相手にして人質の木戸綾子さんを救いだすのは難しい。
どうするかと思考したところで、クエスト進行中のログの下の方に『期間限定! 召喚魔法!』という項目が追加された。
「期間限定とは……。やはり、これは神々からのクエスト達成のための手助けなんだろうな」
手を拱いていても時間だけ過ぎていき状況は悪化するだけなので『期間限定! 召喚魔法!』というアイコンをクリックすると、目の前にスロットが出現する。
まるでラスベガスに置かれているスロットのようだ。
考えていても仕方ないのでスロットレバーを引く。
音もなくスロットの数字は動き停止すると目の前に偉丈夫な身長が190センチ近い男が姿を見せる。
「拙者、佐々木小次郎と言う。須佐之男命の依頼により助太刀に参った」
背中に、長刀を背負った男が俺を見下ろしながら話しかけてきた。
「どうも……」
「拙者が現世に顕現していられる時間は、佐藤和也殿の魔力と比例する故。拙者の助太刀が必要とあれば命令を!」
「そうだな……」
流石に、佐々木小次郎だと目立ちすぎる。
それなら弟の浩二に戦力として向かってもらうのが最適だろう。
「弟の浩二に助力を頼めるか?」
「承知! 場所は既に須佐之男命より受けている上、失礼する」
俺の前から煙のように消える佐々木小次郎。
気を取り直してスロットを動かす。
そして目の前に出てきたのはだんだら模様の羽織の着用した男たち。
「こ、これは……」
「須佐之男命により、日本人を奴隷にしようと暗躍する悪鬼どもに鉄槌を下すために新選組一同! 召喚に応じた! 我らに、もう一度、日本を救うための戦場の場を設けて頂いたことを感謝する!」
俺の目の前には、200人を超す武士たちが姿を現した。
「分かった。手伝ってくれるか?」
「日本を救うためだ。我々が、悪鬼どもの気を引いている間に救い出すといい」
こんな夜中に場違い過ぎる新選組200人以上の武士たち。
あまりにも場違い過ぎることから木戸綾子さんを浚った連中の気が一瞬でも新選組の隊員たちの方へと逸れればいいんだが。
あとは、俺の魔力が持つかどうかだな。




