アイテムボックス
帰りも、小湊鉄道を使い五井駅まで戻る。
ダンジョンが出来る前は、小湊鉄道は1時間に一本あるかどうかわからないどころか廃線の危機だったらしいが、今では10分に一本は五井駅から列車が出ているので、ダンジョンが一つできるだけで随分と違うものだ。
ほぼ24時間ダンジョン内に潜っていた事。
そして高効率を求めていたこと。
あと大量の野菜や穀物を採取してアイテムボックスにぶちこんだこともあり、自身で思っていたよりも疲れていたらしく千葉駅に到着するまで殆ど電車の中で寝落ちしていた。
千葉駅に到着したあとはバスで自宅付近まで移動したあとは、安アパートまでバス停から歩く。
大きなリュックは既に駅のトイレに入ったときに人目がいないのを確認してアイテムボックスにぶちこんでおいた。
「だけど、アイテムボックス持ちだとバレたら困るから、ずっとリュックサックは持って歩かないとな……」
思わず溜息が出る。
日本国政府に一方的にダンジョンを作って押し付けた神様の手前、あまり無体なことを政府はしないと思うが、それがどこまでなのか? は、日本ダンジョン冒険者協会のホームぺージには書いていないので、あくまでも推測になってしまい、どこまで気を付ければ自分の身が守れるか分からないのが痛いところだ。
自宅に戻ったあとは、アイテムボックスを開く。
開くと言っても視界に半透明なテンプレートが開くだけで、あとは表示されている名前をクリックするとアイテムの画像が表示されるから、あとは頭の中で考えるだけでアイテムが取り出せる。
スイカを取り出したあとは、包丁で半分に切ってサランラップで切った断面を覆ったあと冷蔵庫に入れる。
もうすぐ夏という事もあり、スイカは水分補給と1時間だけ若返るという機能もあるから、とても便利になる。
「さて――」
俺は30センチ近いスイカの身――、半分の部分のスイカの身とスプーンを片手に自室に入りパソコンを起動しつつスイカを食べる。
ダンジョン内では、効率を考えてキュウリしか食べていなかったが、スイカの味はとても気になっていたのだ。
「う、美味い!」
噛めば迸る自然な甘み!
しかも、しゃくしゃくと耳心地よい歯ざわりに、口の中で迸るスイカの汁。
冷たくはないが、最高の! ――いや! 最高級レベルのスイカの味だ!
「あとで実家の親にでも何個か送っておくか。今、野菜とか高いからな」
幸い、アイテムボックスには寿命が1時間だけ若返るダンジョン産のスイカが500個ほど入っている。
野菜や穀物も入っているが、穀物に関しては精米まで持っていく手段がないので、アイテムボックスの肥やしになることは確定だ。
「え?」
さりげなくパソコンで日本に出現したダンジョンについての情報を調べていたところ、アイテムボックス持ちの氷河期世代の冒険者は既に2万人を超えているらしい。
「アイテムボックスという質量の保存の法則を無視したスキルが確認できたが、それは物流業界に大きな波紋を投げかけており、今後の物流業界の在り方を問われる可能性がある。日本国政府はアイテムボックス持ちが犯罪に走った場合、重犯罪で取り扱うことを急遽、国会で制定。アイテムボックス持ちが多すぎる事が要因であり、全てを管理できないのが有識者の見解である……か」
つまり、アイテムボックスは普通に使っても大丈夫そうだな。
それにしても、アイテムボックス持ちが、それだけいるってことは鑑定とアイテムボックスは、最初に手に入れることができる……。
そこまで思考したところで、鑑定スキルを使った場合、若返るダンジョン産の野菜はどういう扱いになるのか? と、疑問が浮かび上がった。