新たなる経験値稼ぎ
地下13階層を、弟と二人で攻略というゾンビ殲滅戦を進めていく。
常時アイテムボックスを起動し、範囲指定からの魔鉱石回収を行っていくと、20分ほどで地下へと通じる階段に到着する。
「今まで、冒険者とは一度も会わなかったな」
少なくとも数万人規模の冒険者は毎日、ダンジョンに足を踏み入れているはずなのに会わないのは、おかしいと思っていたが、
「だよな……。何かおかしいよな」
どうやら弟も同じことを思っていたようだ。
そして、その左手にはキャベツを手にしていた。
無駄に魔法をブッパしていたので、魔力回復はキャベツに変更した。
「ムシャムシャ。もうお腹が……」
「ほら、味噌やるから」
「普通に千切りのキャベツくれよ!」
まったく我儘なやつだな。
「キャベツの芯まで食べないと魔力回復しないだろ?」
「くそ! シャクシャク」
さて、一玉食べ終わるまで時間が掛かるから、1キロ範囲内に入ってきた時点でゾンビは殲滅と。
もちろん弟の視界にゾンビが入る前に。
地下14階層に降りる階段前に到着したところで、剣鉈を取り出し1時間若返りの付与がついているメロンを切り分ける。
そろそろ俺もお腹が空いてきたのだ。
「浩二、メロン食べるか?」
「メロン? それって魔力が回復する?」
「半分こずつだから回復はしないな」
「だったら1個ずつ切り分けてくれよ!」
「我儘な奴だな」
1時間若返り付与のメロンをもう一個取り出して自分で切り分けろと浩二に剣鉈と共に渡す。
「――あ、兄貴」
「何だ?」
「この剣鉈、頭が悪いレベルで色々と特殊付与がついているんだが?」
「だな」
「この剣鉈、少しの間、借りてもいいか?」
「ダンジョンの中だけなら別にいいぞ」
「よっしゃ!」
メロンを二人して食べたあと、浩二は食べかけのキャベツを自身のアイテムボックスに入れる。
二人で地下14階層に降りると、まるで地下13階層を焼き回ししたような風景が広がっていた。
「手抜きか?」
「さあ?」
思わず口から零れた声に、弟がテキトーに相槌を打ってきた。
そして地下13階層と同じく200メートルほど歩くとゾンビが見えてきた。
「やっぱり、地下13階層と同じ感じだな」
「兄貴! 地下13階層とは違うぜ!」
浩二が、右手に手にしていた剣鉈を頭上に掲げると、浩二の頭上には100を超える土のヤリが形成されていく。
「アースジャベリン!」
10体近いゾンビが、土で形成された槍により串刺しにされて消え去る。
「兄貴、武器を道具として使うことで魔法の威力が上がるみたいだ」
「なるほど……。――ってことは……」
次々とゾンビが近づいてくる。
それらをウォータージェット、ファイアーランスで次々と撃破していく弟の浩二。
「よくある武器を道具として認識して使うと魔法が発動できるっていうゲーム特性があるみたいだよ、兄貴」
「みたいだな」
剣鉈の特殊能力は、【土属性Ⅶ】【水属性Ⅳ】【火属性Ⅱ】【出血Ⅸ】【斬撃Ⅹ】【刺突Ⅳ】【耐久Ⅸ】なので、威力だけ言えば【土属性Ⅶ】がついているから、剣鉈経由で土魔法を使った方が効率はいいだろう。
問題は武器としてはゾンビ相手に使いたくないってところだな。
近づきたくないし。
嫌悪的な意味合いで。
「とりあえず戦闘音は聞こえないので――」
俺はアイテムボックスからジープを取り出す。
ここが地下13階層をコピペして作ったダンジョンなら、枝道はあっても階段までは直線だ。
「浩二、運転は任せた。まっすぐに走ってくれ」
「え? 車とかありなのか? ダンジョンの中で」
「大丈夫だ。さっさといけ!」
「分かったよ」
助手席に俺は颯爽と座り、浩二に運転手をやらせる。
そして浩二が運転を始める。
車は走り出し、ゾンビが近づいてくる。
「兄貴!」
「そのまま轢いてしまえ!」
「おーけー!」
浩二がアクセルを前回に踏み込む。
それと同時にジープは急速に加速していきゾンビを轢き殺す。
四肢がバラバラになり消えるゾンビと、そのあとに残された魔鉱石。
俺はアイテムボックスから、ダンジョンの床の上に落ちた魔鉱石を回収する。
さらに枝道に溜まっているゾンビからも魔鉱石を回収しゾンビを殲滅する。
加速度的に増えていく魔鉱石。
――レベルが上がりました。
久しぶりのレベルアップだ。
あとで確認するとしよう。
それにしても、レベルが上がれば上がるほど次へのレベルアップに必要な経験値が増えるのはRPGあるあるだな。
「兄貴! 車でゾンビを倒しても経験値は増えるみたいだ!」
「みたいだな」