地下13階層
地下12階層から、地下13階層に降りる階段は、冒険者ツアー一団が道中のゾンビを倒したからなのか数匹倒しただけで到着することが出来た。
やはり人数が多いと強行突破できないのがきつい点だな。
とくにツアー団体の主催者の仕事はツアー参加者全員の安全だし、
そう考えると、ツアーを開催しても稼ぎがいいのか? と、いう疑問が出てくる。
少数精鋭でゾンビを狩りまくっていた方がいいのでは?
まぁ、俺が気にすることではないな。
地下13階層へと繋がる階段を降りていく。
「なあ、兄貴」
「何だ?」
「ダンジョンって不思議だよな。空とかあるのに何層にも世界が重なっているのって」
「それは今更だろ」
それを気にしたらダンジョンの中に浅瀬とは言え海がある方がツッコミどころが満載すぎる。
階段を降り切ったところで、周囲を見渡すがモンスターの存在は確認できない。
アイテムボックスを開いてMAPを開くと真っ直ぐに伸びた先200メートルのところからアイテムの光点が確認できた。
「さていくか」
どうやら地下13階層もアイテムボックス無双が出来るようだ。
通路の広さは、地下鉄の車両が2台同時に走れるくらいの広さなので、武器を選ばずに戦うことができそうだ。
問題は、天井の高さは5メートル近くあるので大型の魔物も移動できるという点だな。
「ファイアーストームからの! きゅうり!」
弟の浩二が、1時間の若返りの付与がついているキュウリを食べながらファイアースト―ムでゾンビを倒していく。
「兄貴、このキュウリ凄いよな! 食べると魔力が回復するから魔法使いたい放題だ!」
「お腹が一杯になったら食べられなくなるから注意しろよ」
「……兄貴、さっき俺にキャベツを渡してきて一玉食べさせたことを忘れたのか?」
「やれやれ、ああ言えば、こう言う」
俺は肩を竦める。
まぁ、戦闘経験を積むことは大事なので本当は俺も戦う必要性はあるのだが、本日は弟の浩二に丸投げする事にした。
「でも、俺の魔力だと一番威力の低い魔法を100発も打ったら魔力切れになって意識失う一歩手間になるな」
「まぁ、お前のステータスはまだ低いからな」
新たに近づいてきた10体近いゾンビ。
それをターゲットにした弟は、「ファイアー流星拳!」とか、言って炎を玉を100発近く放ってからキュウリを食べている。
「燃費が悪すぎるな」
「仕方ないだろ。こういうストレス発散する場所って中々ないんだから!」
社会の闇を一瞬見た気がするが、気のせいではないだろう。
「お前、ダンジョンの外では絶対に魔法は使うなよ?」
「分かっているって!」
燃え尽きたゾンビの跡地からは、土属性の魔鉱石が落ちていて弟は魔鉱石を手に取ると一個ずつアイテムボックスに入れていく。
「ふふっ、この魔鉱石が1個5000円の買い取りかー」
「結構、高いよな」
「もうすでに俺のアイテムボックス内には300個近い魔鉱石が!」
「――ってことは、今日一日で150万円の稼ぎか」
「俺の半年分の給料っ!」
弟が、うひょー! とか、叫んでいるが、魔鉱石もそのうち価格は落ちると俺は見ている。
今は、手練れの冒険者は少ないが、何せ氷河期世代は最大1700万人もいるのだ。
稼げるところに人は集まる。
そのうち狩場での狩り方法が確立されれば乱獲が始まって魔鉱石の買い取り価格が下がるのは容易に想像がつく。
それまでゾンビ相手なら普通に無双できるから稼がせてもらうとしよう。
俺は人通りが少ない方角に詰まっているゾンビをアイテムボックス内のMAPで確認すると、範囲回収で魔鉱石だけアイテムボックス内に回収する。
おそらく、それでゾンビは全滅するだろう。
少ないゾンビは、弟の戦闘経験値に。
そして遠くのゾンビ――、数十から百体近いゾンビに限っては俺がアイテムボックスからの殲滅。
中々にいい流れではないのか?
尚、俺のアイテムボックス内に入っているゾンビから回収した魔鉱石は8000個を超えている。
思ったよりも13階層はゾンビの出現数は多いようだ。
ただし大通りの主幹道と幹の部分である横道があり、横道にゾンビが大量に湧いていて主幹道にまで来る事が出来ないのでゾンビが少ないだけのようだ。
「欠陥ダンジョンだな……」
何が地下13階層の方が、簡単だよ。
これ主幹道しかなくてゾンビが主幹道メインで湧くようだったら、きちんと火力を用意できるパーティじゃなかったら先に進めないぞ?