Side 亜衣 Dear. ” i “ . From. ” i “
手紙の内容は、URLとアカウント名とパスワード。
それは私が麻衣から引き継いで小説を投稿していたものとは、
別の小説投稿サイトのものだった。
メールのアカウントでログインすると、
投稿されている作品は二つあった。
アカウント名は『ディア』。
一つ目の作品。
『遺書と言って渡されたのはライトノベルでした。』
それはまるで日記の様だった。
そこに綴られた内容は、私の良く知る過去。
ただ不思議なのが何故かそれは、私視点で書かれていた。
更に、おかしな点があった。
その日記は全て・・・
投稿日が2015年4月25日になっていた。
これではまるで予言だ・・・。
私は、ようやく真実を知る。
麻衣はこの未来を予測していた。
・・・
私はもう一つの作品を読む。
『 Dear. “ i “.』
内容はいくつもの詩だった。
それは圧縮された麻衣の感情、思考の集合体。
その中には、微睡の中で聞いたあの詩も含まれていた。
私は『私の中の都合のいい私』を通じて、
この詩を読み解き・・・再び微睡の中へ落ちていく。
そして・・・過去の麻衣と会話する。
・・・
詩の中で麻衣は様々な言葉を、意味を残していた。
その中で、悩み、模索し、答えを探していた。
沢山の矛盾の中、導き出した結果・・・
私はそれを否定する。
麻衣は間違っている。
それを証明するために、私は幸せにならないといけない。
それは、きっと・・・
・・・
そして私は覚醒する。
あの日見た夕日は、その映像は、
つぎはぎに様々な記憶が混ざり合い、既に不確かなモノになっていた。
夕日を眺める私達三人を、私は何故か俯瞰で眺めている。
三つの影はどこまでも伸びて・・・
二つの光のミチを創り出していた。
世界は過去を少し曖昧にして、
元のカタチを取り戻す。
私は、私が知る過去を取り戻した。
真実は私の知る過去だ。
それが正しい事なのかは分からない。
それでも、私がいて、芽衣がいて、麻衣がいた。
この現実が、私を支えてくれる。
私はディアの作品を私の知る過去に書き換える。
いや・・・書き加える。覚えている限りの過去を書き綴る。
そこには、私の感情も付け加える。
出来上がった作品は、もはや別物だった。
想いが、理由を変える。事実の本質を変えていく。
過去は変わらない。でも、その意味を変える事は出来るのかもしれない。
それは、芽衣が証明してくれていた。
私は出来上がったその物語を愛おしく想う。
私は、この『哀しい物語』を何よりも大切に想う。
・・・
私は、詩の方にも私の答えを書き足す。
◇◇◇
From.『 i 』
全てなくなってしまうなら、
最後に記憶に残るものは、かなしみ。
かなしみは、うたになり波紋を広げ伝播する。
連鎖する心の波は継承され、永遠になる・・・。
◇◇◇
これは麻衣の問いかけに対する私の答え。
永遠など存在しない。
永遠は『実現しない願い』だ。
しかし願いは、想いは継承され永遠に続く・・・希望になる。
それは現実に溢れている。
私は『かなしみ』を抱きながら、
たくさんの連鎖する心の波に揺られ、
永遠の中を生きていく・・・。
幸せと言う心の奥底にある不確かな存在は、
確かに私の中にいて、その姿は永遠に似ていた。
・・・
気付けば隣には、芽衣がいた。
「これから大変だね。
何せ亜衣は、麻衣お姉ちゃんが想像出来ない様な、
幸せにならないといけないし♪」
そう心の中で約束した。それは枷ではなく、楔だ。
心の隙間に深く刺さり私の心を現実に繋ぎ止める。
それは悪意を持てば呪いになるのかもしれない。
「芽衣もだからな?」
それでも私は芽衣にも約束させる。
悪意のないそれは、災いを取り除く呪いになる。
「それは大変だぁ」
なんとも気の抜けた返事だった。
そう言いながらも、芽衣は何だか嬉しそうだ。
幸せになる事自体は、それほど難しい事ではないのかもしれない。
それは常に私達の中にある。
しかし、私達は幸せを求め続けなければいけない。
見失う事もあるだろう。
そんな時、『哀しみ』はそっとその場所を示してくれる。
麻衣との記憶は、私の心の在処だ。
きっとこの出会いが、私の物語の『舞台』。
これから、私の本当の物語の幕が上がる。
私は、あなたに出会えて本当によかった。
ーーーーー end ーーーー




