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Anoter side ⅲ..

 舞台はまた変わり、あの夕日の神社になる。

 空はまだ、青を残しながらも徐々に朱に染まっていく。


「それはきっと、私の思う幸せよりずっと大変だと思うよ?」


 麻衣は穏やかに言った。

 ちょっと呆れている様にも見える。


「だよなぁ。でも頑張るよ」


 私は楽観的に言う。

 先の事なんて分からない。それでも譲れないモノがある。

 私は、私を好きになり少し我儘わがままになった。


 誰かの迷惑になる我儘は良くない事だ。


 でも、この我儘は突き通す。


 必要なんだ。迷惑かけたら謝るよ。

 他で償えるなら努力もする。その価値があるんだ。


「当面の問題は何かある?」


 多分、私の知らない問題がある。

 これだけ意思を示しても、渋ってるしなぁ・・・。


「芽衣の事かなぁ・・・」


 なるほど。なんでいなくなったのかも、私は知らない。

 朝の静江母さんとの話からしても普通じゃない。


「芽衣はどうなるんだ?」


 昨日の芽衣の表情が浮かぶ。

 芽衣は・・・麻衣と同じなのか?


「何とかしてあげたいんだけどね・・・。

 だから私のを全部あげようと思ったんだけど、誰かさんは嫌みたいだし」


 麻衣は、ちょっと意地悪に笑う。

 私は何故か理解する。麻衣も、もう私の想いは分かっているようだ。

 

「私のも使ってよ」


 なんだか不思議なやりとりだ。まるで物を分け合う様に・・・。


「それだと亜衣の過去が曖昧になっちゃうよ?」


「んー。まぁ、仕方ないかな」


 他に方法もなさそうだし。


「さっき忘れたくないって言ってなかったっけ?」


 麻衣は、また呆れている。

 確かに言ったけど、意味が違うだろ?

 それに、内容も少し違うはずだ。


「芽衣の方が大切だ。それに全部なくなる訳じゃないんだろ?」


 何だかとても曖昧だ。希望と願望が事実を創っていく。

 全てが叶う訳ではない。でも望まなければ失うのだ。


「嫉妬しちゃうなぁ♪」


 麻衣は、揶揄からかう様に言う。


・・・


「麻衣を取り戻せるなら、私は何でも差し出すよ?」


 私は本気だ。麻衣が戻るなら・・・


「それは無理」


 だろうね。知ってた。


・・・


 気付けば空は、すっかり茜色に染まっていた。


 伸びる影は三つ。


 初めから芽衣はそこにいた。


「ただいま」


 芽衣は少しバツが悪そうだ。

 いなくなるつもりだったんだろ?私はそれを許さない。


 私は本当に我儘だ。


「おかえり」


 私は、いつもの様に、家に帰ってきた芽衣を迎えるのと同じ様に、

当たり前の様に言う。


「私は、本来いない存在だよ?」


 うーん・・・よく分からん。

 芽衣が、そう言うんだからそうなんだろう。でも・・・

 

「今、私の目の前にいる」


「それは正しくないよ?」


 麻衣が言う。

 正しいって何なんだろう?

 誰も望まない正しさにどれだけの価値があるのか・・・。

 事実は、つくられた原則で証明されていた。

 それは今、この場所で崩れ去った。


 なら、私にとって正しい事とはなんだろう・・・


・・・


「しらん!私の知るこの過去が真実だ」


 私は開き直った。どうせ証明出来ないんだ。

 私の見た物が真実だ。


 私はそれしか知らない。


 私は・・・それが『大切』だ。



「「わがままだなぁ・・・」」



 芽衣と麻衣が二人揃って呆れていた。


 そして、私達三人は顔を見合わせて笑う。


 このまま三人でいられたらどれ程よかっただろうか・・・


 でも、それは叶わない。


 あの日々は、過去。


 決して戻る事は出来ない。


 未来の事はわからない。


 想像はするけど、曖昧で確定しない。



 三つの影は、二つの光のミチを作り出していた。



 麻衣との過去を抱き、


繋いだ芽衣の未来と共に、


私は今を生きていく。



 過去と今の間、そして今と未来の間に、それは存在していた。

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