Anoter side ⅲ
芽衣がいなくなったあの日・・・。
気付けば私は眠っていて、目覚めたのは次の日の朝だった。
「おはよう。静江母さん、芽衣は?」
目覚めた時、芽衣は見当たらなかった。
昨日の、涙を浮かべた笑顔が頭をよぎり、言い知れない不安感が襲う。
・・・
「メイ?メイって何の事?」
ん?何を冗談を言っているんだ?
「芽衣は芽衣でしょ。私の妹の・・・」
静江母さんの顔は冗談を言っている様には見えなかった。
怖い。何かがおかしい。
「なにいってるの?亜衣は一人っ子でしょ?」
おかしい。静江母さんはどうかしている・・・。
ふと居間の仏壇の方を向く。
そこには母さんの写真があり・・・そっと、笑いかけてくれていた。
そこに、麻衣の写真はなかった・・・。
「静江母さん・・・、麻衣の写真は?」
血の気が引いていく感覚がした。
きっと、私は真っ青な顔をしていたのだろう。
「大丈夫!?マイって誰の事?」
静江母さんは真剣な表情で私を心配している。
こんな冗談を絶対に言うはずがない。
『嫌だ・・・』
「ごめん。冗談だよ」
私は、笑顔で誤魔化す。
上手く笑えている自信はなかった。
「・・・本当に大丈夫?」
静江母さんは改めて私に確認する。
「大丈夫だよ」
『亜衣はもう、大丈夫だよね♪』
昨晩の芽衣の言葉が思い出される。
大丈夫・・・か・・・。
一体、何が起こっているんだろう?
夕方には麻衣からのメールが届く。
それに合わせたかのように、芽衣はいなくなった。
そして、麻衣も・・・?
現時点では、静江母さんが忘れているだけかも知れない。
話せば何か思い出すだろうか?
いや、心配させるだけだろうな・・・。
その前に出来る事を考えよう。
私は一度、自分の部屋に戻った。
改めて部屋を見回す。
芽衣がいた形跡は・・・ある。
ベッドは二つある。
文房具や、最低限の家財道具、
私の分も含めて二セットあるものも沢山ある。
しかし、それが芽衣の物だと証明出来ない・・・。
誰か他に確認出来る人は?
私は、必死で冷静に考える。
父さんは、仕事中だ。夜には確認出来るだろうけど・・・。
後は誰がいるだろう?
もしかして、いやもしかしなくても私、友達いないなぁ・・・。
斉藤と瑠衣と・・・あと謎の女子高生だけ・・・。
あ、あと塔矢がいるか。塔矢は芽衣の事を覚えていて欲しいな。
とりあえず、斉藤と瑠衣にはSNSを通してそれっぽく探りを入れてみた。
返信は直ぐには来なかった。
そして、私は塔矢に電話を入れる。
『もしもし。柏木塔矢だ』
よかった。電話は繋がった様だ。
「急に、おかしな事を聞いて悪いんだけど芽衣の事覚えてる?」
私は直球で質問をする。
『君の妹だろ?芽衣君がどうかしたのか?』
「静江母さんが芽衣の事を覚えていないんだ。
まるで最初から知らなかったみたいに・・・」
塔矢は少し考え込んでいる。
『俺も、言われてみると芽衣君の記憶が・・・少し曖昧だ。
通常では考えられない、思考の乱れを感じる・・・』
やはり、勘違いではなさそうだ。
何かが起きている。
「麻衣の事は覚えてる?」
私は恐る恐る確認する。
『マイ・・・思い出せない・・・しかし何か違和感は感じる・・・』
やっぱりそうか・・・。
何かがおかしい。
芽衣の記憶が薄れて、麻衣の痕跡が・・・なくなっている。
そんな事があり得るのだろうか?
しかし、事実起こっている。
『何かが起こっている様だな・・・。心当たりはあるのか?』
塔矢は冷静に分析している様だ。
「今日、麻衣が・・・亡くなった姉が残したメールが届く予定なんだ・・・」
『亜衣君の姉?・・・マイ君。芽衣君は関係していて、
記憶の混同を起こしている?そんな事があり得るのか・・・?いや、しかし・・・』
塔矢も珍しく少し動揺している様に思えた。
とりあえずこれ以上、塔矢と話しても進展はなさそだな。
「もし何か気付いたら教えて欲しい」
『分かった。俺の方でも何か分かれば伝えよう。
無理せず、落ち着いて行動しろよ?大事なのは冷静でいる事だぞ?』
塔矢は心配そうに言っていた。
「ありがとう」
私はこうして一度電話を切った。
・・・
この後も、方々手を尽くした。
しかし、何一つ答えは見えてこなかった。
そして麻衣の、最後のメールが届いた。




