side 亜衣 再会
その日は、朝からバタバタしていた。
朝起きて、いつも通り朝食をとる。
そして、例の男装メイクをする。
昨日より手慣れている・・・どこを目指しているんだ?芽衣は・・・。
「メイク技術に磨きがかかってきている・・・。自分の才能が恐い!
イケメン!超イケメンだぁ♪」
芽衣は満足そうだ。楽しんで頂けて何よりだよ・・・。
今日は、スーツにも着替える。
男性用だ、サイズが合うのか心配だったがピッタリだ。
・・・なんで?
「身長もスリーサイズも把握している!私に抜かりはない!」
まぁ、妹だしなぁ。そんな話をした事もある。
普通なら、胸が邪魔になりそうだが私は幸い心配ない。
母は、とても慎ましい体格をしていた。
そして、私はどうやら母に似た様だ。
今日は一応、帯も巻いている。
私としては助かっているが女性ならコンプレックスになるのだろうか?
芽衣はと言うと・・・言わないでおいてやろう。
「身長もあるし、本当に似合うわね♪」
身長は165cm近くある。女性としては高い方だ。
母は小柄だったので、そこは父さんに似たのかもしれない。
芽衣は母さんに似て小柄だ。童顔だし、ちょっと年相応に見えない。
もう、高三の受験生なんだよなぁ。
こんな事してて大丈夫なのか?
「肩幅欲しいから肩パットを縫い付けといたよ」
準備のいいことで。
服装とメイクで結構、見た目は変わるもんだなぁ。
鏡を見ると、そこには男っぽい格好をした私がいた。
ただ、それ以上に何かを感じる事はなかった。
そして何も変わらなくて、ちょっとホッとしている自分がいた。
これで安心感でも出ようものなら、自分の精神状態を疑う。
「そう言えばまだ私、行き先も知らないんだけど?」
流石にこの格好で遠出は鬼畜過ぎる。
電車に乗るなんて事はないよな・・・?想像するだけでも寒気がする。
「歩いて20分くらいかなぁ。いつもの公園横を通って、
商店街抜けた坂を降った所。地図も書いといたから安心して」
準備良すぎだろ・・・。私は地図を渡される。
とても分かりやすい手書きの地図。
可愛らしいイラストまで載っている。
暇なのか?受験生なのに・・・。
まぁ、楽しそうだし芽衣なら大丈夫か。
通るルートもしっかり明記されている。
どうやら逃げ道は書かれていない様だ・・・。
「ゆとりをもって1時間前くらいには出発ね。お昼食べたら直ぐ出る感じかな。
2時くらいには着く様に瑠衣さんには言ってあるから。
なんなら商店街の喫茶店で時間潰していいよ?」
始めてのお使いか何かみたいだな・・・。
馬鹿にされてる気がしてきた。
しかし、この格好で商店街を通るのか?
行きたくなくなってきた。近くなのは助かるけど。
それからお昼ご飯を食べたが、何を食べたのかよく覚えていない。
私はビジネス鞄に原稿と地図を入れて家を出る。
改めて、随分と近い所に住んでたんだなぁと思う。
麻衣も、昔からそこにいたのだろう。公園で偶然出会うくらいだ。
生活圏が一緒なのだから、再会自体はそれほど偶然でもなかったのかもしれない。
「さぁ、気をつけて行ってきてね。途中で嫌になって帰ってきちゃダメだよ?
あと、ちゃんとルート通りに行ってね。迷子にならない様に!」
イラッ!私は幼稚園児か!!
「できらぁ!!」
私は捨て台詞を吐いて、勇み足で歩き始める。
・・・
いい天気だなぁ・・・。
眩しい日差しを手で遮りながら空を見上げる。
残暑で汗ばむ。空は高く青が濃い。
雲は厚く、ゆっくりと流れる。
もう9月末だと言うのに、まだ夏の気配をはっきりと感じる。
通い慣れた道。芽衣の書いたルートは、
商店街までは、高校時代の私の通学路と重なっていた。
私はその道を辿る。
景色はほとんど、あの日々と変わっていない。
変わっているのは・・・私の方だろうな。
・・・
気付けば、公園まで来ていた。
歩いて10分程だろうか。
麻衣の、あのドロップキックを思い出す。
始めて出会ったのもここだったんだよなぁ・・・。
私は気付いていなかったけど。
ここから始まったのか・・・。
小学校3年の頃、11年前。ここで初めて麻衣と出会った。
そして約2年半前、父さんが再婚して一緒に暮らす事になった。
「あの・・・久しぶり」
物思いに耽りながら歩いていると突然、横から声をかけられた。
私は驚き硬直する。
そして、慌てて声を掛けてきた相手を視認する。
えっと・・・誰だっけ?




