side 亜衣 ポーカー
物語を書き終え、私は燃え尽きていた。
次回作は書くつもりだが、今は何も考えられなかった。
そんな時、芽衣が真剣な顔つきで声を掛けてきた。
「亜衣、最後のゲーム大会をしましょう」
その顔を見て思った。
芽衣から始まった。
麻衣の過去を、そして私を知る物語。
塔矢、父さん、母さん、静江母さん、そして麻衣の残した小説、瑠衣と巡り、
そして最後に芽衣に戻って来たのだ。
『さぁ、ラスボス戦だ。』
ゲームはポーカー。
手札はワンペア。私はカードを全交換した。
負けても良いと思った。
麻衣が、そして芽衣が、何故そうまでして、
私に男装させようとしているのかが分からなかった。
今まで、15戦無敗。何かがそれを拒んでいるかの様にすら思えた。
私は、その何かに問いかける。
今回もそうなのか?と。
結果は・・・ストレートフラッシュ。
運命なんてものは信じたくなかった。
それは、諦めの言葉に似ている。
抗い様のない事象。決まっている未来。
そんなものは無いと・・・思いたかった。
「私の勝ちみたいだね」
私は、どこかで負ける事を期待していたのかも知れない。
でも、それは叶わなかった。
それでいいんだ・・・もう、いいんだ・・・。
しかし・・・
「私の勝ちね♪ 」
芽衣が言う。
ロイヤルストレートフラッシュ。
約65万分の1の確率。あり得ない。
私はあまりの出来事に、唖然とする。
その間に芽衣はそそくさとカードを片付ける。
・・・
一呼吸置いて、私は冷静になる。
どう考えてもイカサマだ。
私は不満を言いながら、少し喜んでいたのかも知れない。
『運命なんてない。』
だって予想も出来なかったじゃないか。
こんな負け方をするなんて。
芽衣は運命を自力で打ち破った。賞賛に値する。
そんな事もあり得るのだ。
イカサマだけどな・・・。
・・・
そして私は男装メイクをする。
不思議な感じだ。
でも、男装自体にそれほど意味はない。
こんな事をした所で、私の違和感は消えない。
鏡に映る自分を見ても・・・それは男性っぽいメイクをした自分だ。
芽衣は、なぜこんな事をしたのだろう?
そもそも、私は何を望んでいるのだろう?
男である事を望んでいる?いや、私は男だ。
でも身体は女性だ。一度は受け入れた。
受け入れてはいないか・・・諦めた。
出口はない。埋没は一つの答えかも知れない。
しかし、それには途方もない道のりがある。
お金も時間も、労力も・・・副作用も・・・。
そしてそれを成し得たとしても、そこにはまた新しい苦労と苦しみが横たわる。
出来ない理由を積み重ねる。
それは予測でもある。事前に知る事で回避できる事もある。
麻衣は、なぜ私に男装をさせようとしたのだろう?
・・・分からない。意味がない。
その先の何を求めていたのだろう・・・。
・・・
「まだ、悩んでるみたいね」
芽衣の声にハッとなる。
私は堪らず芽衣に問いかける。
「なぁ・・・芽衣は・・・麻衣はなんで私に男装させたがったんだ?」
芽衣はなにも答えない。
「なんで・・・消える事を知って、
なんでキャラクターとして、言葉のみを残して消える事を望んだんだ?」
芽衣は何かを知っているのだろうか・・・?
私はまた・・・芽衣に頼ろうとしている。
そんな自分に情けなくなる。
そんな私に芽衣は、少し満足そうに言う。
「答え合わせをしようか♪」
答え合わせ・・・芽衣は答えを、知っているのか?




