side 芽衣 ポーカー
時は流れる。
私達は前を向いて歩き始める。
歩き出さなければいけない。
麻衣お姉ちゃんのやり残した事を、
仕方ないから私が引き継いでやろうじゃないか♪
私は、麻衣お姉ちゃんの共犯者だ。
全くもって、私はお節介だなぁ。
まぁ、でも利害関係は一致している。
亜衣は、私にとってもヒーローだから・・・。
だから、それを連れ戻す計画に協力した。
私達のヒーローは・・・
*****
「亜衣、最後のゲーム大会をしましょう」
小説が完成してから数日後、私は亜衣と対峙する。
麻衣お姉ちゃんが亡くなるまでに、15回行われたゲーム大会。
その戦績は、麻衣お姉ちゃん6敗、私が9敗。
亜衣・・・無敗。
どうなってるんだ?
明らかに運要素の強いゲームも沢山あった。
普通に考えたら15回やって無敗なんて有り得ない。
でも何故か、亜衣は負けない。ほとんどが2位だ。
まるで、何かが負けない様にしているかの如く・・・。
でも私は今日、それに終止符を打つ!
「懐かしいね。最近は回数も減ってたのもあって3ヶ月以上ぶりかな?」
再婚してから麻衣が亡くなるまでの2年と3ヶ月ほど。
その時間の中で、麻衣お姉ちゃんは様々な思い出を残していった。
このゲーム大会もその一つだ。
「罰ゲームはいつものでいいかしら?」
私は不敵に笑い亜衣を挑発する。
「茄子料理じゃ、芽衣は罰ゲームにならないだろ?
私が勝ったら・・・半年後のメッセージ。
麻衣が芽衣に送った内容を教えなさい」
亜衣は真剣な顔で言う。
『半年後と2年後へ、お互い二人に2通。内容は他の人には見せない事!
これでどうかしら?』
麻衣お姉ちゃんとの約束。
亜衣はそれを破ろうとしている。
その顔には何か決意の様なものが見えた。
「いいよ。負けなきゃいいのよ♪」
このフラグも何回言った事か・・・。
「それで、何で勝負するの?」
亜衣は自信満々だ。何せ15戦無敗だからなぁ。
でも今回は絶対に勝つ。
「二人だし勝負の早いもので・・・トランプを用意したから、
簡易版のポーカーにしましょう。1回勝負よ!」
ポーカーはこのゲーム大会でも一度やった事があった。
その時は確か・・・麻衣お姉ちゃんの負けだったっけ。
今回は、簡易版。ドローは一度だけ可能。
「オッケー。それで行こう」
亜衣はすんなりと了承してくれた。
そして勝負は始まる。
この勝負は勝ちにこだわる。私には明確な目的がある。
負けるわけにはいかない。
私はトランプを切り、5枚づつカードを配る。
亜衣は少し渋い顔をする。
あまり手札は良くなかったのかな?そして・・・
「私は・・・全部、交換する」
亜衣は5枚のカード全てを捨てた。
ドローは一度だけ。この全交換は無謀としか思えない。
もしかして亜衣は負けたがっている?
私は、カード交換無しで完了する。
「じゃあ、亜衣。カードを見せて」
♠︎3♠︎4♠︎5♠︎6♠︎7
「はぁ!?」
ストレートフラッシュ・・・?全交換で??
あり得ない・・・。本当に何かの力が働いてるんじゃないだろうか?
「私の勝ちみたいだね」
亜衣は勝ち誇っている。
まぁ、このカードだ。普通に考えればそうなる。
しかし・・・
♠︎10♠︎11♠︎12♠︎13♠︎1
私はカードをオープンする。
「えっ・・・!?」
ロイヤルストレートフラッシュ。
「私の勝ちね♪ 」
私はそそくさとカードを片付ける。
・・・
「おい。イカサマしただろ?」
亜衣は疑いの目を向ける。
「何の事?私の勝ちよ♪」
私はせっせと証拠隠滅をする。
「なんでそんな慌ててカードを片付けてるんだよ!」
よし。もう証拠はない♪完全犯罪成立ダァ!
「さぁ♪罰ゲームの準備をするわよ」
「最初からそのつもりだったな、さては・・・。卑怯者」
亜衣がなにか言っている。しらん。
何度も言うが今回は勝ちに拘る。後の事は知らない。
勝てば良いのだ。
私は、そそくさとメイクの準備をする。
「おい。なんでそんなに準備がいいんだ?」
そりゃ、勝つのは前提ですから♪
私は無視して、鼻歌混じりで準備を進める。
「おい。なんで男性用のスーツがあるんだ?」
そりゃ、・・・以下略。
一番安いのを選んだけど結構な値段だった。
それだけ、私は本気なのだ。負けなどあり得ない。
「さぁ!敗者よ、鏡の前に座りなさい♪」
我ながら強引だと思う。でも知ったこっちゃない。
幾度となく受けてきた屈辱。今こそ晴らす時だ!
「もう・・・いいや。好きにしてくれ」
どうやら、やっと観念した様だ。
亜衣は大人しく鏡の前に座る。
・・・
私は丁寧にメイクをしていく。
この日の為に色々と準備してきた。
なんの為かって?それは麻衣お姉ちゃんの意志を引き継ぐ為。
髪は、流石に切れないか・・・後ろ纏めておこう。
眉を太めに、そして凛々しく直線的に。
ベースはナチュラルに、コンシーラーを塗り、
そして目の周りを男性的に仕上げていく。
鼻筋も男性的に整える。
・・・
うん!会心の出来だ!
そこには、少し中性的なイケメンがいた。
元がいいからなぁ。マジ、イケメン!
余は満足じゃ♪
亜衣はと言うと、色々と思う所があるのか固まっている。
「まだ、悩んでるみたいね」
私はそんな亜衣に呼びかける。
考え過ぎるのは亜衣の悪い癖だなぁ。
「なぁ・・・芽衣は・・・いや、麻衣はなんで私に男装させたがったんだ?」
私はなにも答えない。
「なんで・・・消える事を知って、
なんでキャラクターとして、言葉のみを残して消える事を望んだんだ?」
亜衣はそこまで辿り着いたのか・・・。
「答え合わせをしようか♪」
私は亜衣に告げる。
最後のピースをはめても、出来上がった絵を見なければ意味がない。
ほんと、世話の焼ける人だなぁ。




